更新する部屋づくり
【更新する部屋づくり】後編:憧れの実現と、手放したもののバランスって? ものが巡る住まいの工夫

【更新する部屋づくり】後編:憧れの実現と、手放したもののバランスって? ものが巡る住まいの工夫

これまでも当店の記事で、小さな工夫やDIYを通して、豊かに住みなすヒントを教えてくれたインテリアスタイリストの岩佐知布由 (いわさちふゆ )さん。新居への引っ越しを機に、今の暮らしや部屋づくりについてお話を伺いました。

前編では、賃貸ならではの制約を活かしながら、心地よい空間をつくる工夫についてたずねました。

後編では、新しい住まいに迎えた家具や、暮らしの変化に合わせて手放してきたもののお話から、今の自分に合った住まいを整えていくヒントについて伺います。

前編からよむ

住まいに合わせて叶えた憧れ

岩佐さん:
「こうして壁一面に本棚を作るのが夢のひとつだったんです。

この部屋なら叶えられるかも、と引っ越しを機に造作も視野に入れて探している中で出会って。真っ先に新居に迎え入れた家具です。

高さも幅もあって大きいんですが、実は3つのユニットで構成されたシステムキャビネット。

もしまた家を移ることになって、今より狭い部屋になったり、これだけの本棚を置く場所がなくなったりしても、3列並んでいるうちの1つを手放して、2列だけ使うこともできるなと思って。それが決め手の一つでもありました」

▲本棚は、ハンス・J・ウェグナーのヴィンテージ『RY100』

新しい住まいで叶えたことは他にも。

岩佐さん:
「音楽を聴くのが好きで、いつか家にレコードプレーヤーを置きたいと思っていたんです。

リビングの壁際にまとめているんですが、動線になる場所なので、奥行きが浅くてプレーヤーを置けるサイズのキャビネットを探して。他にも、余っていた木の板でレコード立てを作って収納にしました。

そんなふうに新しい家でレコードを楽しみながら、やっぱりレコードっていいなぁとしみじみ実感しています」

▲お話を伺う中でも、ふと席を立ってレコードの盤を裏返してくださる岩佐さん。キャビネットはデンマークヴィンテージのもの



変化とともに、手放したもの

▲大阪のヴィンテージショップで出会った、1960年代頃のデンマーク製ヴィンテージの食器棚

住まいに合わせて家具を探した一方で、新しい環境に合わせて手放したものはあったのでしょうか。

岩佐さん:
「2人暮らしになったこともあり、冷蔵庫と、今年の夏には食器棚を、より大きなものに買い替えました。それまで愛用していた、師匠から譲り受けた食器棚は友人に譲って、今も使ってもらっています。

あとはテレビ台も。前の家から使っていたものを手放して、今は、この部屋の角に沿うように友人の家具職人 Yu Mimuraが作ってくれたものを愛用しています」

▲リビングの本棚と、テイストや板の厚みをそろえて作ってくれたのだそう

岩佐さん:
「もともと古い家具や道具が好きで。リサイクルショップやヴィンテージショップなどで買い物をすることが多いんです。

だからか、物は回ってくる、っていう気持ちがあるんですよね。

もちろん長く大事にしたい、っていうものもあると思うんです。でも私自身はそこまで固執せずに、時期が来たら手放すのもいいかな、と思っています。

捨てるわけじゃなくて、友人に譲ったり、リサイクルショップに引き渡したり。手放してもまた誰かの手に渡って、使ってもらえたらいいなって。そんな思いをもちながら、自宅の家具や持ち物についても循環させることを考えています」



小さな模様替えで、部屋に風が通る

「新しいものを買わなくても、小さく変えればいい」と岩佐さん。その考え方には、前編で紹介したDIYにも通ずるものを感じます。

岩佐さん:
「たとえば、家具の配置を少し変えたり、新しく雑貨を迎えてみたり、そんなちょっとした模様替えでもいいと思います。

仕事柄か、ものを飾るのが好きで。私自身ここに住んでから、壁に飾っているアートなどを、ちょくちょく増やしたり場所を替えたり、今の気分に合わせて整えることがあります。

そうやって、部屋の中のものを巡らせるだけでも、部屋に風が通るような気がするんです」

▲本も元の場所に戻すことにこだわらず、ゆるやかに部屋を巡っているよう


岩佐さん:
「季節に合わせて、部屋のファブリックを変えることも、簡単でおすすめです。

夏には、リビングのソファ前のスペースに、インドネシアのバナナの繊維で作ったラグを敷いていたんですが、最近は秋めいてきたので、少し温かみのあるトライバル柄のラグに変えてみました」

岩佐さん:
「ちなみに部屋に敷くラグ選びのコツは、鏡の前に立って、自分とラグを一緒に写してみること。そう、ラグを売っている方に教えていただきました。

ラグって柄がいろいろあって、見ているうちにどれがいいのかわからなくなってきたりしませんか。そんな時に、洋服の試着のように、実際に自分と合わせてみてしっくりくるものを探してみる。そういうのも、選び方の一つだと思うと面白いですよね」



変化を楽しむ、岩佐さんの部屋づくり

家具を入れ替えたり、小さく模様替えしたりして、少しずつ住まいを整えていく。そんな岩佐さんご自身が感じる「住まいの心地よさ」とはなんでしょうか。

岩佐さん:
「私にとっては、背伸びせずにいられる空間であること。家って、やっぱり自分がリラックスして過ごしたい場所ですから。

だからこそ賃貸だからと難しく考えたり、お部屋の系統にとらわれたりせず、なんでも自由に、自分が心地よいと感じるものを取り入れていけばいいと思うんです。

その時々の自分にとっての心地よさを探して、足りないところには手を加えてみる。そうして少しずつ部屋を整えていけばいいんじゃないかなと思います」

「今の自分」の心地よさに合わせて住まいを柔軟に変えていく。そんな岩佐さんの、これからの部屋づくりについても伺いました。

岩佐さん:
「今は大人の設えにしている部屋だけど、今後家族が増えたら、また部屋に求めるものも変わってくるだろうなって思っています。ものが増えたら収納場所を見直す必要があるだろうし、もしかしたら手放すものも出てくるかもしれません。

でも、これができなくなる、置けなくなる、とマイナスに考えるのではなくて、その時々の暮らしや家族の形に合うものは何だろうって、考えたいなと思うんです。

人生の中で、いろんなタイミングで環境が変わっていくと思いますが、それに合わせて、家も自分と一緒に変わっていく。

そういう変化を楽しみたいなと思っています」

***

岩佐さんのお話を伺っていると、賃貸ならではの制約も、暮らしを取り巻く環境の変化も、工夫次第で心地よく住みなせるのだと感じます。

気になるところがあったら、少し立ち止まって、どうしたらよりよくなるかを考えてみる。すべてを思い通りにはできないとしても、小さな工夫から始めてみればいいのだと、背中を押していただいたような気がしました。

まずは私も、今の住まいとあらためて向き合うことから。自分が本当に心地よいと感じる住まいに近づけるよう、小さな更新を重ねていきたいと思いました。


【写真】井手勇貴

岩佐知布由

インテリアスタイリスト。インテリアデザインを学んだのち、会社員やアパレル販売等を経て、フリーのインテリアスタイリストに師事。2018年に独立し、雑誌、広告、カタログなどでインテリアや雑貨、暮らしに関わること全般のスタイリングや、ショップのディスプレイ、住宅などの空間コーディネートを行う。