【団地ライフ】後編:団地をDIYでリフォーム!知っておきたい団地暮らしのリアルと楽しさ
団地に住んでみてこそわかる、メリットやデメリット。築50年の団地をセルフリノベーションして住むMakeesさんにお話を伺いました。そこには団地ならではの構造や特性からくる生の声が。団地に住んでみたいな、と考えている方やDIYに興味がある方にぜひ読んでいただきたいです。団地がもっと好きになるきっかけにもなったら嬉しいです。
編集スタッフ 長谷川
築50年の団地に一家3人で暮らすMakees(マーキーズ)さんは、「改装OK」の条件に惹かれて住み始め、自宅をDIYでセルフリノベーション。インテリアを考えて手を動かすこともあれば、住みにくさを改善するために頭をひねったこともあるそう。
前編ではMakeesさんのご自宅を訪問しましたが、後編では「団地に住み始めたいな、住んでもいいかな」と思う方のために、住む前に知っておくべきポイントや団地ならではの魅力をお聞きしました。
すべての団地には当てはまりませんが、頭に入れておくと住み始めてから「こんなはずでは!」と悩むことも減るはずです。
住む前に覚悟しておくべき「団地の3つの弱み」
1.築年数の古さゆえの「水回り」
Makeesさんからまず挙がったのが水回りの問題。たとえば、室内に洗濯機を置くスペースはあるものの、排水は浴室にする(そのために浴室のドア横に穴が開いている!)というケースも。
お風呂の追い焚き機能などは修繕済みのこともありますが、対応は団地によってまちまち。Makeesさんも先日、建物が古くなったことが原因の水漏れ事故に遭ってしまったのだとか。
2.エレベーターがない、結露しやすいといった「構造」
Makeesさんがお住まいの団地は5階建てですが、エレベーターはありません。「うちはどうやらスキマ風もあるのですが窓を変えられないんです。しのぐためにゴムを貼っています」とMakeesさん。
他にもコンクリート造りゆえに結露に悩まされることもあるそう。Makeesさんは結露対策として、北側に位置する壁に漆喰を塗っていました。「多少は改善しました」とのことですが、注意しておきたい箇所といえるでしょう。
3.話し声が聞こえるなどの「プライバシー」
団地に限ったことではありませんが、部屋が隣り合うことで生活音はおきます。団地内に公園が整備されていると、日中は子どもたちの遊ぶ声が聞こえてくることも。また、建物が同じ高さで並んでいるため、階段やベランダから向かいの部屋が見えやすいのも、気になる方には気になるところ。
でも、手のかかる子ほど可愛く思えるもので。
ただ、今回挙げた3つの弱点について、Makeesさんは捉え方で魅力にもなると教えてくれました。
Makeesさん:
「団地の不便さには『改善できること』と『改善できないこと』があるんです。うちでいえば、結露やスキマ風を防ぐのは改善できることで、エレベーターは改善できないこと。僕らは『改善できること』にDIYで手をかけているんですね。
DIYでつくったものや、団地の『改善できないこと』も、愛嬌だと思って過ごすうちに愛おしくなってきて、愛着になるんですよ。なんでもそつなくできる子より、ちょっと手のかかる子の方が可愛く思えてきてしまうのに似ています(笑)」
部屋のインテリアは「改善できること」のひとつ。壁にはCDやヘッドフォンと一緒に「この団地と同い年くらい」というギターが掛けられていました。悪かった部分をコツコツとリペアして、音楽活動をする時にも使っているそう。
祖母から譲り受けたオーディオを直したように、「古いものに手をかけ、活かしていくのが好き」というMakeesさんらしいインテリアです。
赤ちゃんも、大先輩も。団地で「一緒に住んでいる」感じ。
弱点として挙がったプライバシーの問題も、暮らしを共にするコミュニティとして見ると、光の当たり方が変わります。
Makeesさん:
「階段ですれちがうときにもコミュニケーションが起きやすいです。住まわれている年齢層が幅広いのもあってか、娘を抱いていると『あら、かわいい!』なんて言ってくれて。僕の住む団地では“差し入れ文化”も残っていました。妻の田舎から送ってきた特産品をおすそ分けしたら、お返しをいただいたり。
共同生活ではないけれど、『一緒に住んでいる』という感じがします。たとえば僕が仕事中に、妻や子どもに大変なことがあったときに助けてもらえるかもしれないし、逆もしかりですよね。そういう助け合いが今後もできたらいいなと思っています」
暮らしに求める心地よさは人それぞれですが、こういった関わりあいがマイナスに働かないのであれば、良い選択肢にもなり得るということでしょう。
「住む環境の良さ」は団地ならではの強み
一方で、団地ならではの強みもあります。多くの団地は広い敷地にゆとりをもって建てられており、隣の棟との距離があります。だからこそ窓からの眺めがよかったり、日当たりが十分だったりと、 環境の良さは新築物件に勝ることも。
Makeesさんも「風が抜けるような作りになっていて気持ちいいんです。もし今になって団地を建てるなら、棟と棟の間にもうひとつ建物が入ってもおかしくない。こんなに贅沢な敷地の使い方はしないですよね」と気に入っているポイントだそう。
また、敷地内の緑化が進められていたり、木々や花々が植えられたりしている団地では、目と肌で四季を体感しやすいのも嬉しいところです。
DIYを始めるなら「ふたりでやる」のも面白い
▲食卓も手作り。ウッドデッキ用の板をホームセンターでカットしてもらい、IKEAで買った脚を付けています。サイズがぴったりのものを作れるのがDIYのいいところ。
この団地に暮らすまでMakeesさんにはDIYの経験はなかったと言います。部屋を改装する人のブログや雑誌などを見ていて「僕もできるのではないか」と思ったのがきっかけだったと振り返ります。
Makeesさん:
「最初は妻も腰が重かったんですが、洗濯機を置くドアを一緒に塗りなおしたら、結構ハマってくれて。妻もふたりで家を作っていくのが楽しかったみたいです。
DIYでセルフリノベーションをするなら、僕はひとりよりふたりの方が面白いと思っているんですよ。やっぱり自分にない発想や視点が出てきますから。
妻の意見を通すことが多いんですけど、機能的な部分にこだわる妻とぶつかって、ケンカをすることも(笑)。そういうケンカの思い出も込みで、ふたりでつくっていくと達成感が倍になっていきましたね」
賃貸物件×DIYならディアウォールが使える!
Makeesさんの自宅は改装OKの物件でしたが、通常の賃貸と同じく、釘打ちやペイントができない団地でのDIYは難しいのでしょうか。すると、「賃貸には賃貸のやり方がある」と紹介してくれたのが、ディアウォールという便利グッズ。
▲Makeesさんがプチリノベ・
ディアウォールは建築材料として一般的な木材「2x4(ツーバイフォー)材」の上下にはめ込むことで、壁面や鴨居に立てられるようになるグッズ。「木材版のつっぱり棒」のように使え、好きな場所に新しい柱をつくるイメージです。
この柱であれば、釘打ちをしたりペイントをしたりと、気兼ねなくDIYに使えますね。ディアウォールはホームセンターやインターネット通販で手に入ります。
Makeesさんのお部屋から、団地ライフをのぞいてみる特集を2日間にわたってお届けしました。
「部屋は唯一といっていいくらい、『自分の好きにできる空間』なんですよね」
DIYで愛着のある部屋をつくるMakeesさんらしい言葉だなと感じます。暮らしのかたちはさまざまあるように、団地の楽しみ方もさまざま。それから、団地でなくても「自分で手をかけて、好きでいられる住空間を作るためのアイデア」としてもヒントをたくさんもらえました。
これまで「団地」に抱いていたイメージを塗りかえたり、家の不便さを解消してみたりするきっかけになれば嬉しく思います。
(おわり)
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