【おとなの金髪】第1話:白髪を隠すのをやめたら、ふっと気持ちが軽くなった

ライター 木下美和

ファッションと同じように、いくつになっても髪型のおしゃれも楽しみたい!

……という気持ちとは裏腹に、最近は出かける前にひょっこり現れる白髪に慌てることも。大人になれば遅かれ早かれ訪れるこうした髪質の変化に、一喜一憂せず、自分らしく楽しむには?

そのヒントを知りたいと訪ねたのは、ぱっつん前髪の金髪ボブがお似合いの細山田亜弥(ほそやまだ あや)さん。東京・富ヶ谷でカフェ「Letterpress Letters/Canteen」(レタープレスレターズ/カンティーン)を営んでいます。

40代後半になって大胆に髪型を変え、新しいおしゃれを楽しんでいる細山田さんに、大人世代の髪型とおしゃれの関係について伺いました。

 

40代後半で初めての金髪に

細山田さんの髪は、白に近い明るいトーンの金色。動くと切りっぱなしのボブがさらりとなびいて、軽やかな印象です。とはいえ、金髪って憧れはあるものの、いざ自分が染めるとなるにはなかなか勇気がいるような気がします……。

細山田さん:
「私は20代後半で白髪が出てきて、30代からは白髪染めも始めて。40代に入った頃には割と全体的に白かったので、黒の中でも一番濃い、漆黒に染めていました。特に、当時は美容業界で働いていたこともあって、2〜3週間に1度は必ず美容室でリタッチ(根元のカラー)してもらっていたんです。

それでも白髪はすぐに出てくる……。真っ黒だと余計に目立つように見えてきて、なんだかいただけないなあと、ずっと思っていました。そんなとき、美容師さんが『明るめにしたら目立たないかも。色入れてみます?』と提案してくれたんです」

信頼を置く美容師さんの助言をきっかけに、細山田さんは40代後半で初めての金髪に挑戦。くしくもそのタイミングは、会社勤めのかたわら趣味のスクールにも通い始めるなど、ライフスタイルにも大きな変化の波が訪れていた時期だったといいます。

細山田さん:
「白髪を隠すことから解放されるならと思って、おまかせで最初は毛先の下半分だけ淡いピンク色に染めてもらいました。黒髪以外に染めるのは初めてだったけど、気持ちがふっと軽くなって。

じゃあ、もうこれは全体を染めちゃおう! と、地毛の白髪を生かしながら徐々に色の明度を上げて、バレイヤージュ(※)で全体を金髪にしました。2年くらいはかかったかな」

※バレイヤージュ……髪の表面にハケを使ってほうきで掃くように色をぼかしながら入れていくカラーリング方法

▲「もともと髪質が丈夫で、洗いっぱなしでもストンと真っすぐになる」という細山田さん(うらやましい!)。ふだんの髪のお手入れは〈ケラスターゼ〉のトリートメントを愛用。

 

会社員を辞めてカフェを開業

髪型はもとより、そのライフスタイルの変遷も軽やかな細山田さん。実は、お店をオープンしたのは50代になってから。それまでは外資系化粧品メーカーの会社員として、日本の他にフランス本社とシンガポール支社にも勤めるなど、国内外を飛び回っていました。

細山田さん:
「38歳のときにフランス転勤の話が出て、当時5歳だった娘を連れて赴任しました。5年後に日本に戻り、しばらくしたら次はシンガポール勤務に。そこで2年駐在して、その後は日本で退職まで勤めました。30年弱、自分でもなかなか長く勤めたなと思います」

日本と海外を行き来しながらの仕事・生活・子育て。何ともパワフルな細山田さんですが、この間さらに、カフェを開くきっかけとなるフランス料理の学校に通い始めます。

 

子どもが手を離れたのを機に、好きなことをはじめてみたら

細山田さん:
「シンガポール駐在から日本に戻ってきたとき、ちょうど娘が一人でイギリスの高校に留学することが決まったんです。離れて暮らすことになり、『じゃあ、お互いこれを機に新しいことをしよう!』と、彼女と約束しました。

それで、もともと料理をしたり食べたりするのが好きだったこともあって、当時代官山にあった『ル・コルドン・ブルー』(フランス料理・お菓子の専門学校)の土曜日コースに入学しました。48歳のときでした」

会社が休みの毎週土曜日は、朝から晩までみっちり講義や実技試験。仕事と学校を両立する生活を送ることなんと5年! その地道な努力が実り、見事グラン・ディプロム(全課程修了学位)を取得しました。

細山田さん:
「想像以上に大変でした……。でも、サラリーマンをしていただけでは出会えなかった年齢も職業もバラバラの人たちと出会えて一緒に学ぶことができたのは、すっごく楽しかったですね!

でも、在学中はまだ具体的にお店を開くことをイメージしていませんでした。卒業するときに指導してくれたシェフから、『辞めたらすぐに忘れるよ』とはっきり言われて、え〜こんなにがんばったのに!? って(笑)。それで思い切ってサラリーマンを辞めて、お店を開くことにしたんです」

 

「染めなきゃ」のストレスから解放された

金髪へのイメージチェンジがまるで人生を動かす一つのスイッチだったかのように、40代後半から50代にかけて、細山田さんの人生には新しい風が吹き始めました。長年黒く染めてきた髪から金髪への一歩を踏み出してみて、どのような気持ちの変化があったのでしょうか。

細山田さん:
「髪型自体は前から同じボブのままなんだけど、髪色が変わると、やっぱり新鮮でしたね。なにより定期的に染めなきゃいけないとか、出かける前に白髪がないかチェックするとか、そういうストレスから解放されたのは、金髪にして本当によかったなと思います。

金髪にもいろんな明度・彩度があるので、カラーリストさんのいる美容室で相談するのがおすすめですよ!」

話を聞いていると、少し距離を感じていた金髪という選択肢が、自分にもアリなのかも? と思えてきます。なにより、細山田さんの金髪は派手なイメージとは一線を画す“自然体”そのもの。気負わず、新しい自分に目を向ける姿勢と相まって、なおさらそう感じるのかもしれません。

次回は、髪型を変えたことで楽しみが増えたというおしゃれについて伺います。

(つづく)

【写真】田所瑞穂

 

もくじ

細山田 亜弥

活版印刷スタジオ兼カフェ「Letterpress Letters/Canteen」店主。外資系化粧品会社に勤務しながら、「ル・コルドン・ブルー」に入学しグラン・ディプロムを取得。その後2018年に現在のお店をオープン。カフェではキッシュなどの日替わりランチをはじめ、クッキーや焼き菓子などを販売。また、スタジオでは活版印刷のワークショップ(予約制)を定期的に行っている。
https://www.letterpressletters.com


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