【思いを重ねる家づくり】第2話:わが家に似合う家具選び。ソファが主役のリビング空間

ライター 藤沢あかり

「自分らしさ」を大切にしながら、居心地よく、家族みんながごきげんに。そんなインテリアは、どうしたら叶うのでしょう。理想の暮らしを実現した人は、どんなふうに住まいを整えてきたのでしょうか。

そのヒントを探るため、翁長詩乃(おなが・しの)さんのお宅を訪ねています。ハンドメイド作家「ne-ene(ネエネ)」としての活動を経て、現在はふたりの男の子を育てている翁長さん。1話目では、家づくりのきっかけや、暮らしを囲む家具や雑貨選びのルーツをうかがいました。

続く2話目では、2階のリビングスペースをお届けします。
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夫婦の大切なものを受け止める、お気に入りの壁面棚

階段をあがると飛び込んでくる、わくわくするような壁一面の棚。

ここは夫の趣味のレコードやCD、日用品などの収納としてだけでなく、大切に集めてきた雑貨やグリーンのステージでもあり、この家のアイコニックな存在となっています。

翁長さん:
「ここに収納したいものや家電の大きさをすべて測って、棚の高さや数を決めていきました。

最初は、壁一面をすべて棚にする案もあったのですが、最終的に大きく切り取った窓を設けることに。実際に暮らしてみたら、階段からあがったときの光のこぼれかたがきれいで、窓にして良かったと思っています」

翁長さん:
「棚のデザインは、長く住み継がれているアメリカの古い家にあるような、修繕でペンキを塗り重ねた家具をイメージしました。ちょっと厚ぼったいツヤのあるペンキで、素朴な感じ。それを再現したくて、ドア枠や窓枠なども、同じ薄いアイボリーのペイントで仕上げてもらっています」

▲ペイントのツヤ加減にもこだわったという薄いアイボリーが光をやわらかく受け止め、並んだ雑貨や花も引き立ちます。

▲棚には小引き出しを組み込み、1段ずつを家族それぞれの個人スペースに。「この引き出しがあるだけで、宿題や折り紙などもすぐしまえて、散らかりや紛失を防げます」

 

ずっと一緒に過ごしてきたソファを、インテリアの主役に

そしてこの棚を正面に、階段を挟んで右手に広がるのがリビングスペースです。三角の切妻屋根を生かした吹き抜けの天井が、気持ちよく広がります。

リビングの主役となっているソファは、新婚当初から使い続けているもの。幅も奥行きもたっぷりで、座り心地も抜群。しかしその大きさゆえ、引越しのたびにエレベーターに乗るか、階段を通るかとハラハラしながらも、ずっと一緒に時間を重ねてきました。

翁長さん:
「結婚のころに思い切って買ったもので、いまも変わらずお気に入りです。大阪にある『TRUCK』まで現物を見に行き、届くまでも楽しみだったのを覚えています。今まで住んでいた賃貸の家はどれもリビングに対してサイズがギリギリで、部屋がソファで埋まっているような状態でしたが、それでも欲しいと思える魅力が詰まっていたのだと思います。

15年近く経って、ようやくこのソファに合う大きさのリビングに引っ越すことができました」

クッションはそれぞれ、パッチワークキルトは「A.P.C. QUILT」、ゴッホとピカソの刺繍は「BOBO CHOSES」、フリルがついたリネン生地のものは翁長さんのハンドメイド。

いつか大きな家に住んだら、ではなく、お気に入りの家具から、いつしかたどり着く理想の家、というのもあるのかもしれません。そういえば翁長さんは、この家にきてから新しく揃えた家具というのはほとんどないのだと話してくれました。

 

インテリアに統一感を持たせる、家具選びのポイント

翁長さん:
「照明だけは家に合わせて探しましたが、それ以外のソファやダイニングテーブルなどは、もともと使っていたものを持ってきました。椅子も、家にあるものはどれもバラバラに買い足していったもの。少しずつ集めていくのが好きなので、ゆっくり揃えていけたらと思っています。

家具や雑貨を集めるとき、それから建具や床の色を決めるときは、木の質感やトーンがバラバラにならないように気をつけました。

たとえばうちは、木といってもチークよりオーク、赤みより黄みがかった色が中心です。それを揃えるだけでも、まとまり感が出ると思います」

収納スペースの棚やドアの色は、あえて使い込んだような色に調整した塗料で仕上げています。これも、以前住んでいた古い家のオマージュです。

 

誰かの時間、大切な記憶を重ねた空間づくり

リビングにも、旅先で見つけた雑貨や祖父母から受け継いだ家具など、古いものがいくつも見つかりました。たとえば棚のサイドにかけた、こんなお面。

翁長さん:
「これ、おもしろいですよね。祖父が壁一面に世界中のお面を集めていて、子どものころは遊びに行くとちょっと不気味だったくらい。でも大人になったいま見ると、なんだか憎めない表情に思えます。

実家の片付けをしていた母が取っておいてくれたそうで、飾ってみたらなんだかしっくりきて、ここが定位置になりました」

▲飴色になったラタンのフラワースタンドは、夫の祖母から受け継いだもの。左隣にあるチェアも、同じく譲り受けたものなのだそう。

翁長さん:
「祖父母が使っていたものを受け継ぐのは、やっぱりスリフトショップで見つけたものとは違ううれしさがあります。写真に写っているのを見つけて『こうやって使っていたんだなぁ』と愛おしく思ったり、どんな植物を飾っていたんだろうと思いを馳せたり」

「かわいい」の向こう側に思い出や時間を丸ごと味わうことで、さらに愛着が深まっていくのを感じる翁長さんのリビング空間。

次回は、階段の左側に広がるダイニング&キッチンのエリアをお届けします。

 

【写真】衛藤キヨコ

 

もくじ

 

翁長詩乃(おなが・しの)

WEBデザイナー、ハンドメイド作家「ne-ene(ネエネ)」デザイナーとしての活動を経て、現在は小3、年長のふたりの男の子を育てながら、整理・収納やインテリアの活動を始めるべく準備中。Instagram:@ne_ene

 


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