【あるがままなふたり】前編:真面目なままでいい。生活者として真剣なことが、企画になっていった(波々伯部 × 岡本)

ライター 長谷川賢人

ふだんはせわしなく、仕事と向き合うクラシコムのスタッフたち。ゆっくり、じっくりと、お互いのこれまでを振り返って話す時間は……実はそれほど多くありません。

でも、あらためて話してみると、人となりがもっとわかったり、新鮮な発見が得られたりするもの。そこで、スタッフ同士でインタビュー(というより、おしゃべり?)してみる機会を持ってみることにしました。

今回は、当店にかかわるデザイン全般を手掛けるコーポレートクリエイティブ室の波々伯部(ほほかべ)と、日々発信する読みものの制作やインターネットラジオ「チャポンと行こう!」のディレクターを務めるメディア編集グループの岡本が登場。

入社して7年目になり、産休や復帰も経験してきたふたり。お互いに「働き始めてから、同じところで過ごす年月は、クラシコムが最も長くなった」と言います。どうして、そんなふうになったのかを思ってみると、「自然なままでいられること」が理由かもしれないそう。

そんな “あるがままなふたり” ですが、クラシコムで働いていくなかで、あらためて自身に「変わったこと、変わらないこと」もあるのでしょうか?

前編は波々伯部が主に聞き手となって、岡本に色々と質問してみました。

 

唯一の長所だ、と思っていたのに……

波々伯部:
岡本さんは、どんなきっかけでクラシコムへ入社したんですか?

岡本:
クラシコムは2社目なんです。最初はファッションなどを扱う通販サイトの運営会社に入りました。「これで好きなお洋服に携われる!」と思っていたら……配属がインテリアのチームだったんです。もちろん、寂しい気持ちはありました。でも、CIBONEやマリメッコといった30ほどのブランドと出会って、生活雑貨に初めて意識が向きました。

ある先輩は、私がインテリアに明るくないのを察して、「一緒に見に行こう」と会社があった千葉から、わざわざ新宿伊勢丹の生活雑貨のフロアまで案内してくれて。そこでアラビアのパラティッシなどを見て、「こんな世界があるんだなぁ」って知りました。

波々伯部:
新卒入社のときだから、なおさらそういう先輩の存在は嬉しいですねぇ。

岡本:
しかも、私の誕生日にアラビア社トゥオキオのプレートとマグカップを贈ってくださったんです。私にとって初めての北欧食器でした。それを使うと、テンションがグッと上がるような感覚があったんです。

波々伯部:
若い時にそれを経験できるなんて、すごく良い…!

岡本:
ありがたかったな、と思います。就職を機に一人暮らしを始めたので、暮らしを自分で作っていくことの面白さにも目覚めていった時期でした。

波々伯部:
そういう意味では、配属した人事担当者は隠れた適性を見抜いたともいえそう(笑)。でも、そこから転職を選ぶんですね。

岡本:
半年に一度ある上長面談で「岡本さんは真面目すぎるね」と言われて。私は「真面目さが唯一の長所だ」と学生時代から自分を捉えていたから、その評価にショックを受けて、どうしたらいいかわからなくなってしまって……。

波々伯部:
たぶん、コミュニケーションの仕方を変えてみよう、みたいなことが言いたかったんですかね。

岡本:
思えば、真意まで深く確かめきれてはいなかったのですが、だんだんと今後の仕事や、別の働き方についても考え始めていきました。そんなとき、クラシコムの求人に出会って、「北欧、暮らしの道具店」のお客さまの一人でもありましたから、応募してみようと。

 

私の特性が、ここなら役に立つのかも

波々伯部:
私から見た岡本さんは「地に足が着いた人」という印象があります。いつも目の前のことにきちんと向き合っているようなイメージです。とはいえ、入社した当初は大変でした?

岡本:
実は……その……入社して半年くらいは、ずーっと「会社に行きたくない」なんて思ってました。

波々伯部:
えー! 意外!

岡本:
まずは商品ページ作りに挑み続けていたのですが、慣れない撮影に苦戦していましたし、文章を書くのは好きだったけれど、これほどの量を締め切りを意識しながらまとめるのは難しくて。力量のなさを感じるばかりで、とても全ては打ち返せないままの半年間でした。

スタッフたちのお客さまへの気持ちや、商品に対する想いに、私自身が追いつけていないと感じて、しっかり応えられていない。その現実にいたたまれなくなっていたのかも。

波々伯部:
何かしらの転機があって、そこから抜け出せていったんですか?

岡本:
商品ページだけでなく、読みものも書き始めてからかもしれないです。前職で受けた「真面目すぎる」といった評価が、自分のなかで昇華されていくような感覚があったんですよね。毎日気づいたことを言葉にして、企画書にまとめて、編集チームの企画会議でおしゃべりしてみるうちに、「自分の特性がクラシコムでより生きていく感覚」みたいなものを覚えるようになって。

もしかすると「真面目すぎる」という私の特性が、ちゃんとこの場所なら役に立っているんじゃないかな?と、だんだん思えていきました。

波々伯部:
自分がマイナスに思っていたことが、むしろ企画の柱になったりしながら、編集チームのメンバーもそれを認めてくれる。固い言い方だけど、自己開示と自己肯定感のアップが同時にできたような体験というか。

しかも、そうして作った読みものを、お客さまが受け止めてくださって、共感してくれる人がいると気付けるのも大きいですよね。

岡本:
はい、本当にそう思いますね。

 

ずっと、何者かになりたかった

波々伯部:
ターニングポイントになった読みものって、ありますか?

岡本:
私は何事にも意味を求めたくなっちゃう性格で、ずっと「何者か」になりたい人間だったんですね。自分だけが持つ「特別な何か」があると信じたい気持ちがありながら、人生で過ぎていった点が、いつか全てつながって線になるような日が、本当に訪れるのか不安でした。

それで、ある時に「寄り道人生」という特集を作りました。いろいろな経験をしてから、55歳で自分のお店を開いた女性にお話を伺った企画です。

それを書きながら、私も寄り道をした先でクラシコムという場所に出会えた一人だと感じましたし、やっと「何者か」になりたいというぼんやりした憧れから解き放たれた気がしています。

波々伯部:
「何者か」になりたいわけではなくなったんですね。今の自分自身を認められるようになったんだ。

岡本:
そうなんです。人生で初めて、「何者か」への憧れがない時期かもしれません。今は、編集の仕事をこれからも続けていければ、と思っています。

 

「やったことのない仕事」も、目指すところは一緒だったから

波々伯部:
今では「チャポンと行こう!」のディレクターとしても、収録だけでなく編集までがんばっていますよね。もともと、そういう音声の編集ができたんですか?

岡本:
全然やったことなかったんです。でも、クラシコムだと、経験の有無よりも「できそうな人にお願いしてみる」という風土がありませんか? それこそ入社して少し経った頃に「動画コンテンツを作ってみよう!」となって。私は機械系は弱いくらいだから、ドキドキで。でも、やってみたら案外に大丈夫だと思えて、それがなんだか嬉しかったんです。

波々伯部:
確かに私も、デザイナーとして「やったことのないこと」の仕事が、だいたいかも(笑)。

岡本:
わからないこと、初めてのことでも一人きりでやり切らないと、と身構えなくていいのも大きいです。動画のときも、全くわからないなりにネットで調べたりしながら、当時のマネージャーと「こうしたらいいんじゃない?」なんて話し合って作っていって。

「やったことのないこと」も投げられっぱなしではないし、一人で悩むのではなく、社内のどこかにちゃんと「投げかける場所がある」と思えるから、本当にありがたいですね。

波々伯部:
私のいるコーポレートクリエイティブ室だと、マネージャーの佐藤さんともよく、「やったことのないこと」であっても考え方は一緒だよね、みたいなことを話し合うことが結構多いかもしれないです。

使うツールが違う、作る方法だけが違う、というだけで、根本的な考え方や目指すところは他のものと同じだと捉えられれば、「やったことのないこと」でもそれほど構えずに取り組めるんです。

岡本:
うんうん、確かに。「チャポンと行こう!」の音声も「会話の編集」と捉えれば、読みものを作っているときと考え方は一緒だと感じることがあります。

 

みんなが生活者として必死に生きている

波々伯部:
以前に、復帰に対して不安に思っていることを話してくれたことがありましたよね。産休と復帰を二度経験して、何か変わったことはありますか?

岡本:
波々伯部さんと話した最初の育休では、毎日が初めてなことばかりな中でも子供との暮らしを楽しめている感覚があって、「復帰したらどうなってしまうんだろう」と心配でした。

でも、二度目の育休はなかなか大変で、復帰の意味合いが全然違って。すでに子供がいるところに、新生児が加わるとこんなに大変なんだと、日々をこなすので精一杯な状態でした。

だから復帰した時、すごく「息を吸えるような感覚」があったのを今でも覚えています。読みもの企画の動機を考える時も、意識せざるを得ない事柄が増えました。

波々伯部:
暮らしに対して、より考えることが広がったような感じですか?

岡本:
そうですね。暮らしに対する切実さが増したというか。特集や読みものを作るときは、ざっくりとしたテーマをもらうのですが、それと自分の心に架け橋がかかると、動機が生まれて書けるようになる、と私は思っていて。

波々伯部:
どうやって架け橋を見つけていくんですか。

岡本:
私と、そのテーマに関する具体的なシーンを想像して、それを足がかりにして書きます。でも、自分と接点が少ないものだと、なかなか浮かばないものもありますけど、過去も振り返りながら探っていくと、風景がぱぁっと見えることもあるんです。

波々伯部:
岡本さんが社内の編集読本に、「アウトプットのためのインプットをしない」とコメントをしていたのがとても印象的で。何かを書いたり作ったりしていると、ついつい、したくなっちゃうものじゃないですか。「しない」というのは潔いし、それでも企画を立てたりアイデアを出したりしているのがすごいなって。

岡本:
仕事として暮らしのことに関わるようになって、実は一時期、雑誌に載っているような暮らしぶりを目にすると「こんなふうにはなれない」と、距離を置いていた時期があったんです。でも、読みものは企画しないといけない。どうしよう……となったとき、何かしらの「企画の種」は、一生懸命に生きていれば見つかるかもしれない、と頭をよぎったんです。

「みんなが生活者として必死に生きている」という目線で、日常をつぶさに見てみたら、意外とその種が散らばっている。だから、「アウトプットのためのインプット」はしなくても大丈夫なんじゃないか、と肩の力が抜けました。

※…当店の編集姿勢や方針・価値観をまとめた、社内向けの読本

波々伯部:
やっぱり、岡本さんは一生懸命に生きてるんだなって感じがします。眼の前の暮らしに切実に向き合って、心との架け橋を大事にしているから、できることなんでしょうね。

 

真面目さを、そのまま表していけばいいんだよ

岡本:
振り返ってみたら、クラシコムで過ごす日々では「できないことをできるようになってください」と言われたことは一度もないような気がしていて。

波々伯部:
言われてみたら、私もほとんどないかもしれないです。

岡本:
できないことを変える過程ってだいたい苦しいし、楽しさも少ないじゃないですか。それよりも、長く続けていくためには「この人ができることを突き詰めてみよう」という考えがあるんだと思います。それが、私にとってはありがたいです。

「真面目すぎる」という私に、「もっとラフにいこうよ」と接するのではなくて、「真面目さを、そのまま素直に表していけばいいよ」と言ってくれる環境がある。だから、すごく居心地がいいんだろうなぁ、と思っているんです。

 

(つづく)

【写真】川村恵理

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