【しろうとからのふたり】前編:クラシコムっぽい商品を探すのではなく、自分に問う。そうしないとお客さまにも響かないから(菅野 × 藤波)

ライター 長谷川賢人

ふだんはせわしなく、仕事と向き合うクラシコムのスタッフたち。ゆっくり、じっくりと、お互いのこれまでを振り返って話す時間は……実はそれほど多くありません。

でも、あらためて話してみると、人となりがもっとわかったり、新鮮な発見が得られたりするもの。そこで、スタッフ同士でインタビュー(というより、おしゃべり?)してみる機会を持ってみることにしました。

今回は、お店に並べる商品をバイヤーとして仕入れる「MDチーム」の菅野と、日々お届けする読みものをつくる「メディア編集グループ」の藤波が登場。

▲左から)藤波、菅野

入社して4年目の菅野と、もうすぐ3年目に入る藤波。お互いに「まったく違う仕事からの転職」という共通点があります。菅野は管理栄養士やカフェ店員、藤波は看護師という前職を経験しています。ふたりの変化の起点、それからの日々について、聞いてみました。

素手で、素足で、素顔で。そして素直に。そんな「素人(しろうと)」からスタートしたふたりが、クラシコムで働いていくなかで、「変わったこと、変わらないこと」はあるのでしょうか?

前編は藤波が主に聞き役となって、菅野に色々と質問してみました。

 

モノを手放すことでで知った、選びぬく大切さ

藤波:
菅野さんは「北欧、暮らしの道具店」をいつ頃から知っていたんですか?

菅野:
正確には覚えていないんですが、私はお買い物が好きで、ネットで調べるときに候補として上がってくることが結構多くて。商品ページが充実しているから、読んでいるうちに、すごく買いたくなっちゃう場所でした。だから、なるべく見ないようにしていたくらい(笑)。

藤波:
「北欧、暮らしの道具店」に並んでいるようなモノが好みなんですか?

菅野:
そうですね。ただ、雑貨やお洋服だけでなくて、買い物っていう行為そのものが好きなんです。モノを見るのがすごく好きで、買う目的がなくてもショッピングセンターに行くのも楽しい。ストレス発散にもなるんですよね。好きな世界観に触れたり、「これいいなぁ」なんてやっているうちに元気が出てくる。

一人で買い物に出かけたときなんて、休憩なしで一日中動き回っちゃいます。ただ、あれもこれも欲しくなっちゃって、たくさん見た中から一つに絞り込むのが難しいんです。だから物が多くなりがちで。どこか雑然とした部屋を前に、たしか社会人2年目くらいの時に、ある本に影響されて片付けてみることにしたんです。

藤波:
どんな本ですか?

菅野:
カレン・キングストンさんの『新 ガラクタ捨てれば自分が見える』(小学館)という風水の本でした。それに感化されて、モノを選び取る大切さとか、部屋を心地よい状態にしておくとかに目覚めたところもあります。

選び取る、という体験で覚えているのが、「北欧、暮らしの道具店」のデビューお買い物がD.B.K.社の「スチーム&ドライ・アイロン」だったこと。色々なメーカーの商品を見ていたけれど、商品ページに映る佇まいの格好良さや、愛用コラムの説得力に惹かれて、「私も暮らしに取り入れてみたい」ってちゃんと思えたんです。

藤波:
最初に出合う商品との衝撃って、わかります!そこで、ぐっと心を掴まれたというか。

菅野:
そうそう。思い出、ありますよね。

 

管理栄養士になったのは、おいしい給食の記憶から

藤波:
クラシコムに転職される前は何をされていたんですか?

菅野:
2社経験していて、どちらも社会福祉法人でした。1つ目は保育園で管理栄養士として働いていました。給食をつくったり、献立を考えたり、食育のための紙芝居を作ったり。子どもたちと一緒に恵方巻きを作って、「今年の恵方はこっちだよ」なんて言ってました。

藤波:
保育園の管理栄養士になったきっかけは?

菅野:
子どもが好きだったのもありますけど、幼い頃からの食体験に興味があったからですね。

私自身、小学校の給食がとてもおいしかった記憶があるんです。「県内で2番目に給食がおいしい」と言われていた学校でした(笑)。偏食ぎみだったのが給食でいろんなおいしさを知ったり、「三角食べ」の意味みたいなことがわかったり。「働くなら、子どもたちにも同じような体験をしてほしいな」と思って、給食がおいしい保育園に就職しました。

管理栄養士になったのは、「仕事=手に職」という先入観もありました。家業は農家で、母が保健師なんです。自分なりに資格を持って働くなら、興味もある管理栄養士かな、と。会社員として仕事をする私、というイメージも湧かなくて。

あと、高校生くらいのときにはダイエットが気になるお年頃なのもあって、栄養学の本を図書館で借りたりしたのもきっかけだったのかも。

藤波:
ついやりたくなるお手軽ダイエットじゃなくて、栄養学から入るところに菅野さんの性格がちょっと見える感じがします!そこから、もう一社経験されるんですよね。

菅野:
2年ほど勤めた後、老人ホームが経営するカフェに転職しました。転職の理由は、もともと絵を描くことが好きで、スクールに通ってみたいという気持ちがずっとあったから、そのためにいったん仕事をアルバイトに切り替えて時間を作ろうと思ったんです。

大きな敷地内に老人ホームと総合病院があって、カフェは利用者の憩いの場になっていたんです。病院の待合番号もカフェに表示されるから時間を潰すのもぴったりですし、近所の学習塾の先生がお昼を食べに来たりする、開けた場所で。接客と調理を担当して、5年ほど働きましたね。

 

「楽しいのに、しっくりこない」…次へ進むきっかけに

藤波:
クラシコムへ転職したのは、どういった理由からでしたか。

菅野:
仕事は楽しくて好きだったんですが、どこかしっくりこない感覚があったんです。「資格があれば、いざという時に、どこでも働ける」という安心感を持っていた反面、私は資格や仕事をどこか「ツール」のように捉えてしまってもいたんでしょうね。

でも、絵の学校に通ったり、たまたま縁ができた「手創り市」のスタッフを続けたりする中で、「仕事以外の好きなことが集まっている空間の尊さ」に気づいたんです。もし、それが仕事になったら、どんなに幸せだろうと。

ただ、具体的にどんな仕事なのかまではわからなくて。好きなお店で働くのか、好きな革製品を作る会社に入るのか……いろいろ考えて、求人サイトを見たり、実際に面接を受けたりしていました。そんな時に、クラシコムの求人を見つけて、ピンときたんです。買い物好きだし、いろんな作家さんの作品を見てきた経験も活かせるかもしれない。

藤波:
それで、とりあえず応募してみようと。私も、そのもやもやはわかります。「仕事が好きなものに近すぎてもつらい」と感じる人もいるそうですが、それだって経験してみないとわからないですもんね。面接ではどんな話をしたんですか?

菅野:
それが、とても緊張していたからか、あまり細かくは覚えていないんです。バイヤー職の募集だったので、「最近買ってよかったものは?」とか「どういう方法で商品の情報を集めていますか?」とか聞かれたのですが……印象に残っているのは、面談だけれど「試されてる感」が全然なくて、本当に興味を持って質問してくれている感じがして。

コロナ禍の真っ只中で、リモート面接に緊張したのは覚えています。緊張しすぎて、膝の上にペンギンのぬいぐるみを乗せて面接に臨んだほど。そしたら、何かの拍子に持ち上げてしまって、それで話が盛り上がったり(笑)。

藤波:
そういえば、私も面接は緊張して、LAPUAN KANKURITの湯たんぽを抱きました(笑)。

菅野:
バイヤーとしてのスキルはなかったけれど、自分なりの買い物体験や商品を見る目線、「北欧、暮らしの道具店」のコンセプトに共感していることは、本当に伝えたくて伝えた感じです。たとえば、私は買い物好きだけれど、接客されるのが苦手なところがあって……。

藤波:
あ〜、わかります……。

菅野:
もちろん、話せてよかったなぁと思うこともあります。セレクトショップに行って、お店の方の目線で選ばれたモノを通じて世界観に浸れるのもいいし、ほどよい接客で商品の良さを知ることも楽しい。そこで買い物ができると、とても明るい気持ちになれる。

そんな場所の一つが、私にとっての「北欧、暮らしの道具店」なんです。商品ページを見る中で、店員さんと直接会っているわけじゃないけれど、とても丁寧にこちらのペースで接客してもらえてると感じられるような。それに、このお店に並んでいるものには、どこか安心感があるなぁって、ウェブ上でも伝わったんです。

 

菅野さんが「本当に良い」と思うものを見せてほしい

藤波:
菅野さんから「選び取るのが苦手」と聞くと、バイヤーって大変そうだなぁと……。

菅野:
そうなんです(笑)。私は全ての選択肢を並べて見たいタイプ。自分の中である程度は絞り込めている時はスッと選べるんですが……たとえば、漠然と「アウターが欲しいな」みたいな状態でお店へ行っちゃうと、全部見たくなるんです。

「これ!」というものがなかったら、何も買わずに帰ることも全然あります。「全ての商品の中から一番良いものを選びたい」という気持ちが強くて。

藤波:
どうやってモノ選びの軸を保っているんですか?私だったら絶対に迷子になっちゃいそう。

菅野:
実は商品を見ていると、自分の軸も見えてくるんです。例えば、形が似ているものを選んでいたり、丈の長さにこだわっていたり。そういうのが分かってくると、自然と「こういうのが欲しいんだ」と明確になってくるんですよね。

そこに至るまでにはものすごく時間がかかって、疲れることもあるのですが、どこか楽しんでいる部分もあるし、自分のもの選びには必要なプロセスだとも感じています。

私はバイヤーの仕事をしていると、商品を通して自分の内側まで伝わってしまうような感覚があるんです。セレクトした商品で、その人のセンスや価値観が丸裸になる気がして。最初は提案する商品を選ぶだけでも緊張していました。

そのなかで「クラシコムっぽい」ものを提案しようとするフェーズがあったのですが、それよりも大事なのは、自分自身がその商品をどう思っているのかということで。そこに向き合わないと、お客さまにも響かないんだなと今は感じています。商品を選ぶときに「地に足がついている」というか。

「菅野さんが本当に良いと思うものを見せてほしい」と言われるので、ひたすら自分と向き合ってセレクトしています。最近、ようやく「私らしさでいいんだ」と思えるようになってきました。

藤波:
そう思えるようになった商品って、たとえば、どんなものですか?

菅野:
TEMBEA(テンベア)のバゲットトートですね。定番ともいえる商品ですが、私はこういうベーシックなものが結局好きなんだと気付かされました。流行に流されないもので、どんな装いにも馴染んでくれる。そういう安心感のあるもの。

むしろ、ベーシックなものにも、ちゃんと魅力を伝える方法はあるんだ、と身に沁みましたね。たとえば、商品ページを作るときの打ち合わせで、私の頭には「友達のグレーヘアのお母さん」が浮かんでいました。もともと、その人がバゲットトートを使いこなしている姿が素敵だと思っていて。

そこで商品ページでも、カジュアルな雰囲気になりがちなところを、50代くらいの方がさりげなく持っている姿にフォーカスしたんです。「何をセレクトするかも大事だけれど、それ以上にどんなふうにお客さまに伝えるのか、表現するのかも考えたいよね」と、MDチームのマネージャーの竹内さんからもよく言われていて、その意味がようやく腑に落ちた気がします。

藤波:
バイヤーとして自信がついてきて、これからやってみたいこと、ありますか?

菅野:
実は、自分の興味やご縁をきっかけに、新たなものづくりの芽が出ていて。まだどうなるかは分からないのですが……。それでも、自分の興味関心が、仕事の幅を広げてくれているのを実感しますし、嬉しいです。

あと、この春から新卒入社の方のメンターにもなったんです。自分が初めての頃のことも思い出しながら、今は感覚的に理解している部分も多いので、それをまた言語化する必要があります。私も先輩たちから教わったように、また次へつないでいきたいですね。

(つづく)

【写真】川村恵理

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