【自分らしく働くには?】第1話:やりたいと思ったらやる精神で、がむしゃらだった20代

ライター 長谷川未緒

4月になり、初々しい社会人の姿を目にすると、新生活への期待と不安がまぜこぜになっているのだろうな、とまぶしく映ります。

働きはじめてずいぶん経ったわたしでさえ、新しい季節の始まりには、これからどう働いていこう? と、わくわく、そわそわ、もやもや。

居心地よく、自分らしく働き、生きていきたい。でもそのためには、どうしたら?

そんなことを考えたときに、話を聞いてみたいと思った方がいました。東京・神宮前で花屋「THE LITTLE SHOP OF FLOWERS」を営む、壱岐ゆかり(いきゆかり)さんです。

アメリカの大学を卒業後、日本のインテリアショップでPRを務め、フリーランスに転身。その後、PRと花屋と二足のわらじを経て、花屋専業へ。

そのときどきで、自分の心にまっすぐに従いながら歩んできた壱岐さんのお話から、自分らしく働くヒントを探りたいと思います。

第1話では、サンフランシスコでの学生生活や、寝る間も惜しんで働いたというインテリアショップでの働きぶり、フリーランス転身後について、伺いました。

 

行きたくて行ったアメリカなのに、消極的だった学生時代

父親の転勤にともない、アメリカ・ロサンゼルスで暮らすようになったのは、壱岐さんが中学3年生のとき。「来るな」という父親の反対を押し切ってついて行きました。

壱岐さん:
「3回くらい断られたんですけれど、日本の外に出てみたいという気持ちがあったので、絶好のチャンスだと思ったんです。

行ったはいいものの、わたしは基本的に根が暗いので(笑)、すぐにはなじめなかったですね。

羞恥心のかたまりで、友だちもできにくかったんです」

サンフランシスコの4年制大学に進学し、インテリアデザインを専攻、3年で卒業に必要な単位を取得します。

壱岐さん:
「4年目は設計事務所でインターンとして働き、インテリアデザインがどういう仕事なのか、実務的に理解できました。

そのままアメリカで就職したかったのですが、父親の勧めで『IDÉE(イデー)』の創業者・黒崎輝男さんに会う機会をいただいたところ、おもしろがってくれました。結果的に拾ってくれて、働かせてもらえることになったんです」

 

知らない世界に惹かれ、むさぼるように働いた

当時のイデーは家具の製造販売を中心に、花屋やカフェを開いたり、雑誌を創刊したり、豊かな生活を送るための事業を次々にスタートしていました。

壱岐さんも、入社後はイデーが発行していた『Sputnik(スプートニク)』の編集を経て、デザイナーの窓口のような役割を務めるようになっていきます。

壱岐さん:
「デザイナーが作る商品を持って、イタリアやドイツ、フランスなど、世界中の家具の見本市を社長とスプートニクのメンバーと一緒に回る仕事をさせてもらっていました。

いま考えると贅沢なことなのですが、社長が付き合っていた国内外のデザイナーさん300人くらいの窓口を、わたしが一手に引き受けさせてもらっていたんですよ」

壱岐さん:
「デザイナーといっても、当時のイデーは家具だけではなく映像や建築、アートなど、ジャンルは多岐に渡ります。

わたしは本当に何も知らなくて、それがかえってよかったんでしょうね。有名無名に関係なく、彼らがどういう思いで作品を作っているのか、むさぼるように聞き、知らない世界に惹かれていきました。

彼らの創作の引き出しは、歴史から紐解いたり、訪れた景色からデザインしたりと、とても豊か。本を読んでいるようにおもしろくて、時間がもったいなくて、寝るのがいやだったくらいです。

その分、もちろんがんばらなきゃいけなくて。ビジネスで使う英語も働きながら学びました。

基本的に内向的な性格ではありますが、誰かのために何かをすることに恥ずかしさを感じることはなく、どちらかというと、そのデザイナーの思いや熱量を誰よりも同じ温度で伝えることができる自分を発見できた感じが、うれしかった記憶があります。

『モノづくりに対する思い』をいろいろな方向から表現できるようになっていき、そういうやり取りはすごくおもしろかったです」

 

叩き込まれたのは「近道で結果を出そうとしない」

新しいことをどんどん覚え、さまざまな世界の物づくりの現場に立ち会った20代。時差も関係なく寝る間も惜しんで働く中で、苦労や挫折などはなかったのでしょうか。

壱岐さん:
「20代は、体力にも余裕があったし、ほんとうに楽しかったですね。

もちろん撮影や展示会など、たいへんな仕事はありました。わたしは黒崎さんと近い場所で学ばせてもらっていたので、めちゃくちゃ怒られたし、逆に腹をたてることもありました。

いまでもよく覚えている言葉が、『近道で結果を作ろうとするな』。

これで行きましょう、と決定したことも、『もしかして、こっちのほうがいいかも。じゃあ変えよう』という柔軟さを持ちなさい、とすごくよく言われていたんです」

壱岐さん:
「若かったわたしは1回決めたことを踏みとどまること自体が、どうしても得意ではなくて。最短距離でぜんぶをこなしたかった。

でも、そういう発想の転換をすることの繰り返しが、困難を乗り越え、感動や美しさを生むんですよね。今は黒崎さんが言ってたことがよくわかります」

楽しいばかりだったと振り返った20代の会社員生活を経て、30代、迷い多きフリーランスの道に進みます。

 

やりたいと思ったら、やる

その後、黒崎社長の退任にともなってイデーを退職した壱岐さんは、PR会社勤務を経て、イデー時代の同僚だったフードディレクターの野村友里さんと働くように。

壱岐さん:
「当時、それまで関わっていたデザイナーさんたちの中に、イデーでの企画・販売が一時的になくなったことで、販路がなくなってしまったり、日本での活躍の場がわからなくなる方々がいて。何人かのデザイナーさんが相談ベースで連絡をくれたんです」

壱岐さん:
「そこで、それまでお世話になっていたインテリアショップのバイヤーさんに、彼らのアイディアや商品を紹介させてもらったり、企画を一緒に考えたりといったことを、友達としてするように。

お仕事としてお金ともらう行動かどうか?など考えたりするわけではなく、ただ必要に駆られて、求められている感覚がうれしくて、楽しんでやっていました。

イデーで、やりたいことは心に素直に動くことが大事という精神を教えてもらっていたからかもしれません」

仕事にするつもりはなく、仕事になるとも思っていなかったそうですが、次第にやりとりが増え、かつてともに働いていたデザイナーを中心に、正式に仕事として依頼されるようになり、PR兼卸業がスタートしました。

 

誰よりも高い熱量で伝える自信はあったけれど……

壱岐さん:
「このひとならこの作品の良さをきっとわかってくれるはず、という相手にピンポイントでアプローチして雑誌に取り上げてもらったり、作品にふさわしいショップを選んでバイヤーにつなげたり。

海外で暮らすデザイナーとは時差なく連絡を取り合い、国内のバイヤーや編集者を通じてお客様に知ってもらうというのが、夜遊びが不得意で社交性のないわたしにできる唯一のPR方法でした。

自分のことを話すのは苦手だけれど、素晴らしいデザイナーや作品のことを伝えることはできる。引き立て役は性に合っていたんです」

壱岐さん:
「デザイナーはたまたま違う国にいて、時差の関係で自分の思いを伝えることはできないから、彼らと同じ熱量で、わたしが代わりに話す。当時のわたしは、その熱量が誰よりも高かったと思います」

天職ともいえるような仕事をしていながら、じつは同時に、眠れなくなるくらい自信がない時期でもあったのだとか。

続く第2話では、自分にしかできないことを模索する中で見つけた花屋のことや、出産後に苦悩した仕事と育児の両立など、悩みに悩んだという30代について伺います。

(つづく)

 

【写真】川村恵理


もくじ

 

壱岐ゆかり

THE LITTLE SHOP OF FLOWERS主宰。インテリア業とPR業を経て、花の持つ⾊の豊かさに魅せられ2010年に花屋を始める。装花、スタイリングなど、⼈の気持ちを花に“翻訳”する花屋として活動しながら、廃棄花を染料にして暮らしのギフトに落とし込む提案も。植物や花の活⼒を信じ、⼈⽣の様々な場⾯でそっと寄り添える存在になれたらと、⽇々奮闘中。

インスタグラム: @thelittleshopofflowers

 


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