【はじめてのお直し】前編:手先の器用さは関係なし。野口光さんに教わる自由なお直し「ダーニング」

編集スタッフ 藤波

穴あき靴下や、ニットの虫食い。お気に入りの服に傷みを見つけるたび、自分でお直しできたらなと思っていました。

けれど同じ色の糸を持っていなかったり、調べてみるとテクニックが難しそうだったり。なかなか一歩を踏み出せなかったとき「ダーニング」というリペアの方法を知りました。

ダメージをなかったことにするのではなく、カラフルな糸を使って自由な模様を描くようすは、まるで洋服を生まれ変わらせるよう。

これができたら、きっとお気に入りの洋服を長く自分らしく大事にしていける……そんな希望を持って、テキスタイルデザイナーの野口光(のぐち ひかる)さんを訪ねました。

前編では「服のシミ」、後編では「穴あき靴下」へのダーニングのやり方を教えてもらいます。

 

お裁縫に自信がない人ほど、やってみてほしいです

▲野口さんの作例。カラフルな糸と布で、洋服に新しい命が吹き込まれたかのようです

野口さん:
「13年ほど前、イギリスでダーニングに出会いました。テキスタイルデザイナー仲間のセーターにほどこされた、カラフルな糸でモザイク模様のように刺したダーニングを見て驚いたんです。

鮮やかで自由なダーニングからは彼女の人となりや自分らしい世界観が感じられて、なんて素敵なんだろうと。同時に、繕うことは恥ずかしいと自分の中に無意識の刷り込みがあったことにも気がつきました。

こうしなければいけないという決まりがないのがダーニングの楽しいところ。手先が不器用で自信がないわ、という方にこそぜひやってみてもらいたいです」

 


汚れやすり減りも、おまかせあれ。
無心にちくちく「ゴマシオダーニング」


今回繕うのは、「漂白剤のシミがついたワイドパンツ」

生地の汚れやすり減りなど様々な傷みに使える「ゴマシオダーニング」でカモフラージュします。

 

材料と道具

・ダーニングマッシュルーム(直径約8cm)
・糸(お好きな刺し子糸)
・針(ダーニング針 or フランス刺繍針3番)
・ハサミ
・印つけ(チャコペンやチョークなど)

野口さん:
「ダーニングマッシュルームはご家庭にある電球やカプセルトイなど丸いフォルムのものでも代用できますが、初心者さんこそ専用の道具を使った方が失敗しづらいと思います。

糸は、仕上がりと耐久性の面から刺し子糸がおすすめ。色は繕う服や着る人に馴染むものを選ぶとよいでしょう。

針はダーニング専用のものか、簡単に手に入るフランス刺繍針であれば3番が刺しやすいです」

 

ダーニングのやり方

1. 準備

・繕うエリアの生地をダーニングマッシュルームにかぶせ、根元をゴムなどで結んで固定する
・チャコペンなどを使い、縫いたいエリアをマーキングしておく(今回は汚れの約1cm外側)
・糸は片腕を伸ばしたくらいの長さ(約50cm)にカットし、針に糸を通す

野口さん:
「洗濯をすると縮むので、生地はピンピンに引っ張らないように固定してください。

一回で使う糸の長さはあまり欲張らないことも、スムーズにダーニングしていくためのポイントです」

 

2. 縫う

縫うエリアの右下の角を目指し、3cm外側から針を入れる。

針を抜いて糸を引き、糸端は人差し指1本分ほど垂らしておく。(最後にまとめて糸始末するため、玉結びは不要)

2針目はゴマ1粒分(1〜2mm)戻ったところから右から左に向かって刺し、

さらに5mmほど先から針を出すと、ゴマ1粒分の縫い目ができる。

1針進んでゴマ1粒分戻る、を繰り返して1列ゴマシオしたら、ダーニングマッシュルームを180度回転させる。

1列目のラインのすぐ上で右から左に向かって1針すくい、同様に次の列を刺していく。

one point
強く糸を引きすぎず、ややゆとりを持って縫い進めるのがポイント

糸が短くなったら新しいものに交換し、縫いはじめと同様にゴマシオしていく。

one point
均等にまっすぐ縫う必要はなく、あえて粒の大きさを揃えずランダムに刺すと◎ シミを隠すのではなく、目立たせなくするくらいの気分で。最後にまとめて糸始末をするので、糸を替えたところは垂らしたままでOKです

▲縫い終わり、表面のようす

野口さん:
「形はきれいな丸や四角にしなくていいし、縫い目も揃ってなくて大丈夫。バラバラ、ぐちゃっとしているのがむしろかわいかったりするので、迷わずざっくりと縫い進めるのが一番いいと思います。

今回は、糸の色を替えるタイミングで縫う方向を変えてみました。あえて違う種類の糸を組み合わせて使ってもいいでしょう」

 

3. 糸始末

ゴムをほどき、生地をダーニングマッシュルームから外して裏返す。

糸端を1cmほど残してそのままカットするだけでもよいが、

針に糸を通し、縫い目に3〜4針ほどくぐらせ糸を引いてから切ると安心。心配な場合はさらに玉結びしてもよい。

 

4. 完成

野口さん:
「あえて生地を裏返してゴマシオをすることで裏の模様を表に出したり、戻って刺すときに糸を最後まで引かずにループ状に残すと、同じゴマシオでも違う表情を楽しめますよ」

知らず知らずのうちに持っていた、「お直し=美しく仕上げる=難しい」というイメージ。

清々しいほどにズンズン縫い進めていく野口さんの自由な手元を見ていたら、これなら私にもできるかも!と嬉しくなりました。

後編では穴のあいてしまった靴下へのダーニングを教わります。お楽しみに。

 

【写真】 ニシウラエイコ


もくじ

 

野口光

テキスタイルデザイナー。ニットブランド「hikaru noguchi」、社団法人日本ダーニング協会主宰。武蔵野美術大学を卒業後、イギリスの大学にてテキスタイルデザインを学ぶ。ダーニング教室やワークショップを開催し指導や発信を行う。最新刊は『はじめての靴下ダーニング』(日本ヴォーグ社)。Instagram : @hikaru_noguchi_design 、Webサイト :「hikaru noguchi darning」https://darning.net/ 


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