【台所道具5選】01:使いやすさのヒミツは20cm。サイズ感にこだわった、料理家さんの愛用アイテム(スズキエミさん)
編集スタッフ 奥村
取材でいろいろな台所にお邪魔するたび、つい目を奪われるのは台所道具たち。
料理上手な方々は、たとえ菜箸1本でも、そこに「選んだ理由」があるようです。
いったいどんな道具たちが、日々の料理を支えているんだろう? この特集では料理家さんや道具店店主さんに、長く愛用するよりぬきの台所道具をご紹介いただきました。
1人目は、料理家・スズキエミさん。
当店でも餃子レシピや豆腐レシピをご紹介くださっているスズキさん。実は大の台所好きで、気になるものはつい買ってしまうそう。今回はそんな中から、特に愛用している5アイテムを聞きました。
直径21cm。小ぶりな鉄のフライパン
▲スズキさんの愛用は、釜定の「ワンハンドパン」(Lサイズ)
スズキさん:
「鉄のフライパンが好きで5〜6個以上持っているのですが、中でもこの『釜定(かまさだ)』のフライパンは卵料理に最適。火の通り方が他とは違うんです。
よく熱し油を入れて、溶き卵をじゃっと入れてかき混ぜれば、ふわっふわの炒り卵が出来上がります」
▲鍋肌の小さな凹凸が、ふわふわに焼ける秘密のよう
目玉焼きやスクランブルエッグなど、かんたんな卵料理の仕上がりが格段にいいので、朝ごはん作りにも便利。それからこのフライパンで焼くと、パンケーキもふっくら焼けておいしいんですよ。
鉄なので重さはありますが、サイズが小さめだから扱いやすく、案外お手入れもらく。初めての鉄フライパンにもおすすめです」
▲表面ふんわり中とろり。「他のフライパンではこれ以上にうまく焼けません!」とスズキさん
先端が細い、竹の菜箸
スズキさん:
「木の菜箸に比べて先端がとっても細い、竹の菜箸。『竹清堂(ちくせいどう)』の菜箸を愛用中で、卵を混ぜる時に白身を切ったり、お弁当やおかずの盛り付けに使ったり、先が細いからこそできる細かい作業に重宝しています」
スズキさん:
「木の菜箸に比べると値は張りますが、一度使うと納得の使いやすさ。見た目も味があって良いですよね。
菜箸を太さ違いで揃えておくと、ささやかでも格段に作業効率が上がります」
1リットルの計量カップ
スズキさん:
「計量カップというと500mlくらいのものが一般的ですが、わが家で毎日のように使うのは1Lサイズ。これは合羽橋道具街で購入したステンレス素材のカップです。
お米を炊く時の水や、煮物に使う調味料など。調理に必要な水分が一度に計れるので便利なんです」
スズキさん:
「シンプルに水差しとして使うのにもちょうどいいサイズ感で、出汁をとったり、淹れたお茶を冷ます時にも便利。
基本的に台所道具は小さめのものを選びがちですが、計量カップだけは大きめが吉だと思っています」
1日分のごはんが入る、わっぱの米びつ
スズキさん:
「炊いたお米を入れておく、わっぱの米びつ。わっぱといえば東北のイメージですが、これは九州のお店からネットで購入したものです。
特に玄米をよく食べる方にはおすすめ。パサつかずもっちりして、余分な水分は適度に抜けて。ここに入れておくと食感も風味も格段に良くなります」
スズキさん:
「サイズ感も気に入っていて、直径20cmほど。食卓や台所に出しておいても気にならない大きさなんです。軽い杉製なので、扱いやすいのも◎。
見た目はコンパクトですが4合まで入るので、わが家では1日に食べる量を朝炊いてここに入れておけば、温め直さなくても、1日中おいしいごはんが味わえます。
通気性もいいので、夏でも極端に暑い場所でなければ、1日なら常温保管で。使い方も案外おおらかで大丈夫ですし、なにより佇まいがいいですよね。毎日使うのが、楽しくなります」
20cm前後の小ぶりなまな板
スズキさん:
「肉と魚以外の食材を切るのには、20cm大くらいの小ぶりな木のまな板を使っています。
限られた作業スペースでも使えますし、手の大きさにも合っているのか切りやすくて。食材はひとつずつ切るので、まな板はむしろ大きすぎない方が、使い勝手がいいと思うんです」
スズキさん:
「プラスチックとは違って、包丁の刃を傷めにくいのもいいところ。全体を水で濡らしてから使うようにすれば、食材の匂いもつきづらいです。
数年に1度くらいのペースで表面を削ってもらうと、また新しい状態で使えるので、実はコストパフォーマンスもいいんですよ」
毎日の食事作りには「20cm」がちょうどいい。
スズキさんが台所道具を選ぶ基準は、大きすぎないサイズ感と、機能がごくシンプルなこと。
フライパンや鍋も、3人家族には少し小さめ?と思える20cm前後のものが多くて意外でした。
スズキさん:
「わが家はおかずの作り置きをあまりせず、毎日食べ切る量を作るんです。
そうすると、料理に使いやすいのも、小回りのきく小ぶりな道具。フライパンだって小さめな方が火の回りもいいですし、しまったり取り出したりするのも面倒じゃないですよね。
直径20cmくらいのフライパンなら、3人分のおかずは十分に作れますし、意外とちょうどいいサイズなんですよ。
それから、ひとつの道具にはひとつの機能。これも選ぶときに意識しています。
多機能の道具にもつい惹かれますが、シンプルにひとつの機能のために作られたものこそ、結果的には丈夫で長く使える気がするんです」
できるだけ長く、心地よく使うために。スズキさんもの選びには、人一倍長く料理をしているからこその哲学がありました。
【写真】濱津和貴
もくじ
スズキ エミ
料理家。レストランやカフェ勤務を経て独立。料理教室『一汁一菜暦ごはんの会』主宰。季節の食材の持ち味を生かした料理が人気。3月に新著『季節を味わう手仕事レシピ -ラクに作れてずっとおいしい保存食のある暮らし-』(主婦の友社)が発売。ほか著書に『四季を味わう にっぽんのパスタ』(立東舎)、『ずっと作れる野菜ごはん』(主婦の友社)。インスタグラムアカウントは@suzukiemi.gohan。
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