【好きを集めた家づくり】第1話:理想のヴィンテージマンションを見つけて、食が中心の開放的な家に

ライター 長谷川未緒

その人らしいインテリアで整えられた部屋は、居心地がよく、目にするものすべてが素敵に見えて、ものの持つ背景を聞きたくなります。

そんな住まいにしたいと思いつつ、イメージが漠然としていたり、あれこれ欲張りすぎてうまくいかなかったり。

そこで、特集「好きを集めた家づくり」では、飲食店のオーナーを務めるヤマモトタロヲさんと雑貨店オーナーでコーディネーターの郁美さんご夫妻の家を訪問し、理想を叶える家づくりのヒントを伺いました。

ご夫妻は、ふたりのお子さんとミニチュアシュナウザーとともに、築60年ほどのヴィンテージマンションをリノベーションして暮らしています。

第1話では、希望を形にしたリノベーションのことを中心にお伝えします。

 

理想のヴィンテージマンションを探し当てるまで

ヤマモトさん一家が暮らすのは、タロヲさんがプロデュースしている飲食店にほど近い、高台のマンションです。

郁美さん:
「最初はこのエリアに住むことは考えていなかったのですが、お店のこともおまかせしている不動産屋さんに『好きだと思いますよ』と言われて。見にきてみたら、ほんとうによかったんです」

夫婦ともに、もともと古い建物が好きだったこともあり、築60年ほどというマンションはアプローチの雰囲気からしてひとめで気に入りました。

タロヲさん:
「このあたりは建築基準法の関係で、高い建物が建てられないんです。なので、窓からの見晴らしがよくて開放感があり、日当たりもすごくいいですね」

当初は同じ階の3軒隣りの部屋を借りて住んでいましたが、4年前に現在の角部屋が売りに出され、このマンションが好きだったことと広さに惹かれ、引越しを決断しました。

 

古さを残したリノベーションとは?

何軒も店の空間づくりを手がけてきたタロヲさんは、大学時代に建築を学び、建築事務所で働いていた経験もあります。この家のリノベーションでも、タロヲさんが図面を引きました。

タロヲさん:
「友人を家に招くことが多いので、食が中心の家にしたかったんです。そこでキッチンの区切りをなくし、スペースを広く取りました。人が出入りしやすい、開放的な雰囲気も心がけました」

郁美さん:
「私は大好きなベランダをウッドデッキにして裸足で歩けるようにしてほしいということと、ベランダには植物をたくさん置いているので、水やりが楽になるよう水道を引いてほしいとお願いしました」

ふたりの希望をすり合わせながら、和室をなくしてリビング・ダイニングを広く取ったり、キッチンスペースを確保したり、ベランダで過ごしやすいようにしたり。間取りも、2LDKから1LDKに変えました。

リノベーションでは、スケルトンにして丸ごと変えることも多いものですが、ふたりはこのマンションの全体の雰囲気もさることながら、部屋のディテールも好みだったため、活かせるものは活かすことにしたそう。

タロヲさん:
「リビングの壁のウッドパネルは、どの部屋も同じなのでこのマンションのアイコン的な存在だと思います。前の部屋では白く塗られていましたが、この部屋は元のままにしました。

ダイニングの照明も建った当時からのものを残していますし、窓のサッシの雰囲気も好きなので、そのままにしています」

タロヲさんの萌えポイントだという配電盤も残し、壁は調湿作用のある漆喰壁を塗るなど、残すところと新しく変えるところを吟味しながら、新しくしすぎないように気を配りました。

ものが多いためストックルームも作るなどして、夫婦の理想的な住まいづくりを進めましたが、じつはリノベーションが始まってみたら、家族が増えることがわかったのだとか。

 

夫婦と一匹から、子どものいる家に

郁美さん:
「和室の壁を壊しているときに、妊娠していることがわかったんです。子どものことを考えていなかったので、先にわかっていたら子ども部屋を作っていたかもしれません」

現在は3歳半になった長女と、生後3か月の次女がいます。夫婦ふたりと犬一匹のための家づくりからスタートし、お子さんが生まれたことで、部屋づくりで変化したことや、何か工夫されたことはあったのでしょうか。

郁美さん:
「家の間取りは変えられないし、部屋のレイアウトも大きくは変えていないですね。

寝室にベッドをひとつ増やしたくらいです。子どもが小さかったころは、今ダイニングに置いてソファー代わりにしているヴィンテージ家具を子どものベッドとして使っていましたが、さすがに狭くなってきたので」

子どもの服やおもちゃは、行李やカゴに入れてリビングに置くなどして、子ども部屋がなければないで、どうにかなっているのだとか。

タロヲさん:
「子ども部屋のない育て方をしてもいいし、セカンドハウスを考えてもいいし。そのときそのときで前向きに考えて行こうと思っています」

 

角部屋に住んでみたら、寒くて暑かった?

越したことで、70平米から100平米と広くなり、リノベーションにより実現した理想の住まい。ところが角部屋は、思いがけない難点もありました。

郁美さん:
「風通しはいいんですが、2面採光になったことで西日が当たり、夏は暑いんです。冬も両隣に人がいた前の部屋は暖かかったんですが、角部屋は寒いんですよね。

前の部屋は夏も冬もエアコンがいらなかったのに、この部屋はエアコンが必需品です」

住んでみないとわからないことがあるというのを実感したそう。とはいえ、もちろんとても気に入っていて、できれば長く暮らしたいと思っています。

 

古い物件ならではの、課題もあるけれど

タロヲさん:
「耐震性の問題で、補強をするか建て替えするか、マンション内で話し合っています。この雰囲気が好きなので、残ることを願っています」

郁美さん:
「前に住んでいた部屋には、知り合いが越してきましたし、住人同士の仲がよくて、ごはんを一緒に食べたり、子どもがお風呂に入りに行ったり。同じ階のどの部屋にも出入りしています。このマンション、住みやすいんです」

タロヲさんも郁美さんも好みがはっきりしていて、こだわりも強いほう。それなのに統一感があって、ディスプレイも素敵です。そうなるまでには、ちょっとした攻防もあったそうで、まだまだ興味深い話が続きます。

第2話では、ものが多いふたりならではのストックルームや、すぐに真似できる廊下のディスプレイ法、寝室のDIYなどをお伝えします。

(つづく)

 

【写真】滝沢育絵

 

もくじ

 

ヤマモトタロヲ
多摩美術大学建築学科卒業後、建築会社を経て料理の道へ。イタリアン、フレンチの店で修行し、2011年独立。ビストロ「aruru」「urura」、ベトナム料理「yoyonam」などを経営。インスタグラムアカウント@yama.taro

山本郁美
雑貨店に勤務し、雑貨のバイイングと店舗ディスプレイを担当したのち、2013年に雑貨と花のお店「pivoine」をオープン。インスタグラムアカウント@ikkyu.y

 


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