【連載】あの人の暮らしにある「北欧」のこと。no.04:ヴィンテージの器を愛でる

ライター 藤沢あかり

 

立古尚子さんの食器棚には、北欧の古いものがたくさん。

アラビア、イッタラ、ロールストランド。北欧のことを知るうちに、魅力的なデザインが多くあると知りました。

カップ&ソーサーやピッチャーのように、それひとつで雑貨みたいな存在感のもの。シナモンロールを乗せたくなる縁取りのプレート。花や植物などのボタニカル模様もあれば、モダンな幾何学模様もあります。

さらに古いうつわには、現行品にはないデザインがつぎつぎに見つかりました。そんな魅力を追いかけるうちに、古いうつわを探す楽しみに夢中になったのです。

 

スウェーデンの陶磁器メーカー「Gefle(ゲフレ)」も、そのひとつ。なかでも幾何学模様のシリーズは、一見モダンに見えるけれど主張しすぎず、ほかのうつわと仲良く食卓に並んでくれます。

手作業による転写模様は揺らぎがあり、おおらかで、どこか愛嬌のある、ほのぼのとした一面もあります。丸でも四角でもないユニークなかたちは、日本ではちょっと見つかりません。

料理がおっくうに感じる日も、お気に入りのデザインが気分を上げてくれました。お惣菜や残り物も、うつわひとつで見え方が変わります。

北欧のうつわは、手に取ると想像よりずっと軽く、取り扱いも気軽です。食洗機で洗える頼もしさは、子育て中の食卓を楽にしてくれました。

そうして毎日、繰り返し使ってみて気づいたのは、これこそが北欧の「日常のうつわ」だということ。だからこそ古くから受け継がれ、さまざまな食卓を巡り、遠い日本のわが家へやってきたのかもしれません。

 

「ケーキ買ってきたよ」の声に、子どもが取り出す縁取りのプレート。毎朝のオープンサンドに使うプレートや、サラダやパスタにちょうどいい深皿。お肉をどーんと焼いたときは、どっしりとしたブラウンのオーバル皿です。

いつの間にか、家族みんなの「このメニューには、これ」という定番が生まれました。お皿の模様やかたちが見せてくれるのは、どこかの誰かではない、この家だけの食卓です。

「いつか、娘が独立するとしたら、どれかを持っていくのかな」

15歳になったわが子を見ながら、そんな想像をする日も増えてきた立古さんです。

 

 

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立古 尚子(りゅうこ なおこ)

グラフィックデザイナー。ステーショナリーや雑貨、冊子など、紙媒体を中心としたデザインを手がけている。夫と娘との3人暮らし。
インスタグラム @nao_et_noa

 

Text : Akari Fujisawa
Photo: Ayumi Yamamoto

 

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