【大人が知りたい脳科学】第2話:同じような失敗をくり返さないために、必要なこと

編集スタッフ 寿山

ひとりでイライラしたり、焦ったり、同じような失敗を繰り返したり。いつになったら大人になれるんだろう?

大人だからうまく立ち回りたいと願う理想と現実のギャップを、脳科学の視点から紐とけたらと企画した今回の特集。脳の成長や老化について研究している東京大学薬学部教授・池谷裕二(いけがや ゆうじ)さんにインタビューした内容を、全2話でお届けしています。

第1話では、イライラと上手に付き合うコツについて、お話を伺いました。

つづく第2話では、予想外のアクシデントが発生したときに、もし失敗したらどうすればいいのかを伺います。

 

たくさん失敗した方が、脳は優秀になる!?

科学者の研究は、たいていが失敗の連続だと池谷さん。たまに成功するくらいで、失敗をくり返す毎日。じつは失敗は多いほうが、脳を進化させるのだそう。

池谷さん:
「脳科学の研究で、『ネズミの迷路学習』という実験があります。迷路のゴールにチョコを置いて、1日20回ほどネズミを迷路に放ち、ゴールするまでの様子を観察するというもの。これを10日間続けます。

それぞれが最短ルートを発見するまでの日数には個体差があって、3〜4日で見つける者もいれば、10日近くかかる者も。みんな同じ遺伝子なので、能力的に優劣はなくて。成績を左右するのは、失敗の数なんです」

池谷さん:
「初日にどれだけ失敗したかが大切で、満遍なくすべての道を選んで失敗したネズミの方が賢くなって、すぐに最短ルートを見つけられます。

さらに、わざと最短ルートの途中に壁をつくって行き止まりにしても、失敗をたくさん重ねたネズミは、ちゃんと迂回路を見つけられる。過去の経験をもとに解決策をみつけられる、つまり応用が効くんです。

これは脳の学習にとってすごく本質的な結果で、人にも同じことが言えます。たくさん失敗した方が、脳は優秀になるんです」

 

大切なのは、ほかの選択肢に気づくこと

池谷さん:
「けれども、早とちりで失敗したり、あまり考えずに失敗を重ねても、脳は学習しません。失敗したときに、どれだけ考えたかが大切で、自分の選択したことが、なぜ失敗に結びついたのか。ほかにどんな選択肢があったかに、気づくことが大切です。

同じ失敗をくり返してしまうのは、ほかの選択肢に気づかないまま、脳に妙な癖がついてる状態ともいえます。もしかしたら、分岐点に立っている自覚すらない場合も。失敗に気をとられて、原因を分析できていないのかもしれません。

失敗の裏には、別の選択肢があること。それに気づくためには、失敗する度にじっくり考えることが大切です。さらに重要なのは、失敗にめげない心でしょうか」

 

正解を教えてはダメ? 脳の学習に必要な条件とは

さらに脳に学習させようと思ったら、正解は教えない方がいいともいいます。

池谷さん:
「効率的な学習って、あまり効果がないんです。ラクにスラスラ学べるものは、脳に定着しない。だから子どもでも大人でも、あまり正解は教えない方がいいですよ。

脳が学習するためには、専門用語でいう『望ましい困難』が必要だと研究でわかっています。いわばラクして得たものより、苦労して得たものの方が教訓になりやすいということ。

あっさり答えを教えてしまうと、答え合わせする癖がついてしまって、考えなくなりますから。

たとえ相手が選んだ答えが間違っているとしても、そこで答えを言わず、あえて間違えさせた方が学習にはつながるんです」

 

「失敗してもいい」と許容することで、人は成長する

池谷さんは、子どもや部下に成長してほしいときは、失敗や間違いを許容するよう心がけているそう。

池谷さん:
「日本人って、わりとミスに厳しい性質があると思うんです。もちろんそのおかげでものづくりの精度が高く、海外で高く評価されているということもある。

ただ、ときとしてミスを許容することも重要だと思っていて。仕事にしろ子育てにしろ、失敗や間違いを受け入れる環境づくりが大切なのかなと感じます。

部下のミスに甘くなるという意味ではなくて、失敗してもいいところは、失敗させて成長させる。そんな寛容な対応ができたらいいなと思っています」

池谷さんのお話を聞くなかで、イライラと失敗は、切り離して考えられないものかもしれないと感じました。

時間がないとき、期待通りにことが進まないとき、イライラしてしまう。それは “失敗を怖がる自分” がいる証のようなもの。

とはいえ急ぎたいときだって、期待がふくらむときだって、人間なら誰しもあるもの。池谷さんが言うように、多少のイライラは健全なことだと思って、あまり気にせず暮らしたらいいのかもしれません。

その代わりに、失敗したときはちゃんと立ち止まって、自分の糧にできるようしっかり考えよう。

もし自分にも人にも「失敗したっていい」と思えたら、眉間のシワも薄れて、もっと楽しく、一歩一歩前に進んでいけるのかなと思いました。

(おわり)

【写真】鍵岡龍門


もくじ

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池谷裕二

研究者。薬学博士。東京大学・薬学部教授。専門は神経科学および薬理学で、脳の成長や老化について研究している。
▽著書はこちらから


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