【わたしと、日記】第1話:心の動きを記録するもの。日記の魅力を発信する専門店を訪ねました

編集スタッフ 野村

ふと、昔どんなことが好きで、どんなことを考えて過ごしていたっけと、自分を振り返ってみたくなる機会がありました。

頭の中の記憶を辿ってみると、その時あった出来事はなんとなく覚えていても、考え事や気持ちのことはあまり覚えていない。

そんな時に頼りになるのが、自分の気持ちをその日のうちにしっかりと留めておくことができる「日記」だと思います。

でも、日記をつけることに魅力を感じながらも、毎日書き続けるまでには至っていない自分も。

そんな時に、日記を書くこと、そして読むこと、それぞれの魅力を広めていくための日記の専門店があることを知りました。

このお店に行ってみれば、自分と日記との距離をもっと縮められるのかもしれない。

そんな思いを持って、日記の専門店「日記屋 月日(つきひ)」へと足を運んでみました。

 

日記は、日々の暮らしを残せるもの

店主・内沼晋太郎(うちぬま しんたろう)さんは、新刊書店や出版社の経営など、本にまつわるさまざまな事業に携わりながら、2020年4月に、この日記屋をオープン。

日記屋 月日では、「日記屋」という名前の通り、新刊や古書、リトルプレスや日記帳など、日記にまつわる書籍やグッズを販売しています。

そもそも、内沼さんが日記に面白さを感じたきっかけはどんなことだったのでしょうか?

内沼さん:
「自発的に日記を書き始めたのは、中学生のときだったと思います。

毎日ではないのですが、その時自分が強く思ったこととか、悩んだことを、断続的に書いていて。

いわゆる思春期なので、感情の起伏に戸惑う時期ですが、日記に書くことで、もやもやしたものが整理されていく感覚がありました。

また、日記を続けることで、それが記録として残っていくことも、面白いと感じるようになってきたんです」

 

自分も、他人も、同じように「生きている」

内沼さん:
「生きていて、よほど印象に残った出来事であっても、たいていのことはそのうち忘れて、過ぎていきます。

特に、自分が感じたことや考えたことは、頭の中にしかないので、書いておかなければ、そのまま消えてしまう。

だから僕にとって日記は、これまで自分が生きていた証のようなものです。読み返すとたしかに、その時自分は何かをしたり、考えたりしている。

たくさん書いてある日は、充実していたように感じるし、ほとんど書くことができなかった日も、行間から充実を読み取れたりする。そうした一日の文字量のムラひとつとっても、その時の自分を振り返るきっかけになります。

どんな小さな出来事も、ささいな心の動きも、なんでも書き残すことができる。文字表現としても、日記はもっとも自由で、書く自分がそのままそこにあらわれるものになります。そのあたりが、面白さだなと」

内沼さん:
「そうやって考えると、他人の日記本を読むことにも、違った良さがたくさんあって。

いちばん思うのは、他の誰かも自分と同じように暮らして、小さなことに悩んだりしている、と実感が得られることです。

大作家と呼ばれる人たちも、無名の人たちも、みんな同じように日々を生きているんだって気付けて、人にやさしい気持ちになれるというか」

 

「専門店」があれば、面白がってもらえると思って

内沼さんは、どんなきっかけで日記のお店を始めたのでしょうか?

内沼さん:
「日記は面白い。スピードが早すぎる現代に、疲れを感じている人たちにも合っている。だから今こそ、もっと世間で注目されるべき、とここ10年ほどずっと思い続けていたんです。

なので折に触れて、日記の話をしたり、自分の出版社から日記本を出版したりしてきました。けれどそれでは、日記を取り巻く状況は変わらないなと感じていて。

『日記は面白い』といろんな場所で言うこと以上に、やれることってなんだろうと考えた時、『専門店を作れば、いろんな人に面白がってもらえるかも』と思いついて、動き始めたんです」

内沼さん:
「お店は、その存在自体が強いメッセージ性を持つと思います。

場所を作れば、日記に興味のあるお客さんや、働きたいという人が来てくれたり、日記にまつわる情報が集まってきたりするだろうと思いました。

今まで日記との距離が遠かった人たちにも、このお店を不思議がって興味を持って、そのうちの一部の人でも日記をつけてみようかなと思ってもらえる場所を作りたい、と思ったんです」

 

お店が生まれて、小さな点が集まって、広がっていく

内沼さん:
「日記屋 月日の大きな特徴は、個人の方が出版している日記形式のリトルプレスをたくさん扱っていることです。

それを見たお客さんが、『私の日記も本になりますか?』と聞いてくれたり。だんだんとそんなやりとりも増えてきて、『あなたの日記を、本にしませんか?』と相談に乗るようなことも始めました。

実際に後日、『本にしました』と持ち込んでくださって、扱うことになった日記本もあります。

この場所をきっかけに、書き手が生まれる。その人の書くものが、より多くの人に読まれていく。ひとつの小さな店が、そういう存在になり得るというのは楽しいし、僕自身が目標としていたことでした」

お店ができてから、お客さんから思いがけない相談もたくさん寄せられたそう。

内沼さん:
「日記をつけても、なかなか続かないんですという声。親族の昔の日記が見つかったけれど、どうしたらいいでしょう? という声も。

そんなとき私たちにできることは、それほど多くはないんです。ただ、日記が好きで働いているスタッフが多いので、日記についていろいろとおしゃべりできる機会をいただけるのはとてもうれしい。

店があることで、小さな点が集まり、日記の世界が広がっていくプロセスに携われることは、本当に豊かなことだと思います」

***

日記は、ささいな自分の考えや気持ちをとどめることができるから、日々の暮らしそのものを生き生きと記録していける。

だからこそ、書き続ける価値があって、そして読み返す楽しみもあることに、内沼さんのお話を通して気付くことができました。

続く第2話では、そんな日記を「書いていく」ことについて、日記屋の皆さんにアイディアやヒントをお伺いしていきます。

(つづく)

【写真】木村文平

 


もくじ

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内沼晋太郎

1980年生まれ。NUMABOOKS代表、ブック・コーディネーター。新刊書店「本屋B&B」共同経営者、株式会社バリューブックス取締役、「八戸ブックセンター」ディレクター、「日記屋 月日」店主として、本にかかわる様々な仕事に従事。著書に『これからの本屋読本』(NHK出版)などがある。

 


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