【きっかけシネマ Vol.04】だれかを好きになるのに理屈はある?「アニー・ホール」
文 ライター新田まるむ
『アニー・ホール』(1977年)
【監督】
ウディ・アレン
【キャスト】
ウディ・アレン
ダイアン・キートン
【ストーリー】
ニューヨークを舞台に、都会に生きるオトナの恋愛事情を、ウディ・アレン独特の皮肉を込めたユーモアと共に綴る、いわば“ラブコメディ”の元祖的作品。うだつの上がらないスタンダップコメディアン、アルビーは、歌手志望の美しいアニーと知り合い同棲生活を始めるが、次第に歯車が合わなくなっていき…。衣装提供ラルフローレンのインテリ風着こなし、加えてダイアン・キートン独自のマニッシュなアレンジは後に“アニー・ホール・ルック”と呼ばれ伝説的。監督ウディ・アレンは1977年度アカデミー賞、作品、脚本、監督、主演女優賞を受賞するも式には出席せず、いつもの店でクラリネットを吹いていたというのも、アレンらしい逸話である。
愛は理屈を超えて。私たちが恋する理由?
「好きな人のタイプは?」よく聞く質問ですね。
アタマの中ではあれこれと理想を描いていながら、いざ誰かを好きになったら理想と全然違う相手、というのはよくあることだったりしませんか?
この映画の二人、アニーとアルビーもそんな恋人同士。ひょんな出会いから、全然タイプの違う二人は急激に惹かれ合っていきます。
ウディ・アレン演じるアルビーは、へ理屈ばかりこねているインテリ男。映画はたとえ2分でも途中からは観ない、パーティーより4時間のドキュメント映画鑑賞をえらびます。
アニーはといえば明るく社交的な性格、アルビーの知性に影響を受けつつも、次第に新しい環境を求めて、二人の関係にはズレが見え始めます。
この映画は、そんな多くの恋人たちが経験する恋愛の苦楽を、ウディ・アレンの皮肉とユーモアの入り混じった絶妙の語りで見せてくれます。
そしてウディ・アレンといえばニューヨークです。
彼のフィルムを通して見るニューヨークの街は、知的でとってもロマンチック。
さらにアニー・ホールを演じるダイアン・キートンのファッションも話題となった映画ですね。
メンズの服を大胆に着こなすことで逆に女性らしさが引き立ってとっても魅力的なんです。
彼女が太めのチノパンをシンプルにはきこなしているのがとってもかっこ良くて、私もさっそくチノパンを買ってきて、アニー・ホールになりきってはいていました。
というわけでこの映画は、そんなにおしゃれさんでもない私でさえファッションの影響を受けた、きっかけシネマともなりました。
アイロニックなニューヨークやファッションなど、70年代後半のモードに数々の影響を与えた映画でありながら、やっぱりこの映画は「アニー・ホール」という一人の女性を巡る恋愛物語です。
レストランでは注文が多く、カバンの中はぐちゃぐちゃ。
夜中にゴキブリが出たと呼び出したり、映画の時間にも遅れてくるアニー。
神経症的なへ理屈男アルビーからしたら、ダメ出しだらけの彼女なのです。
それでも、そんな理屈を超えて、人は人を好きになってしまう。
何度失敗しても、また懲りずに恋をしてしまう。
さんざん理屈をこねた後、「でもそれでいいじゃないか」と言っているかのようなウディ・アレンの皮肉を込めた慰めに、観るたび思わず微笑んでしまうのです。
そしてちょっとホっとする。
「アニー・ホール」はそんなほろ苦い、恋の物語です。
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