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【もっと雑貨のはなしをしよう】あなたはどう使う？　日用品愛好家が選んだ天然木のお盆

渡辺平日

春になると大学を卒業したころを思い出します。僕は大学を出たあと、小さなインテリアショップで働きはじめました。

入社当時は商品知識がぜんぜんなくて、必死に勉強していたことを覚えています。とにかく仕事は大変でしたが、幸いにも肌にあっていたようで、どんどんのめり込んでいきました。

それにしても、「あれから10年くらい経っちゃったのか」と思うと、時の経つ早さにびっくりしてしまいます。ほんとうにあっという間でした。いろいろなことが変わってしまいましたが、もちろん変わっていないこともあります。

「もうずっと雑貨業界にいるわけだけど、飽きたりはしない？」

たまに友人からこう尋ねられます。うーん。まあ、さすがに昔と比べると刺激はなくなったけど、それでも飽きることはなさそうです。

いいものとか、おもしろいものとか、そういうものを見つけてきて、生活になじませていく。その過程でなにかを思いついたり、発見したりする。これ以上におもしろいことって、ほかにはちょっと思い付かないです。

最近だとそうですね……。この〈KURASHI&Trips PUBLISHING〉のお盆がおもしろかったです。

僕はすでにお盆を2枚持っています。どちらも「これぞ日本のお盆」といった佇まいで味わい深いのですが、洋室にはなかなか合わせにくく……。もっぱら和菓子入れとして使っています（和室があればもっと活用できそうなのですが）。

一方、このお盆は、それらとはちょっと趣が異なります。まずデザインがおもしろい。側面が出っ張っていて、見ようによっては木彫りの置物みたいに思えます。この意匠のおかげでモダンな印象となり、和室にも洋室にもなじむ雰囲気に仕上がっています。

▲側面の出っ張りは「指が掛けやすくなる」という機能的な役割も担っています。

使い方の提案にも惹かれました。商品ページでは、晩酌のお供にしたり、花瓶の飾り台みたいにしたり、食器の収納場所にしたりと、様々な使い方を紹介しています。

「へえ。同じお盆でも、造形がちょっと違うだけで、ぜんぜん違う道具みたいに使えるんだな」

僕はだんだんと欲しくなってしまい、熟慮の末、3枚目となるお盆を購入することにしました。

……数日後、お盆が我が家に到着。さっそくリップクリームやヘアオイルなどをまとめようと思いましたが、「ピン！」と来るものがあり、先に仕事道具を入れてみました。

そしたらば高さや大きさがなんとも絶妙で、ガジェットやステーショナリーをまとめるのにぴったり。サッと入れ込んでおくだけできちんとした印象を保てます。

それでいて、なんとなく和やかな感じになるところもいいですね。かっちりしすぎないというか。これは木のお盆ならではの作用でしょう。

もちろん菓子盆としても活躍してくれます。僕は甘いものを食べながら執筆しますが、こうやってきちんとセットすると、もうめちゃくちゃにテンションが上がっちゃいますね（ほかにも花瓶を置いたり晩酌のお供にしたりと大活躍中です）。

これまでお盆というと、和菓子やミカンを入れるくらいしか用途はないのかなと思っていました。でも意外とそうでもないというか……。今回、発想次第でいろいろと活用できるんだなと改めて気付きました。

すでに持っているお盆もじっと観察すれば、いい使いみちを思い付くかもしれません。いや、それ以外のすべての雑貨だって、自分が気付いていないだけで、限りない可能性があるのではないでしょうか。そう考えるとなんだかワクワクしてきます。

うん。やっぱり雑貨っておもしろい。飽きてる暇なんて、ちょっとなさそうです。

「もっと雑貨のはなしをしよう」は、今回で連載終了です。前作の「雑貨のはなしをしよう」がはじまったのは2019年の9月ですから、約2年半も続いたことになります。ご愛読いただきありがとうございました。

「『あなた』と『もの』との距離をすこしだけ縮める」

これが連載のテーマでした。ちょっとでも距離は縮まったでしょうか？　もしそうだとしたらとっても嬉しいです。それではまたどこかでお会いしましょう。

本日登場したアイテム

【イラスト】イチハラマコ
【写真】渡辺平日

渡辺平日

日用品愛好家。海の見える小さな町で生まれ育ちました。毎日が平日のつもりで、日夜せっせと文章を書いています。趣味は町歩きと物件探しと民話収集。そういう話題が耳に入ると、反応して振り返ります。主な寄稿先は『LaLa Begin』『和樂web』『goodroom journal』など。Twitterアカウントは@wtnbhijt。

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