【やさしい養生】後編:夏バテ対策、冷え性、冷房との付き合い方……。今すぐ試せるアイデアを教わりました

編集スタッフ 野村

夏の厳しい暑さを前にすると、ぐったりと疲れてしまう気持ちが前面に出てしまい気分は曇りがち。でも、今年こそは、もう少し気持ちにゆとりをもって夏を過ごせたら嬉しいなと思います。

そこで、夏をもっと快適に過ごすための知恵やアイデアを正しく知るため、源保堂鍼灸院の副院長であり、国際中医薬膳師の瀬戸 佳子(せと よしこ)さんのもとを訪ねました。

前編では、瀬戸さんが東洋医学に興味をもったきっかけのお話と、自身が気をつけているという夏の食生活のことについて伺いました。後編では、夏を快適に過ごすためのお悩み相談に乗っていただきました。

前編を読む

 

Q:夏の水分補給、どんな飲み物がおすすめ?
A:屋内で過ごす人は、体をあたためるものを。

 

瀬戸さん:
「屋外にいる人と、屋内で過ごす人で、適した水分補給は変わってきます。

外で長時間いる方には、スポーツドリンクなどでの水分・塩分補給が効果的ですが、屋内で汗をかかずに過ごす人は塩分補給をあまり意識しなくても大丈夫です。普段の食事で摂取する塩分でおおむね足りています。

多くの人は、汗をかく量が少ないために熱中症になっています

人間は汗をかくことで、中にたまった熱を放散して体温を下げます。でも部屋が涼しいと汗をかかず、熱がこもりがちな体に。なので屋内にいる時も、いつでも汗をかけるような水分補給を意識する必要があるんです」

瀬戸さん:
「特に注意したいのは、冷たい飲み物の飲み過ぎでお腹を冷やさないことですね。内臓が冷えると、体が冷えたと認識し、体は熱を逃さないように汗腺を閉じます。すると汗をかけなくなって、熱がこもりやすい状態になり、熱中症につながってしまう。

頭痛がする、下半身は冷えているけれど上半身は暑いと感じるなどは、熱中症の初期症状とも言えるので、夏場にそう感じることが多い方は、まずは発汗できているかをチェックするのが大切です」

瀬戸さん:
「涼しい部屋での水分補給に迷った際は、白湯が一番おすすめです。胃腸が弱い方でも大丈夫なので、万人におすすめできます。

体に熱がこもっていると感じる場合は、薄めの緑茶もおすすめ。緑茶の苦味は、気を下に降ろす作用があると東洋医学では考えられています。

目や頭の熱を下に降ろすので、頭がぼーっとすると感じる時に、あたたかい緑茶を飲むと、スーッと頭が冷める効果が期待できます。濃いと胃が痛くなったり、カフェインで疲れてしまうこともあると思うので、薄めがいいですね。

胃が弱い方は玄米茶もいいですし、カフェインが気になるという方は麦茶もおすすめです」

瀬戸さん:
「頭痛がする、喉の渇きが強いと感じる時は、熱中症の始まりのサイン。そんな時にはトマトジュースも効果的です。

トマトには熱中症予防の作用があります。東洋医学では、赤い食べ物が夏の体調を整えてくれると考え、トマトはその代表。

毎日トマトを食べるのも効果的ですし、外出先であれば、コンビニなどで100パーセントのトマトジュースを買って飲むのも手軽でおすすめです」

 

Q:おすすめの夏バテ対策はありますか?
A:夏バテにも2種類あります。正しく対策を。

 

瀬戸さん:
「ぐったりと重だるいと感じる人と、ヘナヘナで力が湧かずだるいと感じる人の2種類に分けられます。

重だるさを感じる人は、体に熱や湿気が停滞しているので、汗をかくなどして体のめぐりをよくしましょう。そうすることで体全体に栄養が行き渡って、楽になることが多いです。

ヘナヘナで力が入らない人は、エネルギー不足の状態。外出は避け、まずはとにかく休むようにしてください。十分な食事と睡眠がしっかり取れているかをもう一度見直して、回復に努めるのが最優先です」

瀬戸さん:
おすすめの休息方法は昼寝です。特に夜に寝苦しさを感じる人ほど、効果的です。

東洋医学では、昼間の11時から1時の間は回復の時間と考えられていて、その時間帯は体を休めるべき時間です。

忙しいと休む時間をとるのも難しいと感じることもあると思うので、昼休みに5分だけ、ちょっと目を閉じて静かに過ごすだけでも体力回復に役立ちます。

ただし長く寝てしまうと夜の睡眠に影響してしまうので、昼寝は20分以内を心がけてください」

 

Q:冷房との上手な付き合い方が知りたいです。
A:お腹を冷やさないよう気をつけましょう。

 

瀬戸さん:
「冷房のきいた部屋にいる時に気をつけたいのは、お腹を冷やさないようにすることです。

もし冷風が直接あたる場所にいる人は、羽織りを活用したり、お腹に風があたらないようにひざ掛けなどをかけてください。冷え性の方は湯たんぽをお腹にあてておくのも効果的です。

暑さで睡眠が妨げられてしまうようであれば、寝室の冷房はつけたまま寝るのがおすすめです。睡眠不足になるだけで、熱中症のリスクも上がってしまいます。

快眠のため『頭寒足熱(頭は暑くなりやすいので冷やし、足元は冷えやすいので温める)』もよく言われますが、より大切なのは、やっぱりお腹を温めることなんです。

お腹が冷えているだけで眠りにくく感じてしまいがち。そんな時にはお腹に両手をあててあげるだけで、気持ちが落ち着き眠りやすくなると思います」

瀬戸さん:
「家族で、暑がりの人と寒がりの人がいると、エアコンの適温を探すのも難しいですよね。

基本は、暑がりな人に合わせて、寒がりな人が厚着をするという対策にはなるのですが、暑がりな人に、体の熱をとってくれる効果がある夏野菜を多めにとってもらうというケアも有効です。

たとえば、暑がりな家族にはトマトをいつもの倍量食べてもらう、ということだけでも体の循環がよくなり、熱っぽさが落ち着いてくることを期待できますよ」

 

Q:夏の冷え性対策はありますか?
A:散歩とお風呂を意識してみましょう。

 

瀬戸さん:
「夏場も、足が冷えやすく、むくみやすいと感じる方は多いと思います。

座りっぱなしだとそうした問題を抱えてしまいがち。こまめに足を動かすのが大切なので、定期的にお手洗いに立ったり、階段を使って歩くなど、体の循環をよくすることを意識してください。

夏の冷え性は、そのまま冬の冷え性にもつながります。東洋医学では『冬病夏治』と言って、冬の冷え性・気分の落ち込み・皮膚のかゆみなどは、夏の過ごし方に原因があると考えます。

夏に太陽にあまり当たらなかった人、体がずっと冷えていたという人は、冬も冷え性になりやすく、気分が落ち込みやすいです。

なので、朝夕のあまり暑くなりすぎない時間帯を狙って、太陽の下で散歩をするのがおすすめです。汗をかくことで、体の巡りもよくなり、冷え性対策につながります」

▲ミント系の入浴剤は清涼感を感じられるため、あたたかいお風呂が苦手な方にもおすすめです

瀬戸さん:
「冷え性対策のため、お風呂の入り方も少し工夫してみてください。

その日の冷えはその日のうちに解消するのがいいので、冷えが気になる方は、ぬるめの湯船に、胸より下の湯量で浸かるのがおすすめです。

お風呂の温度は、ご家庭の湯釜によって差があると思うので、自分が気持ちいいなと感じる温度で大丈夫です。熱めの湯船に胸より上まで浸かると、心臓に負担がかかってしまうので、温度はぬるめ、湯量は少なめがいいですね。

もし夏場はシャワーだけで済ませているという方は、体が冷えていないのであれば、無理をして湯船に入らなくてもOKです。

お風呂で大切にしたいことは、体をあたためて、発汗する手助けをすることなんです」

***

取材に行くまでは、夏の暑さや汗をかいてしまうことは、「怖いもの・嫌なこと」という意識ばかりが頭を覆っていました。

でも瀬戸さんの話を伺ったことで、正しく汗をかくことを、自分の無理のない範囲で実践することは、快適に過ごせる道に一歩近づけるのかもしれないなと感じています。

もしひとつでもこの夏に試せそうと感じられることがご紹介できていたら嬉しいです。ゆっくりと、この夏の暑さを乗りこなしていけますように。

(おわり)

【写真】川村恵理


もくじ

 

瀬戸佳子

国際中医薬膳師。東京・表参道「源保堂鍼灸院」副院長。併設の「薬戸金堂」で、漢方相談を行いながら東洋医学に基づいた食養生のアドバイス、レシピの提案を行う。著書に『季節の不調が必ずラク~になる本』、『1週間で胃腸が必ずよみがえる気血スープ』(ともに文化出版局)、『1週間でからだが変わる いちばんやさしい気血養生』(PHP研究所)など。

 


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