【我がままな晩酌】寒い夜だからこそ作りたい。湯豆腐モードの夜がある。
ツレヅレハナコ
寒くなってきたなあと、冷たい北風に肩をすぼめる帰り道。
そんな日は、今夜は何を食べながらお酒を飲もうか考えるのがまた楽しい。寒い夜だからこそ、作りたいおつまみがあるのです。
何と言っても、まずは身体が温まるものを。家族が多ければ具だくさんの鍋も良いけれど、私がひとりでよく作るのは湯豆腐です。ただ温めただけの豆腐なんてつまらない……? いえいえ、湯豆腐づくりはなかなかのエンターテイメントなのですよ。
私の場合、まず買い物の段階から湯豆腐モードに入ります。向かうのは、スーパーではなく地元の豆腐屋さん。最近では数が減ってきたものの、もしお近くにあればぜひ覗いてみてほしい。
「豆腐には旅をさせるな」と言われるそうですが、できたての豆腐はそれだけでごちそう。うちの近所の豆腐屋さんは商品の種類が豊富なので、どの大豆で作られた豆腐にしようかと迷うのもまた楽しいのです。この日は、店のお母さんに湯豆腐向きのお豆腐を相談して、少し硬めの木綿豆腐に決めました。
家に戻ったら、まずはボールに新しい水を張って豆腐を放します。これも店のお母さんに、「冷ややっこでも、豆腐を一度新しい水に放ってから食べた方がおいしいよ」と聞いたから。そういえば、実家でも母がこんなふうにしていたなあ。
お次は、湯豆腐用の鍋に水とだし昆布を加えておきます。10分でもいいから漬けておくと、おいしい水だしがとれるはず。その合間に、土佐じょうゆを作りましょう。
土佐じょうゆというと難しそうだけれど、しょうゆにかつおぶし、酒、みりんを加えたしょうゆのこと。一度作っておけば冷蔵庫で2~3か月保存が効くし、刺し身や炒め物などにも使うと風味とうまみが倍増します。なにより、湯豆腐には絶対このしょうゆなんだなあ。
実は私が作る湯豆腐は、居酒屋メニューの特別仕様。豆腐だけではなく、冬においしくなる鱈や長ねぎ、春菊を加えるのです。
初めて食べたのは、出張で訪れた青森のシブい居酒屋。雪が降る氷点下の夜、ひとりカウンターで呑んでいたら、頭に雪を積もらせながらひとりのおじさんが入ってきました。近くの席に座るなり、注文したのは「湯豆腐」。私は心の中で、「湯豆腐だけで足りるのかな」と思いつつ見ていたら、運ばれてきたのはコンロに乗った小さな鍋でした。ふたを開けると湯気が立ちのぼり、鍋の中には丸ごと一丁の豆腐のほかにふっくらとした鱈と野菜がぎっしり。くいくいと熱燗を飲みながら、豆腐をフーフーして食べるおじさんの温かそうなこと!
「いいなあ」と見ほれてしまい、東京に戻ってすぐに真似をしたのは言うまでもありません。私の湯豆腐は、さらに薬味をたっぷり用意して、少しずつ加えながらいただきます。ねぎだけでも良いけれど、大根おろしやおろししょうが、柑橘類、一味唐辛子。土佐じょうゆをかけて、さらに追いかつおぶしをするのもオススメ。
鱈と野菜からたっぷりのだしが出て、豆腐はよりおいしく。ともに熱燗をいただけば、芯から身体が温まるはず。
そうそう、具をすべて食べたら、ぜひ残った煮汁はとっておいてください。翌朝のお楽しみに、ごはんを加えて卵を落とした雑炊を作るのも楽しみだからです。冬の寒い朝、五臓六腑に染み渡る雑炊、たまりませんよ。
「鱈入り湯豆腐」の作り方
材料(1人分)
・豆腐(木綿・絹ごしお好みで)…1丁
・生鱈(切り身)…1~2切れ
・酒…大さじ1
・長ねぎ…10cm分
・春菊…1/3束
・だし昆布…5g
・万能ねぎの小口切り、大根おろし、しょうがのすりおろし、すだち、かつおぶし、一味唐辛子、土佐じょうゆ(下記参照)など…各適宜
〔土佐じょうゆ(作りやすい分量)の作り方〕
しょうゆ(1/2カップ)、みりん、酒(各大さじ1)を鍋に入れて、中火にかける。沸いてきたら弱火にして1分ほど火にかけ、アルコールを飛ばす。かつおぶし(3g)を加えて1分ほど煮たら火を止め、20分ほど置いてからざるでこす。清潔な容器に入れ、冷蔵庫で2~3カ月保存可。
(1)小鍋に昆布と水2~3カップを入れて10分ほど置く。豆腐は縦半分に切ってから、1.5cm厚さに切る。鱈は3等分に切り、酒をまぶす。長ねぎは斜め薄切り、春菊は3cm長さに切る。
(2)小鍋を中火にかけ、沸きそうになったら昆布を取り出す。鱈を加えて1分ほど煮て、豆腐、長ねぎを加える。2~3分煮たら春菊を加える。
(3)薬味類を添え、適宜加えながらいただく。
食と酒と旅を愛する文筆家。東京都中野区生まれ。お酒とつまみと台所道具がある場所なら、日本各地から世界各国まで旅をし続ける。著書に『女ひとりの夜つまみ』(幻冬舎)、『食いしん坊な台所』(河出文庫)。最新刊は『ツレヅレハナコの旨いもの閻魔帳』(扶桑社)。食や日常を綴るSNSも人気。
Instagram:@turehana1
大阪生まれ。東京を拠点に書籍、雑誌、WEBなどで、人、食、旅など幅広いジャンルの写真を手がけている。食いしん坊がゆえに、旅先では必ず市場に行き、働く人や、美味しいごはんの写真を撮り続けている。
Instagram:@etokiyoko HP:http://www.etokiyoko.com/
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