【スタッフコラム】つたない英語から生まれた、エッグスタンドの優しい思い出。
編集スタッフ 二本柳
エッグスタンドを使う習慣なんてなかったのだけど…。
ヨーロッパの朝食風景などでよく目にするエッグスタンド。日本ではあまり馴染みのあるアイテムではないかもしれません。
私はというと、ゆで卵を食べる習慣がほとんど無いですし、食べるにしてもわざわざスタンドを使う発想などありませんでした。
でも、そんな我が家になぜこの子たちがいるのかというと・・・
ちょっぴり恥ずかしい、でも嬉しい、大切なスウェーデンでの思い出があるんです。
国境を越えたやさしさに、じんわり。
以前スタッフコラムに書いたことがあるのですが、昨年の夏、初めての北欧へ2人旅をしたことがありました。比較的長めの旅程だったこともあり、そこで1日だけ「今日は別行動にしよう!」という日を作ったんです。
2人だとなかなか長居できないようなアンティークショップやセカンドハンドのお店で、気兼ねなく悠々とショッピング。とっても幸せな時間でした。
そして、そのうちの一軒、50代後半くらいのおじさんが経営していた小さなお店でのこと。
店内はまさに宝の山!といった風で、歩くのも緊張するほどに沢山のヴィンテージ食器が積まれていました。
その中から予算内で買える数だけをじっくりと、慎重に、本当にときめくものを探していると、ずいぶんと長い時間が経っていたようです。
最初は静かに眺めていた店主のおじさんも徐々に打ち解けてくれ、ぽつり、ぽつりと説明を始めてくれました。
「これはリサ・ラーソンのオブジェで目のあたりが可愛いんだ」「こっちはスティグ・リンドベリの素晴らしいカップ&ソーサーなんだけど、ちょっぴり欠けてるのが残念」といった具合に、まるで宝物をなでるように商品を愛でていました。
そんな会話のなかで、ふと「ひとり旅?それとも留学とか?」と店主さん。
「いえいえ、彼と来てるんです。でも・・・」
「今日は別行動なんです」と言葉をつなぎたかった、ただそれだけなのですが、思わず口から出たのが
“today we separeted!-今日、別れたの”
(満面の笑みで)
その時の店主さんの顔、、、今でも忘れられません。“broke up” でもなく中途半端な英語に戸惑ったのか、あるいは何故か嬉しそうな私に引いたのか。「大袈裟に驚いた顔をしてはいけない、それではあまりに可哀想だ」とでも言うかのような、何かをグッと押し殺したポーカーフェイスになってしまいました。
そして一息ついた後、「でもさ、スウェーデンで次の恋人と出会えるかもしれないね。New lifeの始まりだ!」とチャーミングな困り顔で私を励ましてくれました。
その瞬間に「あ、間違えた。そして勘違いされてる」と気がついたのですが、「まあ、いっか」とお会計をすることに。
△このお店で買ったカップ&ソーサー
そんなこんなで店を後にすると、さきほどの店主さんが扉から出て来て「これはプレゼントだよ!」と手渡してくれたのが、このエッグスタンドたちなのです。
私が散々悩んだ末に決めたカップ&ソーサーと同じシリーズのものでした。
「ありがとうございます」と有り難く受け取って、ホテルに戻る帰り道、じわじわと心が温かくなっていきました。
もしかしたら、恋人と別れたばかりなのにカップを二客買って帰る私(笑)に同情してくれたのかな…。次の彼と使ってね!という思いも込められていたのかな…。
そんな想像をめぐらせながら、勘違いをさせてしまって申し訳ないと思う一方で、なんだか幸せな気持ちになりました。
このエッグスタンドだけは絶対に割れないし、あまりゆで卵は好きでない私ですが、時々こうして休日の朝ごはんに出しては、今は夫となった当時の彼と一緒に思い出し笑いをしています。
あの時の店主さん、やさしい思い出をありがとう。
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