【ケーキ屋の親子】第1話:やりたいことってなんだろう?寄り道だらけの20代で始めたケーキ屋

編集スタッフ 栗村

鎌倉駅からバスで約15分、駅から離れた住宅地にあるケーキ屋「POMPON CAKES BLVD.(ポンポンケークス・ブールバード)」

当店スタッフにもファンの多いこのお店、店主の立道嶺央(たてみちれお)さんが、母・有為子(ういこ)さんと一緒にはじめた場所なんだそう。

さらに聞くところによると、ケーキ屋を始める前、嶺央さんは茅葺き(かやぶき)職人に弟子入りをしていたのだとか。職人からケーキ屋に、そして60歳を目前にした母と一緒に新しいことをはじめた経緯って?

今回は立道親子に今のお店ができるまでのお話を聞きに行きました。

 

POMPON CAKESを訪ねました

取材に伺ったのは、開店時間からちょっと経った頃。まだまだ忙しそうな店内をちらりと覗くと「こんにちは」と声をかけてくれたのが、店主の立道嶺央さん。

嶺央さん
「朝の仕込みは全部終えたので、僕はいつでも大丈夫ですよ。

あっちょっとだけ待っててくださいね。今母を呼んできますから」

忙しい時に訪れてしまったなと思っていたら、そんなことを感じさせないくらい穏やかに声をかけてくれました。

有為子さん
「こんにちは。今日はどうぞよろしくお願いいたします」

キッチンからにこやかに有為子さんもいらしゃって、ゆっくりおしゃべりがスタートしました。

 

まさか親子でケーキ屋をやるなんて

有為子さん
「ずっとケーキ教室を自宅でしていましたが、それは家族のために作っていたケーキの作り方を教えて欲しいってお友達から言われたのがきっかけ。お店をやりたいなんて考えていなかったんです」

嶺央さん
「母は僕が生まれた頃からケーキ教室をやっていたんですが、実はそのケーキをあんまり食べた記憶がないんです。覚えているのはケーキ教室の生徒さんが作ったものを切り分けて持って帰る姿で。自分はケーキというより、母が作ってくれた素朴なクッキーとかおやつを食べていました。

だから、ずっとケーキを意識したこともなくて。そもそもケーキを売るまで茅葺き職人に弟子入りをしていたんです」

 

建築家志望から、茅葺き職人に

建築家に憧れて大学で建築を学んだ嶺央さん。卒業後は、漠然と設計事務所で働きたいと考えていたのだそう。けれどそんなときに、偶然見かけた茅葺き職人の仕事。ちょうど自分の手でつくるということを意識しはじめたタイミングだったことと、まずはものを作る現場を見た方がいいとなと思い、京都の茅葺き職人に弟子入りを志願したのだそう。

嶺央さん
「約2年ほど、親方と一緒に日本各地を回って重要文化財の修復を手伝っていました」

嶺央さん
「一生懸命働いていたんですけど、そのときに悟ったことがあって。それは自分には1つのことに没頭して、技術を極めていくことは向いていないんだということ。

どちらかというと、枠組みを考えるのが好きだったんです。建築だったらその場所を媒介に、どうやったら人とのつながりができるかということを考えるのがたのしくて。

職人って3年経つと見習いとして認められるんですが、これから先を考えるタイミングで、ずっと職人として続けていくということは選べなくて、それで地元の鎌倉に戻ってきました」

 

いまから就職は難しい。自分にできることって?

このとき嶺央さんは27歳。もう普通に設計事務所に就職するのは難しいかもしれないと思ったのだとか。だけど建築というテーマで何ができるだろうと考えたときに、学生時代に旅先で見たサンフランシスコの光景が浮かんできたそう。

嶺央さん
「サンフランシスコで出会った同世代の人たちが家族を大切にしていて、お母さんが作ったお菓子やおばあちゃんの作ったピクルスなど、ホームメイドのものを自分のビジネスにしていたんです。そういう自分のルーツを大切にしている姿がかっこよくって」

嶺央さん
「さらにちょうどその頃に、ポートランドで自家焙煎したコーヒーをカーゴバイク(三輪自転車)で売りに出るスタイルが注目されていて。こういうので、母のケーキを売りに出かければお店というハコがなくてもこの街で、人と人との繋がりを作っていけるんじゃないかと思ったんです。

母のケーキを自分がディレクションして売って、そこで人と人との繋がりができたら楽しいんじゃないかと思って。それで母に提案すると、最初は反対されてしまいました。人さまに売るものを簡単に考えるなと」

 

なんか面白そうだから、やってみた

有為子さん
「私が作っていたのはあくまで家庭用のケーキ。パティシエの修行をして作ったものではないので、お金をいただいて売れるなんて思っていなかったんです。

それにケーキの責任も持たないといけないし、味も調整しないといけない。数だって、今まで作ったことのない量だったので、反対というよりはすごく不安だったんです。

……けど、気づいたらはじめちゃったんですよ。面白そうだから」

嶺央さん
「うちの家族って、そうなんですよ。結局最後は、なんか面白そうだからやってみちゃおうって」

 

はじめた後に、ものすごい大変とわかって……

嶺央さん
「でもいざやってみたら、ものすごい大変でした。

朝7時から工房でケーキを作り始めるんですけど、全然でき上がらないんですよ。その時に初めてケーキってこんなにつくるのに時間がかかるんだってわかって。

それで、母の姿を見てるだけじゃさすがに申し訳ないから、手伝うよって言ったんです。

そしたら、いつもふわっとした雰囲気で、やりたいことに対しても割と応援してくれる母が、ケーキ作りは見たことないくらい厳しかったんですよ」

嶺央さん
「それで思い出したのが、祖母もお茶とお花の先生だったんですが、自分の領域だけはすごく厳しかったこと。これは親子でいっしょなんだと。

何か聞くと『違う』って注意されて、あまり教えてくれないので、もう見て覚えるしかない。

だけど、ちょうどそれまで職人の見習いとして技術を見て覚える仕事をやっていたこともあって、チャンネルがあったと言いますか。ちゃんと吸収していきました」

有為子さん
「割と筋がよかったんです」

 

朝からはじめて、ケーキができあがったのは夕暮れ!?

嶺央さん
「それで、初日はというと、ケーキが全部できたのが日が暮れた17時くらい。作る量だって、多分今の10分の1くらいの量ですよ。ここから売りに行かなきゃいけないのかって思いました」

有為子さん
「そうそうそう、こんな時間に出かけていって、買ってくださる方がいらっしゃるのかしらと思いました。でも出発してから1〜2時間経ってからですかね。

電話があって『全部売れたよ!』って。

帰ってきてから、今日はこんな人が来て、こんな風に話してくれたよって報告を聞くのがたのしくて」

嶺央さん
「それから、1日10時間くらい一緒にケーキを作って、出来上がったら夜に僕が売りに出かけるという暮らしが3年間くらい続きました。

もう最初の1年くらいは、とんでもないことに母を巻き込んでしまったと思いましたよ」

(つづく)

【写真】鍵岡龍門


もくじ

 

立道嶺央(たてみち れお)
立道有為子(たてみち ういこ)

息子・POMPON CAKES店主。大学で建築を学びながら旅に出る。その後、京都府美山町での茅葺き職人見習いを経て、2011年に地元の鎌倉で母と一緒にPOMPON CAKESをはじめる。

母・サンフランシスコでフレンチクッキングを学び、その後ケーキ教室「La Montagne(ラ・モンターニュ)」を30年以上主宰。現在は息子と一緒にPOMPON CAKESでレシピ開発や、オーダーケーキ作りを手掛ける。

 

【PONPOM CAKES BLVD.(ポンポンケークス・ブールバード)】
神奈川県鎌倉市梶原4-1-5 助川ビル
定休日:水・木曜日
Instagram:https://www.instagram.com/pomponcakes/


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