【きっかけの一冊】読むとなぜだか救われる。心に刻まれた、この一節。

編集スタッフ 二本柳

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考え方 × Book

仕事、暮らし、子育て。あらゆる場面で「きっかけ」を作ってくれた一冊を紹介する本特集。

連載第4回に登場するのは、その後の考え方にも影響を与え、ずっと忘れられない本の中の一節に出合ったスタッフ3名です。たった一冊の、たった数ページに不思議と心がほぐれていき、記憶に刻まれつづけている本をご紹介したいと思います。

 

01. スタッフ上山

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この一節:

「トットちゃんの頭に、大きくて暖かい手を置くと、『じゃ、これで、君は、この学校の生徒だよ』
そういった。……そのとき、トットちゃんは、なんだか、生まれて初めて、本当に好きな人に逢ったような気がした」

-黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん』(講談社文庫)-p.33

1番最初にこの「窓際のトットちゃん」を読んだのは小学校高学年のときでした。そのときは、1つ1つのエピソードが面白く、奇想天外な小学校の生活が楽しそうだな〜くらいにしか思っていなかったのです。

でもその後、40歳を超えて(ここ最近)読み返してみたら、この学校の校長先生と生徒であったトットちゃんとの関係性がとてつもなく素敵なことに気がつきました。幼少時にこんな粋な大人と出会い、人間関係を作り上げる機会があったトットちゃんが羨ましく思えるくらいに。

トットちゃんがはじめてユニークな教育方針をもつトモエ学園に行き、校長先生と対面したときの一節(上記)が印象に強く残っています。ちょっと風変わりな少女で、小学校を退学になったトットちゃんが、家族以外の誰かに認められるというはじめての経験。そのときに感じた素直な気持ちがあらわれた文です。

この校長先生の教えには、「否定しないこと、受け入れること」が、ずっと一貫してあるような気がします。

世間では、受け入れがたいこと、否定的に思われることでも、ここには必要であり、存在する意味があること。それを普段の学校生活の中で、自然と、そして、楽しく子供たちに伝えようとしているんですよね。

目の前にあることや人間関係について、駄目だとか、嫌だとか、異質であるとか、自分の中で決めつけてしまうことはとても簡単。

けれど、否定せずにじっと向き合い、受け入れていくことによって、実はとても大切な出来事、人間関係、新しい発想に出会えるのかもしれません。そして、必ずそこにはちょっとしたウィットやユーモアも必要であるということを教わったように思います。

 

02. スタッフ渡邉

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この一節:

「光を見るためには目があり、音を聞くためには耳があるのとおなじに、人間には時間を感じとるために心というものがある。そして、もしその心が時間を感じとらないようなときには、その時間はないもおなじだ。」
-ミヒャエル・エンデ『モモ』(岩波少年文庫)-p.236

私が『モモ』を手に取ったのは、社会人になって数年経った頃です。

それなりに仕事もして自分で生活できるようになってはきたけれど、一方で仕事に追われてばかりの平日と、その間にたまった家事や疲れを取るためだけの週末…。何のために頑張っているのかな、このままでいいのかなというモヤモヤがだんだんと大きくなってきたときでした。

この本に書かれているのは、街の人々を言葉巧みにだまして時間を奪っていく灰色の男たち(時間どろぼう)と、その時間を取り戻すために立ち上がったモモという一人の少女のお話です。

時間を奪われた人々が、効率を優先して必死になるのと引き換えに、仕事も暮らしも楽しむ余裕がなくなって、どんどん心が荒れて退屈な人生になっていく。ファンタジーのはずなのに、その様子はまるで自分を見ているようで、すごくドキッとしました。

明日のため、将来のためにと仕事を頑張ってきて、もちろんそれも大事だけれど、今をしっかり生きることの方が、自分にとっては大切なんじゃないかなと思ったんです。これからは、目には見えない時間を自分の心で感じて、今の自分が大切にしたいと思うことや暮らし方を大切にしていきたいなと。

今でも自分に余裕がなくなっていると感じるときに読み返しては、時間の大切さ、最初に読んだときのことを思い出します。「この本に出会えてよかったな」、「またここから一歩ずつ」と気持ちを新たにさせてくれる一冊です。

 

03. スタッフ桑原

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この一節:

「ぼくたちが毎日を生きている同じ瞬間、もうひとつの時間が、確実に、ゆったりと流れている。日々の暮らしの中で、心の片隅にそのことを意識できるかどうか、それは天と地の差ほど大きい。」
-星野道夫『旅する木』(文春文庫)-p.123

いつか読んでみたいと思っていた本ですが、実際に読んだのは今年の5月。アラスカに行くことが決まり、ならばあの本を読まなくては!と本屋さんに向かいました。

アラスカの壮大な自然の美しさと厳しさのこと、友人との出会いと別れのこと、まっすぐに自分の選んだ道を行く人の強さとやさしさのこと。まるで話しかけてもらっているみたいな、やさしい言葉でひとつひとつ書かれています。

自分の気持ちがいっぱいいっぱいになっている時こそ、この本のことを思い出します。

こんなに自分は忙しくしていても、世界のどこかでは、のんびりと夜空を見ている人もいるんだろうなあ…..。そういえば最近星を見ていないなあ….と。

星野さんの言うように、私たちが暮らしている一方で、はるか遠い場所に流れているもうひとつの時間が存在するんですよね。それを心の片隅に意識する。すると、カチカチに固まってしまった頭が、じわじわ~と、ほぐされていくような気持ちになります。

毎回読む度にあたらしく気づくことがあるので、これからもくり返し読もうと思っています。

(おわり)

 

本日ご紹介した本の情報。

 


もくじ



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