【はじめての家づくり】第3話:地方で暮らす良さ、大変さ。家族みんなの幸せを考えた1年間のこと

ライター 長谷川未緒

暮らす人の好みが自然に伝わってくる住まいは、とても素敵です。

今回、取材させていただいた山本菜々子(やまもと・ななこ)さんのお宅もそう。ご本人同様、リラックスしたムードが伝わってきます。山本さんは「THUMB AND CAKES」の屋号でニットや雑貨のデザインを手がけており、じつは2018年にも東京の住まいを取材したことがあります。 

去年、長野県茅野市に移住したと聞き、第1話では、引っ越しを決めた理由や、新居のこだわりを、第2話では、古いものと新しいものを調和させたインテリアの話を中心に伺いました。

最終話となる第3話では、キッチンに次いでお気に入りだという仕事部屋、移住してからの1年と、これからについて伺います。

第1話からよむ

 

夫婦ふたり、同じ部屋でストレスなく過ごすために

横長に建つ平屋のいちばん奥に位置しているのが、夫婦ふたりの仕事部屋です。入り口を背に、右側が夫、左側が山本さんと分けて使っていて、じつは床の高さも右側だけ少し高くなっていました。

山本さん:
同じ部屋で仕事をするから、なにか境目を作ってほしいと夫が言うので、扉をつけるのではなく、床を高くしたんです。窓に向かってデスクをおいたり、パソコンの側に好きな写真を飾ったりしていて。同じ部屋でも、お互いの視線が交わることがあまりありません。

私の仕事スペースは、日当たりがいいので気持ちがよく、夫が以前の仕事部屋で使っていたトラックファニチャーのベンチを使わせてもらい、巣にこもるような感じでニット作品などを制作しています。キッチンに次ぐお気に入りスポットです」 

山本さん:
「夫は仕事柄、本がたくさんあるので、ワークスペースには本棚を作り付けて、幅や棚板の高さ、奥行きなどを指定。下側には扉をつけて雑多になりそうなものをしまっています。 

山本さん:
「本棚は地震がきたときに怖いので。作りつけの収納をつけたのは、この本棚と玄関の靴箱くらいです」

なるほど同じ部屋でも、それぞれが心地よく過ごせる工夫があると、ストレスなく働けそうです。

どこにいても明るくて、窓の外には自然が見えて、理想通りの家だろうと思いつつ、もっとこうすればよかったと思うポイントがあるのか伺ってみると……。

山本さん:
「お金がかかるのであきらめたのですが、家を囲むようにウッドデッキにすればよかったな、と。廊下にある窓から庭へ出られるのですが、家のほうが庭より高さがあるので段差のせいで出づらいんです。

そのうち余裕ができたら、いつかウッドデッキにしたいです」


地方に住む「予想外のメリット」。暮らしの変化

新居で暮らしはじめて1年ちょっと。東京にいたときと変わったことはありますか?

山本さん:
「このあたりは上下水道が通っていないんです。水が豊かなので、上水道は個別に井戸を掘って電気で汲み上げているんですが、その井戸水が超軟水でおいしくて。心なしか入浴時も肌あたりが良い気がしますし、家とは直接の関係はありませんが、うれしい出来事でした。

下水道もいったいどうするのかな、と思っていましたが、浄化槽というのをつけて、バクテリアの力で排水を濾過していくんですけれど、排水には気を使うようになりました」 

山本さん:
「なるべく食器の汚れは拭き取るようにしたり、洗剤も環境にやさしいものを使うようにしたり。水道代がかからない代わりに、井戸や浄化槽の検査など維持費はそれなりにかかります」

今はどこに行くにも車が必要なのも、大きな変化だといいます。

山本さん:
「東京ではすごく便利なところに住んでいたので、どこに行くにも歩いて行けましたけれど、ここは一番近いスーパーでも車で10分かかります。

でもいろいろなお店があって、ツルヤは輸入食材も置いているのでよく行きますし、生鮮食品は生協など、買うものに合わせて使い分けています」

山本さん:
「野菜はお隣さんが農家で春夏は直売もしているので、レタスを畑に一緒に収穫しに行ったりしますし、近所にもけっこう直売所があるんです。

東京では見たことがないような野菜が並んでいるのも、楽しいですね。

別荘地が近いからか、イタリアンナスとか、しゃれた野菜もよく売られています」

 

田舎で子育てしてみて感じたこと

暮らしの変化はあったものの、自然の多い暮らしには大満足しているそう。

 山本さん:
「このあたりは桜の木がたくさんあるので春は満開ですし、夏はうちの庭にも植えましたけれど、緑の芝生が広がっています。秋は木々が燃えるように紅葉して、色がものすごくきれいなんです。冬は雪景色になって、四季の彩りを感じる1年でした」

のびのびと子育てしたいというのも、移住のきっかけでした。


山本さん:
「そうですね。以前は子どもと時間をつぶせる場所を探して街中へ出かけていましたけれど、今は薪の焚き付けに使う枝を拾いに行こうとか、そういう感じです。

あとはスケートに行ったりもしますし、幼稚園ではスキー教室もしてくれるんです。ちょうど昨日はお披露目会があり、初級コースを先生と一緒にすべっていました。

子どもだから自転車に乗るようにすぐ覚えちゃうんです。先生は大変でしょうけれど、ありがたいですね」

 子どもの頃からあこがれだった理想の平屋での暮らし、これからもっとこうしたいと思うところはあるのでしょうか。 

山本さん:
「そうですね。夫の好みがあまり反映されていなくて、いつも譲ってくれるんですけれど、本当はもっとモダンなほうがいいみたいなんですよ。

暖炉の前に置くソファーも、アーコールじゃないほうがいいとか、好みがあるみたいなんです。現代のデザイナーさんのもので好きなものがあるらしく。

なのでもう少し夫の好みも反映していけたらと思っています」

山が好きだという夫の好みに合わせて飾られている写真や絵画などを拝見するに、お互いに譲り合って居心地の良い空間を作っているのでしょう。

大きく取った窓のおかげか内と外の境界が曖昧で、家の中にいても自然の中にいるよう。新しいものと古いものをミックスしたモダンなインテリアは、懐かしいけれど洗練された印象もあります。私もぜひともそのテクニックを取り入れて、リラックスできる空間を作りたいと思いました。


【写真】鍵岡龍門




もくじ





山本菜々子

THUMB AND CAKESとしてイギリス菓子やアイシングクッキーの製作や、SWEEPとしてビンテージの仕入れやオリジナルの雑貨デザインなども手がける。訪れた海外でケーキやパッケージの可愛さからお菓子をデザインする事に魅了され、シュガークラフトを学ぶ。2007年より活動を開始し、イギリス菓子やシュガーケーキ、アイシングクッキーなど、雑誌やイベントなどの菓子制作に携わる。2017年よりキルト作家のTIPTOEと共にSWEEPとしてイギリスをテーマに菓子製作やオリジナルの雑貨デザインなども手がける。HPはhttp://thumb-and-cakes.comから。Instagramは@thumb_and_cakesから。


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