【フィットする暮らし】第4話:思い込みで、大胆に動き出す。その力が暮らしを変える。(建築家・手塚夫妻)

編集スタッフ 二本柳

fit_tezuka_0720写真 鍵岡龍門

自分らしく心地いい暮らしをつくっておられる方を取材し、お客さまにお届けするシリーズ「フィットする暮らしのつくり方」。Vol.10は、建築家の手塚貴晴(たかはる)さん、由比(ゆい)さんにお話を伺っています。

建築家として、そこに住む人がいかに自分らしく豊かな暮らしを送れるか、ということを常に考えるお二人。

ご自身の暮らしはというと、家作りにおいても、子育てにおいても、他人の価値観や常識に左右されない自分たちの納得感にもとづいて作られていました。

 


第4話
自分のモノサシの持ち方


 
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これまで1話から3話まで手塚さん夫妻の話を聞きながら、「自分だけのモノサシ」を持って暮らすことが、いかに精神的な豊かさをもたらしてくれるかを実感しました。

でもその一方で、自分自身を信じつづけることほど難しいことはないな…という思いも。

夫婦の二人三脚で、これまでにユニークかつクリエイティブな建築物を残してきたお二人。その大胆な発想を信じる力はどのようにして生まれたのでしょうか?

 

思い込みで、大胆に動き出す。

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由比さん:
「たとえば私たちが住宅設計をするときは、『この人はこう暮らせるともっと人生が楽しくなるんじゃないか?』ということから入るんですね。

その仮説を、依頼主も、そして何よりわたしたち自身も、一緒になって思い込むんです」

貴晴さん:
「ゴールには何か正解があるわけではなくて、どんな依頼主でも自分の中に『大切にしたいこと』というのを持っています。それは自分のオリジナルな部分、自分だけのもの。

あとは本人たちがその気になれるかどうかです。

何か行動に移すとき、思い込みっていうのは結構大事でね」

 

「こうなりたい」という思いがあれば。

 
お二人の代表作のうちに、ドミノハウスという家があります。ある家族に「別荘をつくってください」と頼まれて河口湖につくった高床式の家だそうです。

その依頼主は、その後まもなくして都内の家を売り払ってしまった。

田んぼのまん中に佇む河口湖の家が気に入って、そこで畑などを耕しながらほとんど農家のような暮らしをしているのだと貴晴さんたちは嬉しそうに写真を見せてくれました。

「こうなりたい」と信じて動き出す力。それが、こんなにも人の暮らしを変えることがある。

もしかしたらお二人が言うように、「思い込む」勇気さえあれば、人生はどうにでもなるのかもしれないと信じたくなってきます。

fit_tezuka_0733手塚さん宅は『となりのトトロ』に出てきそうな細い通りをわたって玄関に入ります。

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fit_tezuka_0702歴史小説から図鑑まで、あらゆるジャンルの本が山積みに。

ところで手塚さん宅のフローリングは、実は一番の “悩みの種” だったそうなんです。

なんでもベイマツの無垢材を使用したフローリングは、半年もしないうちに3mm、5mmと隙間が空きはじめたのは序の口、ベタベタのヤニがあちこちに出始め、ワックスを塗ると次は古雑巾のような匂いに悩まされたのだとか。

そもそもそれをフローリングに選んだのは、ある建築家の作品で見た、お寺のような幅広の材を床に敷き詰めた姿に貴晴さんが惚れたから。あらかじめ建設会社には警告されたものの「自宅だから」ということもあり断行した結果、そうして大変な思いをしたと言います。

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わたしは、これも「思い込み」が大胆な行動を支えたひとつの例ではないかと思っています。

たしかに結果的には手塚さん宅のフローリングは一筋縄ではいかない “問題児” となりました。しかしお二人はそれを張り替えるつもりはさらさら無い様子。

それは、手のかかる子供のようなフローリングと正面衝突で向き合ってきた日々そのものが、いまや手塚さん家族にとっては思い入れとなっているから。このフローリングは、何事にも変えがたい味のあるものになったからです。

行動に移した結果が失敗か、成功か。それはどちらでも良いのかもしれません。

そこに強い「思い込み」があれば、失敗の過程すら暮らしの糧となる。自分にフィットした心地よい暮らしとはそういうことを言うのだな…と思います。

それでは最後に、手塚さんたちへバトンタッチして本特集をおわりにします。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

 

お二人にとって、「フィットする暮らし」とはどんなものですか?

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自転車にはかつて革サドルというものがあった。牛皮でできている訳であるが、これが硬い。ところが不思議なことに使ううちに、筋肉の方が馴染んでくるのかあるいは革の方が馴染んでくるのか、だんだん心地よくなって他のサドルなど使ってやるかという思い入れが生じてくるのである。

暮らしとはそういうものであって、一年二年十年と齢を重ねるうちに少しずつ積み上げていくものなのだと思う。

よって家というのは始めから完全無欠である必要はなく、周りの環境とともに完成されていく。

そもそも人というのは無数の微生物の共生叢なのであって、自然の木々や土と共に生き、風を呼吸する大きな存在の一部なのである。

色々と不合理なのは当たり前のこと。子供達の手足の脂(あぶら)が染み込み黒ずんできた頃、家は一人前になるのである。

そういう包容力のある優しい家に私は巣食いたい。

手塚貴晴、由比

(おわり)


もくじ


 
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