【本屋の本棚から】後編:もっと、おいしく。もっと、味わいたい。食にまつわる4冊(広島・READAN DEAT)
編集スタッフ 松田
本屋に訪れ、本棚をゆっくり眺める時間そのものをお届けできたなら。そんな思いで企画した特集。
前編に続き、今回は広島市にある、本と器のお店・READAN DEATの清政(せいまさ)さんに、今の気分に寄り添うテーマで本を選書いただき、特別な本棚をつくっていただきました。
本日選んでいただいた本棚のテーマは、「食にまつわる本」です。
それでは本屋さんでの時間を、ゆっくりお楽しみください。
今日の本棚
「もっと、おいしく。
もっと、じっくり味わいたい」
たのしくて嬉しかった日も、
うまくいかなくて落ち込んだ日も、
やっぱりお腹は空くから。
誰かのために、自分のために
わたしたちは今日も台所に立ちます。
そんな日々の何気ない食卓を
愛おしく感じられるようになったり、
いつもの料理をもっと追求したくなったり、
あるいは別の誰かがつくる味を求めて
外に出かけたくなったり。
日々生きる上で欠かせない、
「食べる」ということについて
もっと大切に味わいたくなる
食の本を選んでいただきました。
【本棚リスト】
『自炊。何にしようか』 高山 なおみ 朝日新聞出版
『ポタージュ 野菜たっぷり家族のスープ』 HORO Kitchen 池田書店
『料理の意味とその手立て』 ウー・ウェン タブレ
『台所道具を一生ものにする手入れ術』日野 明子 誠文堂新光社
『cook』坂口 恭平 晶文社
『食べるとはどういうことか』藤原 辰史 農山漁村文化協会
『日本まじない食図鑑』吉野 りり花 青弓社
『えきべんとふうけい』マメイケダ あかね書房
『底にタッチするまでが私の時間』木村 衣有子 誠光社
『私の好きな料理の本』高橋 みどり 新潮社
この本棚の中から、特に清政さんが今オススメしたい本についてコメントいただきました。
すべては、素材のおいしさを引き出すために
清政さん:
「北京出身の料理研究家、ウー・ウェンさんの優しい語り口で、初心者にも分かりやすいレシピや料理の基本が紹介されています。ぼく自身、料理初心者なのですが、この一年で一番読み込んで実践した料理本です。繰り返しページをめくったので、表紙カバーがクタクタになりました。
たとえば塩の役割、油の温度についてなど、素材をおいしくいただくために、どんなことをしてあげたらよいのか。応用の前に、まずはシンプルな基本が大事なのだということは、料理だけでなく、どんなことにも繋がることだなと感じます。あと、大好物の麻婆豆腐のレシピも載っていて、何度も作りました。自分で美味しく作れたときの嬉しさといったら。
レシピの合間にはウー・ウェンさんの自叙伝やエッセイが綴られていて、こちらもすごく面白いです。初心者から玄人のひとまで、ぜひ手にとってほしい本です」
『料理の意味とその手立て』 ウー・ウェン タブレ
おいしい駅弁と、見落としてしまいそうな一瞬の風景を
清政さん:
「こちらは、当店で原画展をしてくれたことがある、マメイケダさんの新作絵本です。
彼女は、クレパスで描く美味しそうな料理の絵が有名なのですが、実は風景絵もとても味わい深いんです。
マメさんご自身も、イラストのように温かく優しさに溢れているお人柄。だれもが見落としてしまいそうな一瞬の風景に注目して、細かい部分までちゃんと描かれていて。何気ない日常を愛おしく思っていることが絵本から伝わってきます。
電車の旅のお楽しみである駅弁と、車窓から眺める風景が交互に楽しめるという、最強タッグ。チキン弁当やシウマイ弁当、サンドイッチなど、実在する個性豊かなご当地駅弁を味わいながら旅をしている気分になれる、そしてお腹が空く、しあわせな一冊です」
『えきべんとふうけい』マメイケダ あかね書房
食習慣に込められた、祈りや願いって?
清政さん:
「キュウリを奉納して、夏の病の身代わりになってもらったり。豆腐を食べて一年分の嘘を帳消しにしたり。日本各地それぞれに伝わっている食の風習を通して、人々の祈りや願いを感じることができるエッセイです。
著者は無病息災や五穀豊穣を願う食文化を「まじない食」と定義しているのですが、考えてみると、めでたい鯛料理や、お正月のおせち料理など、わたしたちの身近な場面でも根付いていますよね。本来の意味や込められた願いを理解できると、季節行事で何気なく口に入れていたものも、より美味しく大切に思えるようになる気がします」
『日本まじない食図鑑』吉野 りり花 青弓社
『料理本』は、本の究極のスタイルなのかもしれない
清政さん:
「食のスタイリングをたくさん手がけてきた著者・高橋みどりさんの選ぶ料理本や、さまざまな料理家の方が大事にしている一冊のことなど、料理本についての愛が溢れている本です。
この本に出会うまで、料理本を愛でるという感覚は自分にはなかったのですが、実は料理本ってアートブックや写真集として楽しめて、読み物としても面白く、そして実際に再現できる実用書ともいえて、あらゆる本のジャンルの中でも、ある意味で究極のスタイルなのかもしれないと料理本への見方を変えてくれました」
「例え100年前の料理であっても、レシピを見ながら実際にその料理を再現して作ることができるって、考えてみたら素晴らしいことですよね。他のジャンルでは、なかなかできないこと。モノとしてすごく貴重な存在だと感じます。本好きの方にもぜひ読んでいただきたい本です」
『私の好きな料理の本』高橋 みどり 新潮社
***
つかの間の本屋さんでの時間、いかがでしたでしょうか?
本との出会いにワクワクしたり、癒やされたり。まるで本当に本屋さんにいるような、居心地のよい時間を少しでもお届けできていたら、とても嬉しいです。
【写真】篠原 ゆき
もくじ
清政 光博
広島市にある個人書店「READAN DEAT(リーダン ディート)」店主。東京・下北沢の本屋 B&Bと品川のエキナカ書店で働いたのち、2014年に地元の広島でREADAN DEATをオープン。リトルプレスや写真集、暮らしやデザインにまつわる本のほか、作家のうつわや民藝の品を扱う。店内では企画展のほか、トークイベントやワークショップなども精力的に開催している。http://readan-deat.com
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