【コンパクトにおしゃれに暮らす】第1話:1LDK・58平米に家族で暮らす工夫

ライター 長谷川未緒

好きなものに囲まれた自分らしい住まいをつくりたい。とはいえ予算には限りがありますし、スペースが足りなかったりすると、なかなか思い通りにはいかないことも……。

そこで、特集「コンパクトにおしゃれに暮らす」では、ちいさな部屋でも、快適に自分らしく住まうヒントを探ります。

今回訪ねたのは、東京・参宮橋でフランスの服や雑貨を中心に扱うセレクトショップ「アバヌ」を営む大坂友紀子(おおさか・ゆきこ)さん宅。共通の友人がいて何度か伺ったことがあるお住まいは、1LDK58平米です。コンパクトながら、ヨーロッパのヴィンテージ家具やフランスの雑貨などに囲まれた部屋は、とても素敵です。

第1話では、子どもふたりの成長に合わせて手を加えながら住みこなしてきた工夫を中心に、お伝えします。

 

狭くても、パリのアパルトマンのように暮らせばいい

大坂さん一家がこの家で暮らしはじめたのは、15年ほど前。結婚以来賃貸マンションで暮らしていましたが、長女が小学校4年生、次女が幼稚園に通い出し、子育てが落ち着いてきたことがきっかけでした。

大坂さん:
「最初は自分たちでフルリノベーションできる安い物件を探していたんです。でも予算内だと仕上がりが想像できるような物件が見つからずに諦めました。

それで新築も中古も、戸建てもマンションも、いろいろ見ましたが、広すぎたり、価格が高すぎたり、なかなか条件に合うものがなくて。このマンションは夫の職場に近かったこともあって見学にきました。中古で、リノベーション済みの内装は好みではありませんでしたし、あまりにも狭かったけれど、とにかく日当たりのよさに心を掴まれたんです」

それまで住んでいた家は、67平米。これから子どもが大きくなるという時期に、それより狭い58平米の家に日当たりの良さだけで決められるものでしょうか。

大坂さん:
「もうひと部屋ほしかったけれど、なんとかなるかなあ、と。実家も大家族でしたし、ひとり暮らしを経験せずに結婚したので、スペースが十分にある生活を味わったことがないんですよ。

子どもはそのうち独立するから、老後、夫婦ふたりになったときにちょうどいいよね、ここなら住み替えなくていいね、と狭いことをいい方向に考えて、日当たり以外のメリットも見つけるようにしました」

それに加えて、仕事で知り合ったフランス人のパリのアパルトマンも、念頭にあったそう。

大坂さん:
「パリの人も、狭い家に住んでいるんですよ。でも、狭いからどうのこうのと言いません。素敵なインテリアで、本当に上手に暮らしているんですよね。

必要なものはちゃんとあって、いらないものは置いていない。乱雑じゃなくて、人を呼んでおもてなしもできる。

広さじゃないんだと知っていたことは大きかったですし、あこがれていました」

 

天井を高くして、広く見せる

各自の部屋はなく、すべてが共有スペースですが、家族のいる時間がいちばん長いのは、リビング・ダイニングです。

実際以上に広さを感じるのは、天井板が抜かれているからでした。

大坂さん:
「店を改装したときに天井のボードを外したら開放的になってよかったので、家のほうもやることにしたんです。電気屋さんに頼んで、ボードを取り、鉄枠を間引いて、電気の配線をしてもらいました」

コンクリートと鉄枠に、鳥のモチーフがついたランプシェードやかごがかかり、素材のミックス具合がインテリアショップのようです。

大坂さん:
「家が狭いので、抜け感のあるこういうランプシェードがほしいなと思って探していたところ、『ザ・コンランショップ』で見つけました。

我が家には高価だったので夫には呆れられましたけれど、この天井に合うし、イメージどおりでとても気に入っています」

 

ダイニングテーブルを諦め、スペースを確保

このリビング・ダイニング、よくよく見回すと、意外にも家具が多いことに気がつきます。

一般的には、スペースが足りないと何かを諦めがち。たとえば大型テレビを置くのはやめてポータブルテレビにしたり、ソファはコンパクトタイプにしたり。

ところが大坂さん宅は、大型テレビにオーディオ、ベッドにもなるソファにひとりがけソファ、サイドボードにキャビネット、小テーブルなどなど、必要以上に揃っています。

大坂さん:
「このリビング・ダイニングのポイントは、ダイニングテーブルがないんです。本当は置きたいけれど、諦めました。

ごはんを食べるときは、床に座るスタイルです。椅子に座るより床に座るほうが慣れていたこともあって、意外と大丈夫でした」

直径95cmのテーブルは、イギリスの老舗家具メーカー『G-PLAN(ジープラン)』のヴィンテージ。ご主人の趣味で、見た目重視で選びましたが、丸テーブルが思いの外よかったそう。

大坂さん:
「角がないので、6、7人座れちゃうんです。四角いテーブルで6人がけというとけっこう大きくなりますから、丸は狭い我が家には大正解でした。

スペースを取らないので、ここに置いていてもベランダに出やすく、動線の良さも感じています」

 

ひとつしかない部屋を子どもの成長に合わせて模様替え

ひとつしかない部屋は、家族の寝室兼子ども部屋です。

大坂さん:
「子どもたちが小さかったころは、布団を並べて川の字で寝ていました。そのうち自分たちのスペースがほしいと言い出したので、腰の高さくらいのチェストをパーテーション代わりにして空間を区切り、奥を子どものプレイスペースに。

長女が中学に上がったくらいから、一緒に寝るのはちょっとね、となりまして……。

狭いので無理かなあと思いましたが、この部屋に置ける二段ベッドがあったので、置くことにしました。思い込みは捨てて、サイズをしっかりはかることが大切ですね」

二段ベッドの高さがあると圧迫感が出るかと思いきや、意外とすっきりまとまったそう。

大坂さん:
「それまで横並びだったのを二段ベッドにしたことで、スペースに余裕ができました。

狭い以上は高さを利用するしかないと気づき、その考えを家じゅうに活かすようにしたら、収納がラクになったんです」

たとえば二段ベッドを入れたあとに寝室に置いたクローゼット代わりのロッカーも、衣類をハンガーにかけてポールに下げるのではなく、畳んで縦に収納することで、スペースの確保に成功しました。

大坂さん:
「洋服屋ですから、毎シーズン新しい服が増えるし、好きだから断捨離もできないし。

しわになりにくいものは畳んで仕舞うことで、収納量が増え、まだ買っても大丈夫!とうれしくなりました」

このロッカーは、思いがけないメリットも。

大坂さん:
「個室ではないけれど、奥が子ども部屋のようになったんです。

それまでは子どものものが散らかっていると、イライラすることがありました。奥は子どものスペースになったことで子どもにまかせようと思うようになり、ストレスが減りました。

家族仲はいいと思いますけれど、喧嘩をすることもあるので、そういうときは子どもは奥のスペースにこもってますね。そうなったらかまわないのが、暗黙の了解です」

長女は社会人になり家を出ましたが、しょっちゅう帰ってきては、泊まっていくことも多いそう。

家族4人暮らしから、3.5人暮らしのようになってきたという大坂さん宅。

第2話では、断捨離とは無縁ながらすっきりしたリビングの、さまざまな国がミックスされた家具選びを中心に、もっと詳しく拝見します。

(つづく)

【写真】メグミ


もくじ

 

大坂 友紀子

東京都生まれ。服飾の専門学校を卒業後、インポートのセレクトショップで事務職に就いた後、美容院に従事。結婚・出産を経て専業主婦時代の2005年に「代官山honoré」をオープン。2006年に「havane」に店名を改め、2009年に参宮橋に移転。フランスものを中心とした洋服や小物のセレクトに定評がある。店内にカフェスペースも設け、月に数度のイベント開催も。

インスタグラム @havane_yoyogi
ウェブサイト http://havanejp.com

 


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