【BRAND NOTE・群言堂編】第2話:20~30代の彼女たちが群言堂に「転職」して見つけたもの。
群言堂(ぐんげんどう)には働き方を模索するなかでここにたどり着いたという何人もの女性スタッフがいます。今回は、群言堂「MeDu(めづ)」の広報を、「根々」で生産管理を、そして「Gungendo Laboratory」でデザイナーを担当する3名の女性にインタビュー。転職をして群言堂で働き始めた20〜30代の女性たちにお話を伺いました。彼女たちはこの場所で、どのような変化を感じ、何を見つけてきたのでしょうか。誰にでもある、仕事と暮らしの間にあるモヤモヤ。今回のインタビューでは、女性の働き方の面でも、共感できる部分がたくさんありました。
編集スタッフ 長谷川
写真 平本泰淳
全3話でBRAND NOTE「群言堂」編をお届けしています。
島根県大田市大森町。人口は400人ほどのこの町から、アパレルブランド「群言堂」などを全国へ展開する「石見銀山生活文化研究所」を、私たちクラシコムスタッフ4名が訪ねました。
つくる洋服や商品はもちろん、仕事や人生観にまで影響を与えているのは、石見銀山生活文化研究所の所長である松場登美さんが考え、実践する「根のある暮らし」。
みなさんの生活を体験させていただき、その考えに触れる中から「私らしく、豊かに暮らすためのヒント」を探っています。
(この記事は、クライアント企業さまのご依頼で製作する「BRAND NOTE」という記事広告コンテンツです)
生き方に迷っていた「娘世代」が、この会社に辿り着くまで。
連載第2話では、群言堂の「根のある暮らし」から「仕事」の面にスポットを当てていきます。
群言堂は現在、大きく4つのブランドから成り立ちます。ファッションアイテムを中心とした「登美」「根々」「Gungendo Laboratory」、スキンケア用品と発酵食品を扱う「MeDu(めづ)」です。
本社のオフィスで働く方々は、地元や近隣の出身者だけでなく、東京や関西などから移り住んできた若い世代も数多くいます。彼らは現状の仕事や人生に迷いを覚えながら、さまざまな縁で大森町へ降り立ち、自らの居場所を見つけていったそうです。
今回は転職をして群言堂で働き始めた20〜30代の女性たちにお話を伺ってみました。松場登美さんからすれば彼女たちは「娘」のような世代ともいえます。
お聞きしたのは、広報、生産管理、デザイナーとして働く3人の女性。彼女たちはこの場所で、どのような変化を感じ、何を見つけてきたのでしょうか。
石見銀山生活文化研究所に来て
変わったことって何ですか?
久保田綾香さん(MeDu/広報)
東京の広告会社から転職。
「暮らしながら働く」生活へ。
群言堂が新しく展開を始めたブランド「MeDu(めづ)」。石見銀山に咲く梅の花から発見された「梅花酵母」を活用した、スキンケア用品や発酵食品を展開しています。
広報を担当する久保田綾香さんの前職は、東京の広告会社での営業職。大学卒業後に入社して4年たち、仕事でのモヤモヤ期に突入したところから始まります。
久保田綾香さん:
「いつも時間に追われていました。線路をダッシュしているのに、その先の線路が切れていて、私はどこかで落ちてしまう……というイメージを夢で見るくらい。会社を変えるのではなく、環境をガラッと変えないとダメだという思いがありました。
そんな時に、スマートフォンであるサイトを見ていたら、群言堂での販売スタッフの求人に出会ったんです。それまで群言堂は全く知らなかったし、自分が販売スタッフに向いているとも思えませんでした。でも、そのサイトで先輩社員の言葉を読むうちに『私は生き方を模索していたんだ』と知りました」
久保田綾香さんは面接を受け、群言堂の店舗スタッフとして働き始めます。店内の掃除や服のたたみ方などを一つずつ習いながら「自分に無駄な動きがいかに多かったか」を感じ取ったといいます。
「働きながら暮らす」生活から、毎日の発見が仕事に生かされる「暮らしながら働く」生活に。8時45分に全社員のラジオ体操で仕事が始まり、星空を眺めながら歩いて帰宅する日々に「満員電車には戻れませんね」と久保田さんは控えめに笑います。
久保田綾香さん:
「群言堂では、暮らしも仕事も自分事にしていかないと、誰も『進めろ』とは言ってくれません。仕事のルーティンもなくて、自分で期限とやることを決めていきます。今は広報という立場ですが、マーケティングや営業も兼ねていますね。
以前と大きく変わったのは『会社の役に立ちたい』という気持ちが芽生えたこと。それまでもお客さまのために仕事をしていたけれど、会社に愛着があるわけではなかった。でも群言堂に入った段階で『群言堂のために何ができるか』を新米スタッフながら考えていたんです。まだ何も任されていないのに(笑)。
それはきっと群言堂なら、会長(松場大吉さん)や所長(松場登美さん)が見つめるビジョンを一緒に想像して、自分が何の役に立てるのかを考えられるからでしょうね」
「大森町で一生暮らすわけではなく、いずれ東京に戻るかもしれない」と言う久保田さんは、胸にある想いを秘めています。そこには松場登美さんからの教えも息づいていました。
久保田綾香さん:
「所長もよく言うのですが、『根のある暮らしは、日常にある気づき』なんですね。お金やモノに頼るのではない、生きる楽しみの見つけ方です。
所長は『頭で考えるのではなくて、手を動かし、物に触ることで見えてくる美しさを感じなさい』と言います。玄関の草むしりも全部抜けばいいわけではなく、美しいものを残して、そうでないものを抜けばいい。その姿勢を一人ひとりがいつも問われているんですね。
私が東京にいたときと明らかに違うのは、目線の高さです。大森町にいると、空を見て、雲を見て、咲く花に気づけるんです。だけど摩天楼の東京であっても、ちゃんと見れば花は咲いていますよね。
昔の自分が目の前にいたら、『そういう小さな気づきを感じることから始めてみたら?』と声をかけてあげたいです。
ハロウィンの次はクリスマスみたいにベタ塗りの季節感で過ごしていたのを、春夏秋冬、それ以上に変わっていく季節を意識するのが、暮らしでは大事なことなのかなと感じていますから。
いつか東京に戻る日が来るかもしれないけれど、それぞれが自分の場所で『根のある暮らし』をできると伝えていくのも、私の使命の一つだと思っているんです」
MeDu
梅の花から生まれた、自然酵母のスキンケア
群言堂のある石見銀山では、かつて鉱夫たちが柿渋マスクに梅肉を塗り、粉じんや鉱毒を防いだと伝えられているそう。今でも銀山周辺には梅の木が多くあり、春の訪れを告げています。
その木々から石見銀山生活文化研究所の社員が見つけ出したのが、新種の自然酵母。豊富なアミノ酸やビタミン類を含むその酵母は「梅花酵母」と名付けられ、さまざまに活用されています。
久保田さんが広報を務めるMeDuは、梅花酵母を使った保湿洗顔石けん、ローション、保湿クリームなどのスキンケア用品と、体の内側から美を育てる発酵食品を展開。
MeDuの紹介ページ「めづのある一日」には、仕事を終えて自宅へ帰り着いた女性が「花に水をやるように、私が私をいつくしんで育てる」シーンが描かれます。
それぞれが自分の場所で「根のある暮らし」を。久保田さんが話す言葉の通り、「日常にある気づき」を取り戻す時間をMeDuはサポートしてくれます。
多田純子さん(根々/生産管理)
神戸のアパレルメーカーから転職。
「本当に良い」を見つめた服作りができています。
「根々」は、大森町での暮らしからモチーフのヒントを得ながら、日本国内の素材や伝統的な技法を取り入れたファッションアイテムをつくっています。情報や流行で形を変えず、女性の体に優しく寄り添うような、ゆとりのあるシルエットが特長です。
根々で生産管理を担当する多田純子さんは、もともとは神戸のアパレルメーカーに勤務。共通の知人に紹介された群言堂を訪ね、他郷阿部家で一夜を過ごした際に、松場夫婦から声をかけられたことが縁になりました。
多田純子さん:
「入社前に、社員の方の家をご案内いただいた時に『ここで目が覚めて、息をして、暮らしていけたら良いな』と思って決断しました。
今は、古民家だった場所を借りて住んでいます。最近は陶芸をやったり、日曜大工もどきをやったり。日曜大工なんてしたことなかったけれど、会社の先輩に教わるうちに『あれこれしたい熱』が高まっていますね。
この前、建具屋さんに網戸をいれてもらったんですが『使わない廃材をあげるから取りにおいで』って見に行ったら、使い切れないくらいあって(笑)。
その廃材は、外にほったらかして雨ざらしにして、味を出しているところです。まるで “巣作り” みたいだなと思いながら、もっと家を素敵にしたいんですね」
普段の暮らしぶりについて「まだ根が張りつつある過程かな」と言う多田さん。その「過程」を振り返ってもらうと、松場登美さんから教わって印象に残ったことがあったのだとか。多田さんが群言堂に入社したばかりの頃です。
多田純子さん:
「イベントをするので宿にアーティストをお迎えしたとき、登美さんがお花を活けたりと、しつらえの段取りをしてくださって。私は『登美さんにあんなんしてもらってしまった。せめてきれいにしなくちゃ』と、アーティストがお帰りになった後で、宿を元あったように全部片付けたんです。
イベントも至らないことはたくさんあったと思うけれど、その時、登美さんから唯一言われたのが『まだ美しく咲いているお花をすぐに捨てるのではなく、たとえばお花の部分だけを水に浮かべて飾るなりしなさい』でした」
生をもらう以上は最期まで楽しむ。“活かしきる”のは「根のある暮らし」に通ずるテーマのひとつだそう。多田さんが廃材を使いながら、DIYで家を育てるのにも通ずる話に感じます。
8時20分には自宅を出て、「とんとんと、川べりを歩いて出社するのが気持ちいい」と多田さん。神戸時代とは仕事への向き合い方だけでなく、洋服への思い入れも変わってきたそう。
多田純子さん:
「根々のチームは頑張って先輩ブランドの登美に追いつこうと、みんなで知恵を出し合っています。サンプル上がりや展示会前には集まって、職種の垣根を超えて、意見を言い合ったり、一緒に喜んだり。
それまでも生産管理の仕事をしていましたが、環境のギャップは感じずに馴染めました。でも、仕事の仕方はこれまでとは真反対です。以前の会社は週次で進む時があるくらいに流れが早かったけれど、今は『本当に何が良いのか』をじっくり考え、丁寧にこだわった服作りができています。
サンプルにしろ素材にしろ、上がってきた嬉しさがぜんぜん違いますね。可愛くて、うれしくなる。洋服と向き合っている時間は変わっていないし、会社にいる時間は短くなっているくらいなのに。
これまでは自分の仕事をとにかくこなす、というところがありました。いまはブランドと一体になっていて、ちゃんと自分事のように思えます。自分はデザイナーではないけれど、同じ気持ちでお客さまにオススメできる。
今は7人のチームで、産休中の人もいますが、みんなが同じ気持ちで向かっていけている感じがしますね」
根々
「根のある暮らし」を表現したシルエット
群言堂のブランド「登美」から、国産素材や技法のこだわりを引き継ぎながらも、さらに「大森町での暮らし」を織り込んだ服づくりを続ける「根々」。
根々が大切に考えているのは「女性の体に優しい服」をつくることだそう。たとえば、小柄な人が着ても様になる。赤ちゃんができても着続けられる。ポケットが大きく家事がやりやすい──。
「根々のイメージは、小林聡美さんや『魔女の宅急便』のオソノさんみたいに、元気に『いってらっしゃい!』と声をかけてくれる人。根々の服を着ると、気分が沈まなくて、不思議とそういう人になっていくんです」と多田さん。
根々の柄は「海に咲く花」という楽しい想像もあれば、里山の生き物たちをモチーフにすることも。大森町で暮らす多田さんの発見も、新しい服づくりのアイデアに生かされているのでしょう。
岩田わか菜さん
(Gungendo Laboratory/デザイナー)
東京から島根へUターン転職。
2人の子どもを育てながら、次の可能性をつくる。
里山の植物を資源と捉え、「ファッション」にして提案すること、 そして「里山的ライフスタイルの在り方」を考えていくこと……大森町の自然から営まれる実験的なものづくりを通じて、次世代へ提案するのが「Gungendo Laboratory」です。
デザイナーを務めるのは、入社10年目となる岩田わか菜さん。2人の子どもを育てるお母さんでもあります。島根県出身の岩田さんは東京の大学で都市環境デザインを、専門学校で服飾を学び、一度は他の企業へ就職します。
岩田わか菜さん:
「出身は松江市の隣にある安来市です。田舎が好きだったのもあって島根で就職したいなと思っていた時に、『まちづくり』と『ものづくり』の両方が噛みあった会社が島根にあると聞いて、群言堂と出会いました。
ただ、その時は人員に空きがなかったのもあって叶わず、東京でパブリックアート(公共施設などのデザインやモニュメント)を作る会社に就職したんです。
新人研修が終わって働き始めた頃、群言堂から『1人空きが出た』と連絡をもらって。『ここで決めないと人生が変わる』と考え、社長に相談して群言堂へ入社することにしました。
最初は生産管理でパターン修正やサンプル制作を手伝っていたんですが、ものづくりや企画に興味があったので、登美さんに話しているうちに『やってみなさいよ』って。興味と意欲があれば、チャンスを与えてくれる社風なんですね」
岩田さんは「登美」のアシスタントをするようになり、先輩デザイナーに習いながら、柄の制作やニットのデザインを手掛けます。その後「根々」の立ち上げを経験し、現在の「Gungendo Laboratory」の立ち上げにも参加することに。
「デザインも最初は描けなくて、変な絵を描いていましたね。結局はパタンナーに口で説明したり」と岩田さんは昔を思い出して笑います。
岩田わか菜さん:
「自宅を出るのは8時くらい。子どもは3歳と1歳で、保育園に預けるのに毎日格闘して。夜は18時くらいに帰りますが、同居している母にも助けてもらいながらだけれど、子育てしながら働くのは大変ですね……。
刺激が少なくて、東京へ行きたいという気持ちも一時期はありました。自信が持てなくて、辞めたいと思ったことも。そんなときも、大吉さんや登美さん、先輩たちが見守ってくれていました。落ち込んでいるときも引き上げてくれたり。
それに、ここは家族が近くにいますし、やっぱり子育てにも良い環境。なによりホッとする感じがあるんです。東京にいた頃は、アパートの隣の人も知らないし、コンビニで急に寂しくなったりもしましたから」
群言堂には、自分らしく働き、暮らしたいと考えている人が多いのだそうですが、「私はその第一波だったのかな」と岩田さん。
岩田わか菜さん:
「今、世の中がよくなるための仕事をしたいけれど、何をしていいかわからない子も多いそうなんです。でも、私も若い頃はそうだったけれど、考え過ぎて頭でっかちだったなって思います。
群言堂は考え方がしっかりしてからスタートする会社でなくて、『やっちゃえ!』でうまくいったことも多い。最初は『もっとプランを立ててやろうよ』と思ったこともあったけれど、だからこそ他にはできないことだったのかもしれない。やってきたことがつながっていって、今は本当に面白いです。
新しい地方のあり方に関しても、Gungendo Laboratoryをきっかけにして、群言堂にまだ触れていない若い人にも知ってもらいたいですね」
Gungendo Laboratory
里山的ライフスタイルをつくる、実験室
岩田さんがデザインを手掛ける「Gungendo Laboratory」が中心に据えるのは、地域資源を使うこと、そして循環型であること。
たとえば、地域資源を活用した染料。近隣の農家で出荷されなかったブルーベリー、山で集めたドングリ、あぜ道に生えるヨモギ……それらをGungendo Laboratoryでは「里山パレット」と呼び、現代の染色技術と掛け合わせることで、化学染料だけでは出せない色彩豊かな洋服を作り上げます。
また、生地の生産、縫製、染色、プリント、洗いなど、服作りにかかる加工は、日本各地の工房や職人たちと行います。「今あるいいものを引き継いでいく」ことで、資源や技術を循環しようとしているのです。
大森町のみならず、「暮らしながら仕事もあるという地域の新しい環境がもっと広がってほしい」と岩田さん。地域資源や地方での暮らしが見直されてきている今だからこそ、Gungendo Laboratoryはファッションを通じた “実験” を続けています。
>>Gungendo Laboratoryのサイトはこちらより
夜は女子会になって盛り上がりました。
▲他郷阿部家の蔵を改装したバースペースで、話の尽きない5人。
群言堂ブランドで働く若い世代の彼女たちは、転機に向き合い、アクションを起こして大森町での暮らしを選びとりました。話のはしばしから、今いる自分の「場」を楽しみながら、仕事をする姿がうかんできました。
実はインタビューでは話が尽きず、夜は店長佐藤&バイヤー松田と “女子会” トークで大盛り上がり。
仕事も暮らしも「もっと良くしたい!」と前向きな彼女たちの言葉に触れ、お互いの悩みや気づきを交換して、たくさんの刺激をもらいました。
私たちが、群言堂の服を着てみたら。
(写真 クラシコム)
大森町から帰ってきて、インタビューした彼女たちがつくる洋服をあらためて見ていると、これまでと印象がちがっていることに気づきました。
彼女たちがブランドに込める想いを知ったからかもしれませんし、大森町での時間が洋服に表現されているからかも。
そこで早速、私たちも彼女たちの服を、普段のファッションに取り入れてみることにしました。着用レビュー出張版!以下のバナーより石見銀山生活文化研究所のサイトにて、ぜひご覧ください
明日公開の連載第3話では、彼女たちの「母」ともいえる存在であり、「根のある暮らし」を考え続ける松場登美さんに、店長佐藤がお話を伺いました。
店長佐藤が「話を聞きながら二回くらい泣きそうになった」という対談の様子は、また明日。
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