【エプロンで、チャーミング】前編:パン屋さんにもマダムにもなれる。毎日がわくわくするエプロンを作りたくて(エプロン商会)

編集スタッフ 糸井

みなさんは、とっておきのマイエプロンを持っていますか? 私はこれといったものを持っておらず、つけるのも大抵かなり汚れそうな家事のときだけ。でも、いつか欲しいと思っていたエプロンがあります。

それが、「エプロン商会」のエプロン。

シルクのようになめらかで軽く、ワンピースのようなデザイン。普段花柄を着こなせない身ながら、こんなエプロンがあったら、今より家事がはかどるのかな……と思い巡らせていました。

お店のホームページのトップには素敵なエプロン写真とともに、作り手のおふたりと、コピーが載っています。

たった1枚の布なのに、それを着けると、俄然やる気がUPする。
たった1枚の布なのに、それを着けると、一瞬で森のパン屋さんにも、
エレガントなマダムにもなれてしまう。
エプロンの力は本当に不思議です。

– 「エプロン商会」ホームページより引用

ビジュアルや表情、言葉選びのひとつひとつから、にじみ出るチャーミングさ。エプロンって、こんなにおしゃれに着こなせるの? と感じたおふたりのことをもっと知りたくて、お店を運営する市村美佳子さん滝本玲子さんをたずねました。

 

「棚ひとつ分」からはじまったお店

▲左から滝本玲子さん、市村美佳子さん。同郷で、17歳差のおふたりです。

東京・表参道駅から歩いて15分。にぎやかな高層ビルを抜け、周りの建物が低くなってきた頃、「西麻布R」というお店に着きました。エプロン商会の店舗は、このなかにあるといいます。

市村
「実はここ、玲子さん(滝本)がやっている喫茶店兼ギャラリーなんですよ。

ふたりでお店を始めたときは、店舗は持たず、販売はオンライン。試着できるのは1年に2、3度ひらく展示会のときだけでした。

しばらく経つと、お客さんから『直接見たい』と問い合わせが増えたので、まずは気負わず、玲子さんのお店の一部を借りてやることにしたの」

▲「この棚のところだけが店舗です」と指で差す、2つのヴィンテージチェスト。エプロンの在庫が沢山入っているそうです。

滝本
「エプロン商会は、ロンドンにあるリバティ社の生地でエプロンを作ることから始めました。今では、ヴィンテージの布やレザー、デニムでも作っています。なんせ、ふたりとも布に目がないの。

シーズンごとに新しいものを発表することはなく、この布で作ってみたら可愛いんじゃない?と話して、製作するスタイル。一点ものの布もあるから、その時だけの出会いも。

モデルチェンジを繰り返して、今ある形は11種類ほど。布が可愛いと、どんな形にしても可愛いんです」

 

欲しかったのは、毎日がわくわくするエプロン

早速見せてもらうと、引き出しから次々に取り出されるエプロン。想像以上に種類が多くて、驚きました。一様にリバティといっても、その柄の個性はバラバラ。

滝本
「リバティと聞くと、可愛らしい小さな花柄のテキスタイルを想像する方が多いのですが、それだけじゃない。このチェック柄も、無地も全部、リバティプリントです」

市村
「老若男女を問わず着こなしてもらいたいから、ただのエプロンではなく、まるでお洋服のように楽しめることを大事にしていて。

その点、リバティには可愛らしさだけでなく、毒のようなパンチがある。普段着が格好いい系統で、あまり花柄の服を着慣れていない方も、玲子さんのようにシックな方も、リバティの柄なら不思議と馴染むんです。男性のお客様も多いんですよ」

▲ベーシックなかたちの「スクエアエプロン」。胸当ての高さは、それぞれの好みで調節可能。

滝本
「エプロンはすべてワンサイズ。身長差のある私達でも、ベルトのところでブラウジングすれば大丈夫。首にかけるのが苦手な人でも、生地が薄いからびっくりするくらい軽いので心配いりませんよ」

 

花柄スカートみたいなエプロン、コート代わりのかっぽう着

▲胸当てなしの「ギャザーエプロン」。

市村
「スカートのように楽しめるエプロンが欲しいなと、作ったのがこちら。花柄のスカートをはきたいけど、ちょっと勇気が出ない方にもぴったりかしら。

私は大体、朝にその日のエプロンを選びますが、さっきのようなエプロンをつけるか、このギャザーエプロンを選ぶかで、その日のテンションが違ってくるの。コスプレ感覚ね」

滝本
「普段着にも使えるんですよ。ワンピースやスカートの下からちらっとのぞかせると素敵なの」

市村
「かっぽう着タイプも、ワンピース感覚で着れるもの。袖口にゴムが入っていて、水仕事もストレスフリーだから、セーターを下に着ていても、やる気が出るの。

洋服のように、エプロン同士を重ね着することもしょっちゅう。寒い日は、この上からギャザースカートを巻いて、2つのリバティ柄が重なるのも可愛くて」

滝本
「エプロンって、意外にも暖かいんです。このブラックのかっぽう着は、コート代わりに街で着ることも多いです」

こんな着方も、こんな合わせ方もできるのよ、と次々に紹介されるコーディネート。下の服を選ばず、着ると重ね着コーデのようで素敵でした。エプロン姿のままちょっと外に、なんてあまり堂々とできたことがなかったけれど、本当にお洋服のようで、今までの「エプロン観」がどんどん変わってきました。

 

道の途中、ふたりで始めてみたことで

滝本
「今でこそ、エプロン屋さんはいっぱいあるけれど、当時はだれもやってなかったの。それなのに、リバティの高価な生地をふんだんに使うもんだから、値段もびっくりするくらい高かったんです」

地方のギャラリーに呼んでもらっても、価格によく驚かれたとか。それでも、訪れた方は試着をすると不思議と買って帰ってくれる。そんなことが最初から続いていたといいます。

そんなエプロン商会も、今年で12年。

実は、立ち上げ当初から今まで、おふたりのメインの仕事は、これとは別にあるそうです。

市村
「私はフラワーデザイナー、玲子さんはデザイン事務所の代表として、そっちが本業なのよね」

滝本
「この場所も、元々喫茶店をされてた方がいて、私が個人的に引き継ぐ形で始めたもの。だから、普段市村さんはお店におらず、エプロンを買いに訪れたお客さんを案内するのは、わたしの担当。ギャラリーの仕事があるときは、時々おやすみすることも。そんなふうに、やりくりしているんです」

後編では、おふたりがこの仕事をはじめた経緯について伺いました。

(つづく)

【写真】メグミ


もくじ

 

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市村美佳子(左)

フラワーデザイナー、緑の居場所デザイン主宰、オーガニックフラワー研究会代表
イベントの花装飾、雑誌やカレンダーのフラワースタイリングを手がける他、これまでの花教室の他に、毎日の花をテーマにした、生きるための「日々の花」レッスンを2015年3月から新たにスタートさせた。http://midorinoibasho.jp

滝本玲子(右)

デザイン事務所主宰 雑貨バイヤー、店舗企画等に携わる。2011年11月、喫茶店 西麻布Rをオープン。その場所で器やデザイン系企画展等を開催。http://merge.co.jp/

 


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