【写真とわたし】特別エッセイ「いま、あのひとに贈りたいもの」
編集スタッフ 松田
スマートフォンで写真を撮るのがふつうになった今、データのやりとりは便利になり、リアルタイムで写真を公開する場所もできました。
昔にくらべると写真をプリントする機会は少なくなったように感じるけれど、だからこそ、改めて気づく発見があるかもしれない。
全4回にわたって毎回書き手がかわるリレーエッセイで、「写真をプリントすることの魅力」をキヤノン インクジェットプリンター PIXUS TS8430と一緒に考える特集をお届けしています。
第2回のエッセイを綴っていただくのは、エッセイストやラジオのパーソナリティ、ナレーターなど多彩に活躍する華恵(はなえ)さんです。
(この記事は、クライアント企業さまのご依頼で制作する「BRAND NOTE」という記事広告コンテンツです)
写真は、大切な友人へのプレゼントに
仕事柄、国内外のさまざまな場所へ取材やロケに行くことが多い華恵さん。そのときの景色や出会った人、一緒に仕事をした人のことは、よく記録としてスマホやカメラで写真に残しているそう。
「撮った写真はプリントしますか?」とたずねると、大切な友人の誕生日には、その人が写る写真をプリントして、プレゼントすることがあるといいます。
そこで華恵さんが感じる写真プリントの魅力について、エッセイを綴っていただきました。
▲10歳でモデルデビュー後、エッセイストしても活躍するように。著書の一部と、初めて翻訳を手がけた絵本
「いま、あのひとに贈りたいもの」
十年ほど前にアイルランド旅を共にした知人から、アルバムをもらったことがある。
帰国後、私が写っている写真をプリントして、まとめてくれたのだ。知人が一枚一枚プリントしてくれたのかと思うと、なんだか照れくさかった。
もらった時、お礼を言うとすぐにカバンに仕舞ってしまったが、家に帰ってすぐに開き、じっくり眺めた。我ながらいい顔してる。一緒に買ったポテトチップスをこっそり食べようとして見つかり、びっくりしたような自分の顔。ぼうっと夕焼けを眺めている時の自分の顔。カメラを意識せず、飾らず。
机の一番上の引き出しに入れているので、何度か間違えて挟んでしまい、ページの端が折れてしまっている。でも、一番取り出しやすいところにいつも入れておきたい。落ち込んで誰とも話す気力がわかない時なんかに、そっと開くと、一人じゃない、と思えてくるのだ。
物の扱いも丁寧な方ではないが、データの扱いは、恥ずかしながらもっとずさんだ。先日、ハードディスクの中身が消えてしまった。理由はわからない。多分私がどこかをクリックしてしまったのだろう。
消えたデータはどうしようもない。これを機会に今パソコンに入っているデータも整理しようと、写真フォルダを開いた。すると、二十代前半の頃に仕事した、ハンセン病ドキュメンタリーの海外取材の写真がたくさん出てきた。アシスタントディレクターだった山下さんとの、フィジーの空港でのツーショットもある。彼女とは年も近く、三年間、何カ国も共に旅するうちに親しくなった。山下さんに、写真をラインで送ってみた。
「懐かしい。泣ける」
意外な反応。ウケる、とか、もっとクールな反応かと思ったのに、どうしたのだろう。
「実は自分が写ってる写真、一枚も持ってないの。だから嬉しい」
知らなかった。予定表を見ると、ちょうど来週は山下さんの誕生日だ。山下さんのアルバム、作ってみようかな。
私は写真フォルダをスクロールした。
最初の海外取材となる2014年の一枚目まで遡る。
ネパール、スタッフとともに取材相手のおじいさんを囲んだ写真等、三十枚程。スペイン、本場で食べたパエリアの写真等、二十枚程。続いてブラジル。湿地帯での、カメラマンとわたしがピースしている写真等、四十枚程……。
懐かしくて、見入ってしまう。けど、肝心の山下さんが、写っていない。スイス取材になると、取材撮影用カメラの三脚を抱えて歩く山下さんの姿がやっと出てきた。でも、風景写真に、たまたま写りこんだという感じ。こんなの、もらっても嬉しくないだろうな……。そういえば。ずっと忘れていたけど。始めの頃、私は山下さんのことがちょっと苦手だったんだ。
初めて会ったのは、会議室での打ち合わせ。
「いろんな国へ行くから、電源プラグの変換器が必要だな。山下、はなえさんに渡して」プロデューサーの言葉に、当時、新人だった山下さんは「はい!」と可愛く立ち上がった。少しふっくらして、髪の毛がつやつや、爪も真っ赤に綺麗に塗っている。
私は変換器を受け取って「ロケが終わったら、会社に返しますね」と言うと、「会社の、じゃなくて、わたしの、です」と彼女は言った。「え?」と驚く私に、プロデューサーが「いや、会社のだから」と言う。「いえ、私のです」きゅるん、とした瞳で、山下さんはこちらを見つめる。えっと……どうしよう。
海外取材が始まっても、どうもうまく話せなかった。上司にも可愛がられていて、彼女自身、物腰が柔らかいけど、ときどき妙に頑固。口角をあげ、ニコッとしながらもしっかり主張をする。私はなんとなく彼女と、距離を作ってしまった。
せっかく忘れていたのに。山下さんを探しながら写真を見返すと、こんなことが思い出されるのか……。ため息をつきながら、私はスクロールを続ける。
あった、やっと。インドで、田舎町にあるハンセン病療養所を訪れた際、私が遠くからスタッフのみんなを写した写真に、山下さんの顔が。急いでプリントする写真に選ぶ。
プリンタからはき出された写真を手にとると、山下さんは、データで見る以上に、遠くに小さく見えた。スタッフみんなから離れたところで、一人、口をぎゅっと結んでいる。しっかり働こうという懸命さがありながら、眉毛をハの字にして、どこか目の奥が不安げだ。
今のわたしよりも若い、山下さん。あの頃は、たくましい人に見えたのに。こうして見ると、随分と印象が違う。そっと写真を撫でながら「大丈夫だよ」と言ってあげたくなった。
取材の後半になると、距離がつまって、写真はどんどん増えていく。私は山下さんの映っている写真を並べた。思っているより少なかったけど、アルバムに足りるだけの枚数は、揃った。
一週間後。仕事が落ち着いて、数日奈良の実家で休んでいたという山下さんと、誕生日ディナーをした。そこでアルバムを渡すと、「ほんまに嬉しい!」ぱぁっと顔を輝かせて喜んでくれた。「わぁ、こんな時も撮ってたの?」と、はしゃぎながらページをめくっていく。
フィジーの空港で、山下さんとわたしが話している写真になった。先週、ラインで送った写真だ。確か、遠くからカメラマンが携帯で撮っていた。帰国後、私に送ってくれたのだ。
写真の中で私は、唇を突き出して何かを熱く語り、山下さんは、耳に髪の毛をかけながら、一生懸命聞いてくれている。なんだか恥ずかしくなってページをめくろうとすると、「はなえちゃんのこの顔、懐かしい。これ、『ちょっと聞いてくれますか、この話、結論も正解も、ないんですけど』って言う時の顔やで」
そうだ……そんなことをあの頃、言っていた気がする。うわー、めんどくさいヤツですね、と私は頭を掻いた。なんだかこの感じ、海外にいた時みたい。取材の頃を思い出して、少し懐かしい。
同じものを目の前にして、頭を寄せ合って率直に話す。きゅっと、結び付いている。閉店時間まで、語らった。
文 華恵
***
その日の思い出を忘れないうちに、サクッとプリント
家庭用のプリンターはこれまで使ったことがなかったという華恵さんに、PIXUS TS8430を1ヶ月ほど使ってみてもらいました。気に入ったポイントはありましたか?
華恵さん:
「家庭用のプリンターって、パソコンやSDカードを経由して……と設定に面倒なイメージがありました。でも実際はその必要はなく、スマホのアプリから、すぐにプリントできて、その手軽さに驚きました。
わざわざ写真やさんに行かなくても、自宅でこんなに短時間でプリントできるって、すごくラクですね。その日撮った写真を忘れないうちに、サクッとプリントできるので、ハードルが下がる気がします」
▲専用アプリをダウンロードし、カメラロールの中から写真を選択するだけで簡単にプリント
▲L判1枚にかかるコストは約18.1円。「目の前でプリントされるのをみていると、写真により愛着がわきます」と華恵さん
華恵さん:
「自動補正機能*のおかげで、自分で色調整をしなくても、夜に焚き火をしたときの写真もすごく綺麗で。空や海のブルーなど、当時見た景色が、くっきりと鮮やかに再現されていたのも嬉しかったです。
家にプリンターがあることで、写真の撮り方も変わりそうだなと思いました。写真をとるのは水を差す行為かなと思って遠慮してしまうこともあるのですが、何気ない時間こそ思い出として残しておきたいなと思っていて。どんどんプリントして、もっと友人や知人に渡したいなと思いました」
※自動写真補正:撮影された写真がどのようなシーンか自動で解析・分類し、シーン別に適切な補正を行い、オリジナルの良さを保ちながら、美しく仕上げます。
早いもので2020年もあと1カ月。今年はいつもとは違う年末を過ごす方も多いかもしれません。
この機会になかなか会えなかった大切なひとへ、写真つきの年賀状を贈ったり、写真をプレゼントしてみてはいかがでしょうか。特別な想いをのせて。
PIXUS TS8430のブランドサイトはこちら
【写真】神ノ川智早
もくじ
華恵
エッセイスト、ラジオパーソナリティ。アメリカで生まれ、6歳より日本に住む。10歳でモデル活動を始め、小学6年生の時にエッセイ『小学生日記』を出版。現在はテレビやラジオ、雑誌などさまざまなジャンルで活躍中。
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