【黒子のふたり】前編:たまたま、が重なって。数字の世界から見える「北欧、暮らしの道具店」も面白いです(井出 × 木村)
ライター 長谷川賢人
ふだんはせわしなく、仕事と向き合うクラシコムのスタッフたち。ゆっくり、じっくりと、お互いのこれまでを振り返って話す時間は……実はそれほど多くありません。
でも、あらためて話してみると、人となりがもっとわかったり、新鮮な発見が得られたりするもの。そこで、スタッフ同士でインタビュー(というより、おしゃべり?)してみる機会を持ってみることにしました。
今回は、クラシコムのお金まわりを管理する「財務経理グループ」の井出と、「テクノロジーグループ」で社員みんなが使う基幹システムの運用を担当している木村が登場。
▲左から:木村、井出
クラシコムにとって、まさに「縁の下の力持ち」を務めるふたり。そして、もともと「北欧、暮らしの道具店」のお客さまでもあったという共通点も。お店の外側からも、内側からもこの場所を見てみると、いったいどんな気づきがあったのでしょうか。
前編は主に木村が聞き役となって、井出に色々と質問してみました。
「北欧、暮らしの道具店」を裏側から見てみると……
木村:
井出さんのお仕事は、ほんとうは「経理」という一言でまとまらないくらい、実はいろいろあるんだろうなぁ、とは思うんです。
井出:
以前に「クラシコムのしごと」で紹介してもらったときに、「経理は会社のお金周りのことを担当していて、お母さんが家計簿をつくるように、会社の家計簿をつくるイメージ」とお話したんです。帳簿をつけることは経理にとって大きな仕事の一つですが、今は私自身では書いていなくて。
クラシコム宛に届いた請求書をもとに記帳するところは、社外のパートナーである会計事務所さんにお願いして、それを私を含めた社内のスタッフで確定させている形なんです。クラシコムに転職する前は、ぜんぶ自前で入力していたので、私としては働き方も大きく変わった感じはありますね。
今は、クラシコムが株式上場したのもあって、株主さまに向けた株主総会資料や有価証券報告書などの開示するための書類を作ったり、投資家の方々との面談の議事録を取ったりすることも。どれも裏方のお仕事ではありますけどね。
木村:
「北欧、暮らしの道具店」を一人のお客さまとして訪れていたときは、いったいどこに、どれくらいのお金を使っているのかなんて、私はあまり気にしていなかったんです。もちろんそれでいいのですが、でも経理を担当するとなると、みんな見えてきますよね。
井出:
そうですね。まさに「裏側」まで見えます。一つのコンテンツを作るために、これほどいろんなものを準備しているんだ、と。
木村:
明細を見て、金額に驚いたりしたこともありますか?
井出:
実は、それが全然なくて、私はそちらに驚いているくらいなんです。スタッフみなさんのコスト管理の徹底ぶりにびっくりしました。
クラシコムでは来期の予算をだいたい6月頃から取りまとめていくのですが、それまでの実績を振り返って期初に立てた予算と見比べてみても、大きく離れることがあまりないんです。「今年は、月々のお金はこれくらいで」と決めたなら、コストカットや取捨選択でコントロールしながら、徹底して守ろうとする姿勢が経理の側にも数字として見えてくるんです。
井出:
でも、「予算を超えて使ってはいけない」といった厳格な考えがあるわけではなく、「この案件はもう少し予算をかけてでも取り組むべき」となったならば、相談して引き上げることもしたりはします。
全体を見て予算を決めて、みんながそれを守って。スタッフの努力が積み重なって出来ている賜物として、「北欧、暮らしの道具店」の世界観があるんだなぁ、と。裏方から数字を見ながらも感じますね。
たまたま仲良くなった子のあとを、付いていった日のこと
木村:
井出さんが経理というお仕事に出会うまでのこと、聞いてみたいです。昔から算数とかも得意だったんですか?
井出:
小学校から高校までは理系科目のほうが好きでしたけれど、大学は「将来なりたいこと」もわからないままに経済学部に進みました。ただ、その大学が会計士や弁護士といった「士業」のための資格を取るバックアップを手厚くしているところで、講義が終わった夜の時間帯に、「大学内の予備校」みたいなコースがあったんです。
大学1年生の時にたまたま仲良くなった子が、そのコースを知って入学したタイプで、「私は税理士になりたいから簿記を勉強したいんだ」って言ったんです。私は特にやりたいこともなかったから、「じゃあ、私もやってみようかな」と軽い気持ちで受けてみたら、意外と面白くなってきて。
木村:
どんなところに面白みを感じましたか?
井出:
簿記の仕組みで「貸借対照表」というものがあります。ざっくり言うと、簿記ではお金の流れを記録するときには、必ず「お金がどこから来たか」と「どこへお金が行ったか」を一緒に記録するというルールなんです。だから、この2つは必ず金額が一致するのが原則。いろいろな記録があっても最後はぴったり合う、というところに気持ちよさがあったんですね。
簿記はそんな面白みもあったのですが、大学生活は「モダンジャズ研究会」というサークルに入ってからは、それ一色になりました(笑)。4歳からピアノを習っていたのもあり、先輩たちの演奏を見て、自分もジャズをやってみたくなったんです。今でも年に一回は忘年会と称してサークル仲間で集まっていて、ピアノも弾いています。
井出:
それで、いざ就職活動の時期を迎えても、当時は氷河期というくらい厳しくて、将来やりたい仕事も見えないままでした。そこで「そういえば、私は簿記に面白みを感じていたなぁ」と思い出して、また夜の講座を受け直すことにしたんです。その延長上に会計士の道もあったので資格を取り、卒業後は監査法人で働くことにしました。3年くらい勤めましたね。
「私、クラシコムっぽくないかも」と伝えてみたら
木村:
そこから、どうしてクラシコムに転職を?
井出:
監査法人で働きながら、会計士の資格試験も受けて…と過ごすなかで、働き方を考えるタイミングがあったんです。監査法人は男女比率は男性のほうがずっと多い業界で、自分自身が「この先も長く働いていけるか」を考えると、私には想像がしづらい環境だったんです。
それで、監査法人から独立した友達の仕事をお手伝いするようになり、一般的な事業会社の経理をする仕事も始まりました。そんな日々のなかで、好きで見ていたり、商品を買ったりもしていた「北欧、暮らしの道具店」で求人採用が出ているのをたまたま目にしました。
きっと読み物をつくったり、バイヤーだったりするんだろうな、と思ったら、「経理」の募集が出ていて。こんな機会はもうないかもしれないし、応募してみることにしたんです。
木村:
入社して最初の頃って、不思議な感じがしませんでしたか?
井出:
そうそう、画面越しに見ていたスタッフがふつうにいるので、緊張していましたね。
でも、面接のときに「私、クラシコムっぽくないかもしれないのですが、大丈夫ですか」と(代表の)青木さんに素直に尋ねてみたんです(笑)。
そうしたら、「全体として雰囲気が揃っているように見えるかもしれないけれど、みんな個性がそれぞれあって、価値観というか考え方がちょっと似ている人たちが集まっているだけなんです。だから、『クラシコムっぽさ』は気にしなくて大丈夫ですよ」みたいに言ってもらって。なので、安心して入れましたね。
いつもみんなが「変えてもいいんじゃない?」と考えている
木村:
入社してみて、どうでした?
井出:
思っていたよりずっとコミュニケーションが活発でした。あとは「本当に残業がないんだ!」とびっくりもして(笑)。
経理の「記帳」もそうですが、適度に外部の方へ仕事をお願いしていく考え方があります。あとは、常にみんなが「このやり方を続けられるか」を意識していることがわかりました。
ありがちな話として、「今までもこのやり方だったから、引き継ぎますね」と言われて、疑問に思っても「昔からこうだから」と説明ができないことって、少なからずあるものじゃないですか。クラシコムだと、それがないんですよね。
井出:
「じゃあ、やめてもいいんじゃない?」「違うやり方に変えてみましょう」みたいな循環がすごく早い。「変えるための話し合い」もよくあります。ただ、常に無駄がそぎ落とされていくだけ新しいことも多いので、キャッチアップするのは大変ですけどね。
あとは、「一人で決めなきゃいけないこと」がないですよね。抱え込まなくて済むというか。気になることがあったら、周囲はもちろん、別のチームのスタッフに相談して、話すことができます。自分の考えもまとまって、違う角度からの気づきをもらえたりして、どんどん話が前へ進んでいく感じがあります。
そういったことが、9時の始業から18時の終業までに、ぎゅーっと濃密に短縮されている感覚を、日々感じています。
協力し合えるから、この日々がある、と実感します
木村:
経理として「こういうところは今までと違うかも」みたいに感じることってありますか?
井出:
経理って、何かとみなさんへ「お願い」することが多い立場なんです。「この期限までに絶対に提出してください」とか。会社として必要ではあるのですが、みなさんの本業とは異なる事務作業ということもあって、お願いするのが心苦しいときも…。
木村:
ついつい、後回しにしたくなっちゃう気持ちも出そうですね。
井出:
そうですね。でも、クラシコムはそうではなくて、事務作業として取り組むだけでなくて、「どうしたら経理がやりやすいか」を一緒に考えようとしてくれるんです。「こういうふうに提出したらもっとラクになりますか?」と逆に聞いてくれたり。新しい取引先が増えるときも事前に相談してくれるから、経理としても心の準備もやり方も検討できるんです。
みんな、お客さまのことを常に考えているから、社内のことも、同じような感覚で見ている気がしますね。平たく言うと、とっても協力的。あぁ、こうやって協力し合うことによって残業がなくなっているのかぁ、と本当に日々実感します。
木村:
「経理」という役割から、井出さんがもっとやってみたいことって、ありますか?
井出:
「北欧、暮らしの道具店」は社内外のいろんな方が携わって、コンテンツを作っていますよね。たとえば、経理として、そのコンテンツは「誰が、何に、どれくらいの時間をかけて出来上がったのか」といった情報を集めて金額を集計したいとします。
そういう記録や集計を、制作する本人たちが本業の傍らでやるのはすごく大変です。どんな方法をとったら制作の効率を損なうことなく情報を共有していただけるか。試行錯誤をしながら最適解をさぐって、クラシコム全体として無理なく業務を回していける方法を考える。そういうサポートを、もっとしていければと思っています。
(つづく)
【写真】川村恵理
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