【あえて選んだ、築40年の家】第1話:古家をリフォーム?私たちが家を買うことを決めた理由。
ライター 桒原さやか
コラムを書かせてもらうことになりました、桒原(くわばら)さやかです。
こちらの記事を読んでくださっている方の中に、もしかしたら、電話やメールでお話をさせてもらったことがある方もいるかもしれません。というのも、以前は「北欧、暮らしの道具店」のお客さま係として6年ちょっと働いていました。
また、退職後はノルウェー日記を連載させてもらっていたことも。
現在は長野県松本市で、1歳の娘とスウェーデン人の夫と3人で暮らしています。本日から3日にわたって我が家のリフォーム話をお届けするので、お付き合いいただけたらうれしいです。
家を買う=身軽じゃなくなる?
いつかは自分たちの家を持ちたいと思う気持ちはありつつも、しばらくは無理だろうとあきらめていました。
というのも、ここ5年の間に、東京からノルウェー、ノルウェーから松本に引っ越しをしていまして。思い立ったらすぐに好きな街に引っ越せる。そんな身軽さが、私たち夫婦には必要だと思っていました。
「家を買う=一生とまではいかなくても、長くここに住む」
これぐらいの覚悟が持てなくては家は買えないなと思っていたのです。
そしてなによりも、きっと人生の中でいちばんの大きな買い物。何十年とローンを返済するという、金銭的にはもちろん、精神的な負担を増やしたくなかったというのも理由のひとつでした。
身軽に楽しく暮らせたら、と思っていたけれど
ところが、一年ほど前に子どもが生まれてからは、ふと気がつくと夫とこんな話をするように。
「庭があったら、もっと気軽に子どもを外で遊ばせられるのにね」とか、「窓からみどりが見える家に住みたいね」とか。その他にも「家でバーベキューがしたいなぁ」「キッチンをもっと使いやすくしたいね」などなど。
今までは夫婦ふたりが身軽に楽しく暮らすというのがテーマだったけれど、子どもが生まれてからは自然と家で過ごす時間が増えたせいか、「家」という存在が大きくなっていたことに気がつきました。
金銭的な負担が少なく、家を持つという選択肢はやっぱりむずかしいんだろうか……?
淡い期待を胸に秘めつつ、子どもが寝静まったあと、夫とともにインターネットでカチカチ家探しをする日々がはじまりました。
出会ったのは、築40年の格安中古物件
ダイニングから北アルプスの景色が見えるのも、気に入ったポイントでした。
いくつか内見をくりかえすものの、いい出会いはなかなかないもので。やっぱり無理か……と思っていた矢先。
突如物件サイトに登場したのが、築40年の格安物件! 思わずその値段に飛びついて、見に行ってみることにしたのでした。
到着した物件は、メインの部屋は畳の和室。瓦屋根でちょっとした縁側もついている。まさに、ザ・昔ながらの日本の家という印象。
前々から日本の古い家にあこがれを持っていた夫は、目をきらきらさせながら家中を見回っている様子でした。
「ここはリビングで、この部屋はオフィス。ここは子ども部屋にいいかも」なんて、ここに住んでいる暮らしぶりが自然と頭に浮かんできます。松本の街から遠くないのに、山や木に囲まれていて田舎暮らしも楽しめそうな雰囲気。
田舎に住むのにあこがれながらも、思い立ったらふらっと喫茶店や居酒屋に行けるという、街や人恋しさも手放せなかった私たちには、ここは自分たちのための物件なの?と思うほどでした。
昔ながらの引き戸の玄関。
家の大きさ、部屋の配置。そして立地や金銭面、どこもあきらめなくていい。
出会うときには、出会ってしまうものなんだ……と、ドキドキしました。
それからは、家に帰って夫と冷静に会議。畳は好きだけれど、自分たちの暮らしを考えると、やっぱり洋室の部屋は欠かせません。そもそも、築40年経っているので古くなっているところも多く、気持ちよく住むにはほとんどの部屋の改装が必要です。
さっそくリフォーム会社に見積もりをお願いすると、なかなか大きな金額になることがわかりました。
そうなると予算オーバー。けっきょく無理か……とガックリと肩を落としたのでした。
中古物件+自分たちでリフォームする
そんな私の様子を横で見ていた夫がひとこと。
「自分たちでリフォームしてみようよ?」
夫が育ったスウェーデンでは築100年以上の家はあちこちにあり、古い家を少しずつ自分で改装するのはよくあることだと言います。予算が抑えられるのはもちろん、なによりも、自分の手で家を少しずつ良くしていくことは「人生のよろこび、楽しみ」として捉えられているのだとか。
そう言われてみると、外壁を自分たちで塗っていたり、友人たちが中古住宅を買って自分で改装しているという話を、北欧ではよく聞くことを思い出しました。
夫が小さいころに姉と一緒に部屋のペンキ塗りをしている様子
「中古住宅+自分たちでリフォームをする」というプランなら、予算内かもしれない。
自分たちで改装する資金を計算して、夫と何度も話し合いをしました。最終的には、たとえ失敗しても家計が崩壊しない値段なこと。そしてなによりも、「自分たちで家の改装をする経験は、きっと家族のいい思い出になるよ」という、夫の言葉が決め手になりました。
そんなわけで、はじめて物件を見てからおおよそ1週間後には「私たち、家を買います!」と、不動産に電話をしていたのでした。購入の手続きなどで何度かやりとりがあったものの、あまりにもあっさりと家が買えてしまったことに拍子抜けしたことを覚えています。
こんな感じに、突如として、我が家の家づくりはスタートしたのでした。
もくじ
桒原さやか
ライター。『北欧、暮らしの道具店』で、お客さま係として6年間働いていた元スタッフ。現在は長野県松本市で1歳の娘を子育て中。はじめての著書に『北欧で見つけた、気持ちが軽くなる暮らし(ワニブックス)』がある。スウェーデン人の夫との生活、ノルウェー暮らし、北欧旅行から見つけた暮らしのアイデアが書かれたエッセイ本。
instagram @kuwabarasayaka
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