【おおらかなインテリア】第3話:暮らしを作る「リアルなもの」も受け入れながら、好みのキッチン空間に

ライター 瀬谷薫子

片づけや収納と無理なく向き合いながら、心地よい住まいに暮らしていきたい。今回はインテリアスタイリストの大谷優依さんに「おおらかなインテリア」をテーマにお話を聞いています。

1話目では大谷さんの収納に関するマイルールを、2話目では子どもグッズの収納アイデアを伺いました。3話目はキッチン。一般的な収納場所や、あるべきものを見直した、大谷さんらしい工夫が詰まったキッチンを拝見します。

 

特集の1話目はこちらから

 

一見、ものがほとんどないキッチン。そのわけは?

白を基調とした大谷さんのキッチンは、物が少ないのが印象的。暮らし感をいい意味で感じさせない、スタジオのようなすっきりした空間です。

コンロ周りにも調味料や台所道具はほぼ置かず、吊り下げ収納もありません。

こまめな掃除が得意ではないからこそ、調理中の油はねがないよう、道具はすべてキッチンカウンター下の戸棚にしまうように。

ものがないことで、ささっと拭くだけで掃除ができ、きれいな状態をキープしやすくしているそうです。

▲「ジョージ・ジェンセン・ダマスク」のティータオルを愛用

洗いカゴを置かないのも、大谷さんのこだわり。スペースの削減になることもそうですが、一番の理由は「水垢がたまるのが嫌だから」。

今は食洗機をメインに使っているので、そこから溢れた食器など、手洗いをしたものを乾かす場所としてキッチンクロスを代用しています。

 

「普通ならここにしまう」にとらわれない

包丁置き場を尋ねてみたら、シンク脇の引き出しを開けた大谷さん。引き出しの片隅にひっそりと包丁が入っていました。意外なしまい場所でしたが、これにもちゃんと理由が。

大谷さん:
「食材を切る作業台がここにあるので、手元に一番近い引き出しの中に収納するのが動線としてはベストなんです。ここから包丁を出して食材を切り、出た生ゴミは同じ引き出しにあるポリ袋に入れてゴミ箱へ。

包丁置き場というと普通は別の場所をイメージしますが、自分が料理をするときの動きを考えて、ここにおさめることにしました」

食器は食器棚ではなく、キッチン上の作り付け棚にすべて収納。料理をしてそのままキッチンで盛り付けられるので、食卓に運ぶまでの動線がスムーズに。

右下から一軍の器、その上が二軍、左下が三軍、左上は使用頻度の少ない茶器と、頻繁に取り出すものから順に、手を伸ばせば届く位置に置いています。

 

無駄なく収納できるよう「ぴったり」を探して

▲無印良品のゴミ箱(左)と、ideacoのゴミ箱(右)が隙間なくおさまっています

キッチン下にある作り付けの棚を開けると、中にはぴったりとおさまった2つのゴミ箱が。ここにおさまるゴミ箱を時間をかけて探したというのも、大谷さんらしいエピソードです。

大谷さん:
「可燃、不燃、ペットボトルにビンカンと、ゴミ箱ってキッチンにいくつも必要ですよね。でも、できるだけ外に出ている数は減らしたかったんです。

本当は冷蔵庫の横に置けるスペースはあるんですが、ゴミ箱があることでインテリアの雰囲気を壊したくなくて。なので、キッチン下の戸棚の中に絶対におさめようと思って、ちょうどいいサイズを探しました。

収納はできるだけスペースの無駄がないようにしたいので、見た目の良さはもちろんですが、どれだけジャストサイズでおさまるかが大事。寸法を測って、あらゆるショップをネットで見て、できるだけぴったりおさまるものが見つかるまで探しています。

なので、この2つのゴミ箱がシンデレラフィットしたときは、嬉しかったです」

 

実用的ではなくても「ここにあることが大事」なものたち

そうやって実用と効率を重視し、余計なものは置かずすっきりした空間を作る一方で、可愛らしい空き缶やグリーンなど、実用的ではなくても「可愛いもの」はあえてキッチンの一番目立つところに飾っているのも、大谷さんらしさ。

キッチンにはふと目をやると癒されるような眺めがところどころにあります。

大谷さん:
「冷蔵庫横のこのスペースは、好きなものだけを集めた一角です。デザインが可愛くて購入したピザの空き箱や、特に使う機会もないけれど飾っているブラシ。

キッチンの上にある空き缶やビンも、実際使っているものは少ないのですが、ここにあることが大事。

効率的な収納を考えながら矛盾しているかもしれないですが、実用的ではないけれど目をやるたびに嬉しくなるスペースをもつことが、私にとっては大切です」

 

スタイリングできない「リアルなもの」も受け止めながら

全3話でご紹介した大谷さんの住まい。そこには自分の苦手なものと好きなものを理解しているからこそ作り上げられた、彼女らしいインテリアと、それを保つ工夫がありました。

大谷さんの言うように「暮らしはスタイリングできないものばかり」。それでも、そんなリアルを受け止めつつ、楽しみながら住まいの中身を考えていきたい。

たとえばそれは、ふと眺めるたび癒される窓辺や、お気に入りのものを集めた一角を作ること。たとえ全部ではなく一部でも、そんな場所があれば、今日もわが家はこれでいいのだと思える気がします。

心地よい暮らしの正解とは、きちんと片づいていることだけではなくて、そんな自分に合った “おおらかな形” を見つけることなのかもしれません。

 

【写真】清永洋

 


もくじ

 

大谷 優依

 雑誌と書籍のエディトリアルデザイナーを経て、2012年インテリアスタイリストとして独立。 ライフスタイル誌を中心に、雑貨、インテリアや空間イメージのスタイリングを担当。 企業ブランドのカタログ、広告、空間演出なども手がける。Instagram:@otaniyui


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