【35歳の仕事論】第3話:「新しい仕事ってどうやってつくるの?」(BEAMS鈴木修司さん×編集マネージャー津田)
ライター 小野民
「あの人」の仕事が、生き生きと輝いて見えるのは、どうしてなんだろう。かつて自分と同じ歳だった頃、「あの人」は何を考え、どんなふうに働いていたんだろう。
転職のラストチャンスなんて言葉もささやかれる、35歳という節目。その年齢を目前にしたスタッフ津田が、人生の先輩に会いに行くシリーズ「35歳の仕事論」をお届けしています。今回は、BEAMSの鈴木修司さんに話をうかがっています。
3話では、組織に属しながらも、どんどんと新しい仕事をつくりだしていく鈴木さんの働き方についてうかがっていきます。
会社員だから、「結果を出せる」仕事ばかりじゃないけれど
津田: 鈴木さんは、fennicaやB:ING時代に、常にいろんなことにチャレンジしてきたとおっしゃっていましたよね。どうしてチャレンジが必要だったのでしょうか?
鈴木さん: 当時、fennicaもB:MING LIFE STOREも、BEAMSの中では小さなレーベルでした。だから視点を変えて、外に向けた新しい企画を色々とやったんです。レーベルで扱うものなどを深く掘り下げて紹介するフリーペーパーを発行したのも、そのひとつでした。
フリーペーパーの編集は、元マガジンハウスのベテラン編集者・岡本仁さんに声をかけてOKをいただけたことが、成功の鍵だったかもしれません。
「おもしろい思いつき」を「仕事」に変換するワザ
鈴木さん: 冊子にしたいアイデアはいろいろとあり、岡本さんにはだいぶ無茶なお願いをしてしまいました……。ただ、岡本さんは以前からfennicaを好きだと言ってくれていたので、僕がどういうフリーペーパーをつくりたいのかを話したら、「おもしろいから一緒にやろう」と言ってくれました。
岡本さんとは、沖縄だ北海道だとあちこち取材に行って、仕事とはいえすごく楽しく身になる体験をさせてもらいました。
津田: そういった楽しい空気は、紙面にもあらわれるのでしょうね。でも私の場合、「こういうことがやりたい」という思いつきはあっても、本当にできるかな? と考えてしまって躊躇しがちなんです。
鈴木さん: やってみたいことがあったら、まずは言葉にして、周りの人に伝えてみてはどうでしょう。何事も周囲の協力なしにはできないし、僕の場合も、無謀なことをやろうとしていると思われつつも「やれるんだったら、やってみて」と(笑)、結果的には会社が応援してくれました。おかげで、フリーペーパーは半年に1回発行することができて、3年も続いたんですよ。
津田: わぁ、なんと懐の深い。
鈴木さん: はい。こうして僕が自由にふるまえるのは、BEAMSという土壌があることも大きいと思いますね。
他にもfennica時代にチャレンジしたこととしては、Traveling fennica Shopといって、1カ月単位で旅するお店みたいなものを日本各地のBEAMS店でやったんです。今でこそBEAMS内のさまざまなレーベルでやっていることですが、それをいち早く始めました。
最後の方は、ものだけを扱うのはつまらないと思うようになって、旅行本もつくりました。『BEAMS EYE on OKINAWA』は、BEAMSならではの視点で沖縄の魅力を切り取ったトラベルブックなんです。
「ルールを守る」ことが目的ではないから。
津田: 前に、トークイベントで鈴木さんのお話をうかがったとき、仕事をする上で大事なのは「ルールに縛られすぎないこと」とおっしゃっていて、すごく印象に残っています。
鈴木さん: 会社のなかのルールって、実際は存在しないのに、雰囲気や伝聞でつくりあげられているものもありますよね。「こうしなくちゃいけない」と思い込んでいることも、一度「本当にそうなのかな?」と根底から考えてみた方が良いと思うんです。
僕の一番の仕事は、自分が受け持ったレーベルを成り立たせること。そのために最善の方法を考えていれば、いわば既定路線でないアイデアも出てきます。それが今までにないものだからと諦めるのは勿体ない。やっぱりチャレンジする精神でいきたいですね。
津田: そうですねえ。でも会社員という立場だと、前例がないことをするのは勇気がいりますよね。評価も気になりますし……
鈴木さん: そういうときは、「自分がやるべき仕事って何だろう」というところに立ち返るといいのでないでしょうか? 僕の仕事も、目的はあくまで担当のレーベルを盛り立てていくことで、そのための方法が、たまたま斬新だったにすぎないんです。
それに、多少失敗したり怒られたりしてもいいじゃないですか。いろんな経験をした方が、それがきっと次の仕事につながるはずですから。
自分を活かせる場所は、自分で見つける
津田: 「いつも小さいレーベルを担当している」と仰いましたが、その自分を客観的にどう思いますか。たとえば、大きなレーベルも見てみたいとか、そういう野望みたいな気持ちって、ゼロなんでしょうか。
鈴木さん: おそらく僕の場合、小規模だからこそ活きる人間なんです。だからこそ、小回りがきくところを任されていると思います。大きいところへ行ったら、きっと浮いちゃうし(笑)。
あ、でも、今担当しているBEAMS JAPANは会社を挙げての大きいプロジェクトなんです。こんな大きなところにいるのは、初めてです。
4話では、 鈴木さんが師と仰ぐ久野恵一さんのこと、仕事にも通じる「人付き合い」についてうかがいます。
(つづく)
【写真】鈴木静華
もくじ
鈴木修司(すずき しゅうじ)
1976年、三重県松阪市生まれ。1998年「BEAMS」に入社。メンズ重衣料からメンズカジュアルを担当後、fennicaの前身であるBEAMS MODERN LIVINGの店舗スタッフに。その後fennica、B:MING LIFE STOREのMDを経て、昨年新たにオープンしたBEAMS JAPANに立ち上げから関わる。2005年、民藝の名店「もやい工藝」のオーナーである久野恵一氏との出会いにより、より深く濃く日本の伝統的な手仕事に傾倒し、民藝品をはじめとして生活雑貨の目利きとして活躍している。
ライター 小野民(おの たみ)
編集者、ライター。大学卒業後、出版社にて農山村を行脚する営業ののち、編集業務に携わる。2012年よりフリーランスになり、主に離島・地方・食・農業などの分野で、雑誌や書籍の編集・執筆を行う。現在、夫、子、猫3匹と山梨県在住。
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