【自分らしい家】第4話:整えるアイデアがこんなにも。バッグ作家、江面旨美さんの仕事部屋
ライター 嶌陽子
自分らしいインテリアづくりや収納の工夫を探りに、バッグ作家の江面旨美(えづら よしみ)さんの住まいを訪ねる特集。
第1話では基調色の「白」にまつわる話、第2話はキッチン、第3話では日用品の収納法を紹介しました。最終話の今回は、江面さんがバッグ作りを行なう仕事場を見せてもらいます。
膨大なバッグ作りの道具。その収納術って?
リビングと棚を隔てた隣にある江面さんのアトリエ。最近は年に2回ほどのペースで行なう個展を中心に、バッグを発表しています。
江面さん:
「バッグ作りにはとにかくたくさんの道具が必要なんです。実際に制作している時は材料とあわせて作業台にものがあふれていますね」
必要な道具をさっと取れるように、江面さんが自身で作ったのがこのウォールポケット。大量の道具が整然と白いウォールポケットに並んだ様子は圧巻です。
▲帆布に革を縫い付けてポケットにし、革の部分はあとからペンキで白く塗った
これなら道具が混ざり合わず、探すのも楽なのと同時に出し入れもスムーズにできそうです。
江面さん:
「ウォールポケットのポケット部分もそうですが、アトリエの道具や家具も自分で白く塗っているものが多いです。そのままだと色が多すぎて落ち着かなかったので」
▲ミシンの台の部分はグリーンと茶色だったのを白くペイントした。
▲作業用の椅子も革の座面を白くペイント。
ものが多く、特にごちゃつきがちな作業場も、ひと手間手を加えることで自分らしく、落ち着ける空間に変身させています。
大小さまざまな箱も、白で統一してすっきり
アトリエで目を引いたのは、たくさんの白い箱。サイズや形などはさまざまなものが天井まで積み上がっている様子がきれいです。色が白で統一されているので、数が多くても圧迫感は全くありません。
江面さん:
「過去に作った作品や道具類、材料などを入れています。オーダーメイドした箱もあるけれど、アスクルで買った収納ボックスもあるんですよ」
これがそうなんです、と言って見せてくれたのがパルプ製の収納ボックス。縁の部分やラベルの周りがスチール製でシルバーだったのを上から白く塗りました。
▲丈夫で使いやすくて気に入っています、と江面さん。残念ながらこのタイプは廃盤だそう。
もうひとつ、江面さんが収納に活用しているのが洋菓子店「小川軒」のレイズン・ウイッチの箱です。
江面さん:
「何個も持っていて、道具類やカード類を入れています。大きさや深さがちょうどよく、なにかと使い勝手がよくて。もちろん白いこともポイントです」
収納ボックスは用途に合わせて使いやすいサイズを選びつつ、「白」と「四角」で統一。そこに、ものが多くてもすっきりと見える秘訣がありそうです。
このアトリエで、ときには悩みながらも好きな仕事を続けてきました
40年近くバッグを作り続けてきた江面さん。アトリエではバッグ作家としての歩みについても少しだけ伺いました。
江面さん:
「結婚後、油絵を勉強していた時に革と出合って、教室のようなところで鞄作りを学び始めました。その頃、ちょうど雑誌で吉田カバンの記事を見て、電話をかけて自分の作品を持って行ったんです。
そうしたら職人の養成コースを紹介してくださって。バッグ作りを本格的にやっていこうとその時決意しました」
江面さん:
「その後も、自分がどういうものを作っていけばいいのか、どうやって世の中の人に自分の作品を知ってもらえるのかなど、悩んだ時期が度々ありました。でもその都度、家族や友人にアドバイスを受けながら思いきって行動したら道が開けた。
好きなことを仕事にできるのは幸せだし、若い世代にもぜひやりたいことを実現してほしいなと思っていますね」
「何を心地よいと思うか」を見つめれば、きっと自分らしい家ができる
全4話にわたってお届けした江面旨美さんの住まい。真似したくなる収納アイデアがたくさんあったのはもちろん、白と直線で作られた空間の清々しさが印象的でした。
江面さん:
「築40年以上の古い家で、スペースも広くない。その中で少しでもストレスなく暮らすための工夫が白を基調色にすることです。
白で統一すれば目がなごむし、部屋も広く見える。それに自分の気分も上がるんです」
▲「海辺などで見つけたハート型の石を集めているんです」と江面さん。
「こんな古い我が家を取材してもらっていいのかしら」と取材中、何度も口にしていた江面さん。
でも20代の頃から持ち続けている「白で統一する」という美意識が息づく住まいは、本当に気持ちよく整っていました。
自分が何を心地よいと思うか。それをきちんと理解していてぶれないからこそ、いつでも江面さんらしい、健やかで心落ち着く雰囲気が家中に漂っているのでしょう。
江面さんにとっての「白」に当たるような、私にとっての「心地よさ」は何だろう? この秋はまずそこから見つめ直して、自分らしく家を整えていきたいと思います。
【写真】川村恵理
もくじ
江面旨美(えづら よしみ)
デザインや絵画を学んだ後、旧通産省の鞄研修会でカバン作りを学ぶ。その後ひとりで革を中心としたカバンのデザイン・制作を手がけ、全国にファンを持つ。現在は年に2回ほどのペースで個展を実施。
https://umamibags.net/
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