【あのひとの子育て】アン・サリーさん〈前編〉「子どもを抱きしめているようで、実は子どもに抱きしめてもらっているんですよね」

ライター 片田理恵

子育てに正解はないといいます。でも新米のお父さんお母さんにとって、不安はまさにそこ。自分を形作ってきたものを子どもにどう伝えるのか。正直、わかりませんよね。

だから私たちは、さまざまな仕事をされているお父さんお母さんに聞いてみることにしました。誰かのようにではなく、自分らしい子育てを楽しんでいる〝あのひと〟に。

連載第18回は、歌手であり医師、そしてふたりの娘を育てる母でもあるアン・サリーさんをお迎えして、前後編でお届けします。

 

子どもが生まれる前、歌うことは自分のためでした

トランペット奏者の夫、16歳、14歳のふたりの娘とともに暮らすアン・サリーさん。

学生時代から音楽活動をスタートさせつつ、大学卒業後は父と同じ医療の道へと進み、ふたつの仕事を両輪に自分らしい働き方を模索してきました。出産後は仕事をセーブして子育て中心の生活にシフト。娘たちの成長に伴い、少しずつペースを戻してきたといいます。

アンさんにとって、歌は生きることそのもの。音楽を通じて、医療を通じて、そして子育てを通じて感じる日々のさまざまな思いを歌に込めてきました。

アンさん:
「かつて、歌うことは自分のためでした。それは楽しみであり、喜びであり、慰めでもあった。音楽という美しいものを自分でもやってみたいという思いで、いつも歌いたい歌を歌っていたんです。

でも子どもが生まれて、歌は『目の前の子どもを寝かしつけるもの』になりました。自分ではない誰かの楽しみや悲しみのために歌うというのは、以前の私の中にはなかったこと。そこから歌が大きく変わっていったような気がします」

 

自分のための時間が子どものために変わる

生まれたての赤ん坊を抱いてその顔を見つめながら感じた思いを、アンさんは2007年に発表したアルバム「kokorouta」でこんなふうに歌っています。

ぼうや/おまえが生まれた/ふつうの日の ふつうの夜/だけど おまえが生まれた/
そのことで その日は その夜は/パパには忘れられない
(作詞:高橋睦郎/作曲:和田誠「おまえが生まれた日」より引用)

アンさん:
「娘が生まれた時に感じた神秘的な気持ちを歌った歌です。

それまではすべて自分のために使っていた時間が、子どものためのものに変わる。でもそれは私自身にとって大きな喜びなんだと気づいて、母になった実感を得たような気がしました。

今でもこの曲を聴くと、娘たちが生まれた頃を思い出します」

その後も娘の成長に伴い、歌は歌って聞かせるものから、一緒に歌うものへ。形を変えながら、家族の暮らしの中をいつも音楽が流れていたといいます。

この日アンさんがリュックに入れて持参してくださったキーボードは、幼い娘たちと過ごす時によく弾いていたもの。

アンさん:
「コンパクトで持ち運びがしやすいから便利なんです。これは2台目。ピアノだけじゃなくほかの楽器の音色を奏でたり、メロディーを流したりと、いろんな遊び方ができるのも楽しいんですよ。

長時間のドライブをする時は必ず車に積んであったし、近所の公園に持って行っては弾きながら一緒に歌ったり。今は私の歌の練習用で、音合わせをする時に使っています」

 

時間が少しずつ、自分に戻ってきた

そして今。家族が暮らす自宅リビングには、高校生と中学生になった娘さんたちが大好きなK-POPが流れているといいます。

アンさんも一緒に聴きながら、曲のルーツになっているであろう古いソウルやジャズを提案したりもするそうですが、「そこはまったくなびかずですね」と苦笑い。

アンさん:
「娘たちが小さい頃、子どものために歌うことで、母である私自身も安定していくような感覚がありました。自分も楽しいから歌っているし、子どものためであることが、同時に自分のためにもなっている。その両方があるから均衡が取れていたんですよね。

子育てって、親が子どもを抱きしめているようで、実は子どもに抱きしめてもらっているのかもしれない。ある時からそんなふうに考えるようになりました」

アンさん:
「とはいえ近頃は娘たちが全然抱きしめさせてくれないので(笑)、気持ちの行き場が夫に変わりつつあります。子育てに夢中な時期は、正直、なかなか夫に思いが向かないこともあったけれど、家族のフェーズが変わっていくことで気持ちにも変化が生まれていくんですね。

ライブで歌う曲も、子どもが大きくなるに連れて選び方が変わってきました。娘たちのための時間が少しずつ自分に戻ってきた今、あの頃よりも年を重ねた感性で、歌いたい思いがあります」

 

「おかあさんのうた」のこと

アンさんが歌う「おかあさんのうた」(映画『おおかみこどもの雨と雪』主題歌)を初めて耳にした時、ずっと昔、どこかでこの声を聴いたことがある。そんな気持ちになりました。

あたたかな愛情にくるまれて、安心して身も心も預けられるような、遠く、懐かしい、あの感覚。私たちは誰もみな、かつて生まれたての子どもだったことを思い出させてくれる「おかあさん」の歌声。

後編では引き続き子育てと音楽の話を伺いつつ、医師として人の命にたずさわるアンさんだからこその思いもお聞きします。

(つづく)

 

【写真】神ノ川智早

 

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アン・サリー

歌手、医師。大学時代からバンド活動を始め、医師として働いていた2001年に「Voyage」でアルバムデビュー。医学留学のため訪れていたニューオリンズからの一時帰国時に録音した「Day Dream」「MoonDance」がロングセラーとなり、現在までに多数作品を発表。2月3日には最新アルバム「はじまりのとき」が発売となる。ふたりの娘の母。

https://www.annsally.org


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