【冬のやさしい養生】前編:「冷え性」対策は、食事から。暮らしに取り入れやすい東洋医学の知恵を教わりました
編集スタッフ 野村
年明けとともに、気持ち新たに心身ともにシャッキリさせたい1月。だけど、同時に寒さも本格的になり、体調を崩しやすくなる時期です。
冬の冷えや体調不良に悩まされることも多い中、何かひとつでも頼れる知恵やアイデアがあると、大きな味方になってくれそうです。
そこで本特集では、昨年夏の「やさしい養生」特集でもお世話になった、表参道にある「源保堂鍼灸院」を再び訪れました。
国際中医薬膳師の瀬戸 佳子(せと よしこ)さんに冬の寒さと上手に付き合うためのアイデアについて教わりたいと思います。
冷え性対策、基本の「き」
まずは一番気になる冬の冷え性について、暮らしに取り入れられる対策があるかお伺いしました。
瀬戸さん:
「暖房をつけているのに、あたたかい服をたくさん着ているのに、なんで手足が冷えるんだろうと悩んでいる方が多いと思います。
東洋医学では、秋冬を『養陰』の季節と呼びます。『陰』を養う季節ですね。陰というのは、陽と一対のもので、イメージで言うと、陽=温もり、陰=潤いです。
体にとっては、温もりも必要だし、水や血液などの潤いも必要。陰と陽のどちらも大切な要素なんだ、とイメージしていただくといいですね」
瀬戸さん:
「冬に理想的なのは、発汗していない状態。汗腺を閉めて、温もりを外に漏らさないようにガードすることが大切です。
そうやって温もりをガードするためにも、肌に油分を足して保湿をすることで、体温を守れると理想なのですが、それを保つのが難しいですよね。
たとえば、寒いからと長風呂をして、冬でも汗をかいている人は案外多いんです。せっかく温まったつもりでも、発汗するとかえって温もりは漏れてしまいます。温かい飲み物をいれた魔法瓶の蓋が開いているような状態になってしまっているんですね。
蓋が開いていたら、中の温かい飲み物もすぐに冷めてしまいます。お風呂で温まる場合は、発汗しない程度がおすすめ。魔法瓶の中身だけを温めるつもりで、汗をかいて蓋を開けてしまわないようにするのが大切です」
冬には、生姜よりシナモンがおすすめです
瀬戸さん:
「体をあたためる飲み物で、たとえば生姜湯をイメージされる方も多いかと思うのですが、私たちは冬場の生姜をあまりおすすめしていません。生姜は夏の食材で、発汗をうながすものと考えるからです。
冬場の体をあたためるおすすめのものは、シナモン。
シナモンには、体の免疫を整える作用があると考えられているので、風邪の引き始めで悪寒がする、と言う時にはシナモン系のものをとっておくといいですね。
たとえばカフェで、ホットミルクにシナモントッピングをお願いするだけで、ちょっとした養生になると思いますよ」
瀬戸さん:
「あとは、チャイもおすすめですね。チャイに含まれているスパイス類はお腹を温めてくれるものが多いんです。
それに、牛乳や豆乳など体の内側に潤いが出せるものを一緒に摂取できるので、おすすめです」
瀬戸さん:
「体をあたためる飲み物として、『よもぎ茶』もとてもおすすめです。健康食品店やドラッグストアなどに、ティーバッグで売られていると思うので、ぜひ探して試してみてもらいたいです。
よもぎはお灸や漢方の原料にも使いますし、よもぎ蒸しなどもよく街中で見かけると思います。実は『ハーブの女王』と呼ばれているくらい価値の高いもの。それでいて日本でたくさんとれる薬草なので、わりと安価で手に入れやすい。
よもぎには温める作用のほかに、血液を補う作用もあるので、冷え性の方には特におすすめですよ」
貧血対策は、冷え性対策に
瀬戸さん:
「冷え性の原因で多いのは、『貧血』なんです。
指先や足先には、血液が温もりを運んでくれています。
ということは、血液の量が少ないと、体の中でより大事な部位に血液が優先されて、指先や足先まで血液が循環する余力がなくなるんです。
なので、温めても手足が冷えます、という方は貧血のことが多いですね」
瀬戸さん:
「貧血がなぜ起こるのかというと、大きく分けると3つあります。
①供給不足(鉄分や動物性タンパク質の摂取が足りていない)
②消化機能の低下(胃腸が弱く、栄養がうまく摂取できない)
③血液の消耗量が多い
現代の生活で、③を避けることはとても難しいと思います。
何に血液を使っているかというと、頭脳労働や目の使用、睡眠不足、それから心的ストレス。これらは血液をすごく減らしますし、こうした負荷がない仕事なんてほぼないはず」
瀬戸さん:
「そうすると、血液の供給量を増やしていかないといけません。冷え性のほか、肌の乾燥や、冬の気分の落ち込みなども、基本的には貧血が関わっていると思っていただいていいかもしれません。
先ほど話した『陰』には、血液も含まれます。血液が潤い成分としてしっかり充実していると、体の中に温もりをキープしてくれる物質が満ちている状態と言えるんです。
なので、できるだけ血液を増やしてあげると、温もりも栄養も体のすみずみまで運ばれるので、冷えにくくなったり、肌荒れしにくくなったりすることが期待できます」
旬の食材で、「冷え」予防
貧血の自覚はありませんでしたが、手先や足先はよく冷えます……。実は私自身も「隠れ貧血」だったのかもしれません。ぜひ貧血を補う養生を教えてください。
瀬戸さん:
「貧血の予防には、動物性タンパク質をしっかり摂ることがとても大切です。肉や魚でも赤身の部分がおすすめ。もちろんレバーもとても良いですが、苦手な方は、イカ、タコ、ホタテ、牡蠣なども良いですね。
特に、冬の時期におすすめしたいのは、『腎(じん)』が補える食材です。
『腎』とは、成長・発育・生殖など生命力の元になる大事な臓器。そこを補ってあげることで元気に過ごしやすいんですよ。腎を補うことは、血液を補うことにもつながります」
瀬戸さん:
「身近に食べやすい食材だと、豚肉がおすすめです。動物性タンパク質をとることで、血液も増えていきます。植物性のものだと、山芋も腎を補う食材です。
自分は虚弱体質だな、とか、疲労感が増すと体の芯からクタクタになって疲れちゃうと感じる人は、腎を補う食材を積極的に食べることで元気になると思います。
腎はもともと、加齢によってどんどん減るものと考えられていました。でも最近は、若くても疲れている方が多いなと感じます。
たとえば30〜40代くらいの方は、腎が不足しないはずの世代なんです。もし30代の方で、疲れやすいなと感じる方は、冬の間に豚肉と山芋を毎日食べてもいいですね」
瀬戸さん:
「おせちって、実は腎を養う食材がたくさん入っていたんです。たとえば黒豆や田作り、栗きんとんの栗やエビなど。
冬にもし、体のケアにつながるものを気軽に食べたいなというときは、甘栗や、クルミが入っているナッツ類をおやつに食べれば、腎を補えて元気になりやすいと思います。
基本的には、やっぱり旬のものをよく食べるのが一番の養生です。冬野菜を食べてもらったり、冬においしくなる魚介類を食べてもらったりすると、自然と冬の養生になりますよ」
冷えを強く感じる人には、こんな養生も
瀬戸さん:
「冷え性の対策として、温かい朝食を摂るのもいいですね。献立は、ご飯と味噌汁がベストです。
冷えを強く感じる方は、酒粕入りの味噌汁や、長ネギの味噌汁がおすすめ。どうしても朝は忙しいという人は、インスタントの味噌汁でも大丈夫ですよ。
特に長ネギは、風邪をひきたくないという方にもおすすめです。
長ネギの白い部分は、『葱白(そうはく)』といって漢方薬でも使う部分で、風邪予防にいい食材なんです。ちょっと悪寒がして風邪をひきそう、とか、もう風邪をひいてしまったと感じたら、長ネギをたくさん食べてみてください。
味噌汁に入れたり、お鍋にしたり、炒め物にしたりと、できるだけ加熱して食べるのがいいですよ」
瀬戸さん:
「保温効果のある入浴剤を使うのもおすすめです。発汗作用があるものではなく、体の芯から温めたり、保温効果が続く入浴剤がいいですね。
市販の『薬湯』と表記のあるものや、ゆずも温める作用があると考えるので『ゆず湯』など、温まりがいいものはたくさんあるので探してみるのもいいと思います」
***
私自身、毎年、末端冷え性に悩んでいたのですが、外からあたためることばかりに気を取られ、すっかり内側のぬくもりのことをおざなりにしていたように感じます。
食を通した暮らし方を見つめ直して、冬の冷えとも上手に付き合っていきたいです。
続く後編では、気になる冬のコリや年末年始の疲れの癒し方など、引き続き瀬戸さんにお悩み相談に乗っていただきます。
(つづく)
【写真】川村恵理
もくじ
瀬戸佳子
国際中医薬膳師。東京・表参道「源保堂鍼灸院」で、漢方相談を行いながら東洋医学に基づいた食養生のアドバイス、レシピの提案を行う。著書に『季節の不調が必ずラク~になる本』、『1週間で胃腸が必ずよみがえる気血スープ』(ともに文化出版局)、『1週間でからだが変わる いちばんやさしい気血養生』(PHP研究所)など。
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