【道具好きの台所】第3話:台所道具店の店主いちおし!選りすぐりのアイテム3つ

編集スタッフ 野村

台所という場所に何かしらの情熱を持つ人のキッチンはどんな風なんだろう。

そんなことが気になって、台所道具店『だいどこ道具ツチキリ』の店主である土切敬子(つちきり けいこ)さんを訪ねました。

1話目ではキッチン収納の工夫を、2話目では、もの選びのプロである土切さんが愛用しているキッチンツールを見せてもらいました。

第3話では、いまイチオシしたい台所道具を教えてもらいます。

1話目、2話目はこちらから

 

女性の手でも扱いやすい、中華鍋

土切さん:
「台所道具のイチオシは、この鉄の中華鍋。中華鍋って、扱いづらいイメージやお手入れが大変そうと思っている方も多いかもしれませんが、ものを選べばすごく使い勝手のいい鍋なんです。

この山田工業所の中華鍋は、職人さんの手で叩き上げて作られていてすごく薄くできているから、女性の手でも簡単に食材を返せるくらい軽いんです。熱が通りやすくて食材にもさっと火が入るし、残り物で野菜炒めを作ることってよくあると思うのですが、そんな時にすごく美味しく仕上がりますよ」

土切さん:
「持ち手はチタン製になっているので熱くならないし、穴もあいているので、吊り下げて収納ができて、置き場所に困らないのもいいです。

調理後は、お湯をかけてたわしで磨いて、あとは火にかけて水分を飛ばすだけ。ベタベタするのが嫌なので油を塗っていないのですが、それでも快適に使えていますよ」

 

実はお手入れいらず!鉄瓶は使うべし

土切さん:
「お湯は鉄瓶でわかしています。鉄瓶もハードルが高い道具だと思われがちですが、特別なお手入れはいりません。お湯をわかして注ぎ切ってしまえば、あとは本体の熱で水分が蒸発するので、洗わなくても良いし、実はすごく楽ちん。

何よりお湯に鉄分が出てまろやかになるのか、このお湯でコーヒーを入れるとすごく美味しくなるなって感じるんです」

土切さん:
「万が一鉄瓶がさびてしまった時は、濃い米の研ぎ汁か茶葉を入れてぐつぐつ煮出すといいです。さびが取れるまでやってみてください」

 

料理がグッと楽になる。
北欧生まれの万能調理器具

土切さん:
「これはスウェーデン生まれの『オメガヴィスペン』という万能キッチンツールです。『炒める』『混ぜる』『つぶす』『すくう』といった、調理中の色んなことができちゃいます。

たとえば、ふかしたジャガイモをつぶしたり、生卵を手早くかき混ぜたり、ひき肉をそぼろ状にほぐしながら炒めたり、煮物をすくってお皿に盛り付けたりとか。調理中に道具を持ち変えなくても、これ1本でこと足りるから、すごく楽なんです。

軽いのも良くて、さっと手に取りやすいから、毎日何かと出番の多い道具として活躍しています」

 

番外編:コーヒーアイテムにもこだわりが

土切さんにお話を伺うと、どうやらコーヒー道具にもかなりのこだわりがあるようです。コーヒーのサーバーは、本来はハーブティーや紅茶を入れる耐熱性のガラスポットなんだそう。

土切さん:
「今は廃盤になってしまったのですが、『セレック』というメーカーが作ったこのポットが気に入っているので、これにぴったりと合うコーヒードリッパーを、いろんなメーカーからたくさん探してきました。そうやって使い勝手の良い組み合わせを見つけていくというのが楽しくて。

今では、ガラスポットに合う手編みの金網細工のドリッパーを、お店の別注で作ってもらったりもしています」

土切さん:
「コーヒーのドリップ用には、ホーローのケトルを使っています。持ち手に巻いているのは沖縄のアダンという植物の葉っぱで、素手で持っても熱くありません。

近所で、アダンの葉でバングルを作るワークショップをやっていて、もしかしてケトルの持ち手にアダンを巻いてあげれば、熱くならないし素敵になるかもと思ってケトルを持っていき、主催者に相談しました。私の提案を快く受け入れていただき、イメージ通り仕上がって満足しています。

火にかけると燃えそうだからドリップ専用のケトルに。いつか自分の店でも同じようなワークショップができたら面白いかもと考え中です」

 

理想の台所は、時間と共に変わっていく

最後に土切さんに、理想の台所について聞いてみました。

土切さん:
「今が理想の台所というよりは、まだ作っている途中という感じです。その時々で感じることが変わっていって、今はたまたまこうというか。台所はそうやってずっと更新していけるので、楽しいんです。

台所道具も、年齢とか家族構成、その時々の暮らしぶりによっても、使い勝手が良いものが変わってきますよね。だからこれを選べば正解ですというものは、なかなかないんです。

値段が高い・安いではなくて、愛着の持てるものをたくさん見つけることができたら、理想の台所に近づけるのかもしれません。その時の自分のモノサシによって道具を選ぶことができればいいのかな。だからこのお店は、いろいろな方の暮らしに寄り添うアイテムを提案できる場所であればと思っています」

全3話で、台所道具店の店主である土切さんのキッチンをたっぷり見せていただきました。

台所という空間や台所道具には、たったひとつの正解はなくて、いろんな選択肢がある。だからこそ、いつでもアップデートしていける楽しみがたくさんある場所なんだということに、土切さんとのお話を通して気づくことができました。

私の家の台所も、まだまだ良くしていける部分がたくさんありそう。道具探しを楽しみながら、台所という空間を大切にしていきたいなと思います。

(おわり)

【写真】木村文平


もくじ

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土切敬子(『だいどこ道具 ツチキリ』店主)

テキスタイルの企画デザイン、紅茶店のパッケージデザインの仕事を経て、2017年に自身の店『だいどこ道具 ツチキリ』をオープン。店では、使いやすさとデザインのバランスが取れている、台所に馴染んで役に立つアイテムたちを、独自の視点でセレクトし紹介している。


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