【北欧インテリア特集】第4話:何気ない日々を大切に。北欧の人たちの「暮らし」を楽しむアイデア

ライター 大迫美樹

ストックホルムの人々の暮らしぶりやインテリアをご紹介する、北欧インテリア特集『Fikaにお邪魔しました』vol.2を、全4話でお届けしています。

今回は、1960年代に建てられたストックホルム郊外のアパートに暮らす、アンドレアさんとエディさん夫妻を訪ねました。

最終話となる第4話では、キッチン&ダイニングスペース、そして家族でのFikaの様子を覗きました。

 

今回お邪魔した、ストックホルムのお宅

・ストックホルム郊外に建つアパート
・1960年代築らしいシンプルなつくり
・74平米、2LDK
・映像ディレクターのエディさん(夫、30歳)と、グラフィックデザイナーのアンドレアさん(妻、30歳)、そして2歳になる息子のダンくんの3人で暮らす

 

北欧モダンな家具で、すっきりしつらえたダイニングキッチン

大きな窓からたくさんの光が入るキッチン&ダイニングのスペース。真っ白で清潔感のある空間が印象的です。

ダイニングテーブルの上の、佇まいが美しいペンダントライトは、ポール・ヘニングセン(Poul Henningsen)がデザインをしたPH4/3。

エディさん:
「60年代のクラシックなデザインなのに、むしろモダンな印象を与えれてくれるところが、特に気に入っています。ライトを灯した時の優雅な光も、とてもいいんです」

そして、リビング子ども部屋にもあったように、夫婦はアルヴァ・アアルトの家具が大好き。ダイニングテーブルと椅子も彼のデザインのものを選んでいます。

テーブルの「黒」がちょうどよいアクセントとなって、空間をシックな雰囲気に仕上げています。

キッチンには、備え付けの収納がたっぷり。

アンドレアさん:
「キッチン用品や食器は多いほうですが、これだけ収納があるので十分です。できるだけ無駄なものはしまって、すっきりと作業のしやすいようにしています」

普段から一緒に料理をするというアンドレアさんとエディさん。ふたりでキッチンに立っても、十分なスペースが確保できて使いやすいそうです。

▲キッチン奥の窓辺にもグリーンが置かれていました。印象的な手の石像はNYの蚤の市での戦利品。

 

北欧の冬ならではの、灯りの楽しみ方

▲午後1時前にも関わらず、薄っすらと暗い部屋の中。キャンドルの優しい灯りにホッと温かな気持ちになります。

北欧の冬というと「寒い」「日が短い」「暗い」というイメージでしょうか。

そのイメージ通り、ストックホルムの冬も日照時間は短く、朝9時ごろにようやく明るくなりはじめたと思ったら、午後2時すぎには日が暮れだします。

冬は総じて天気が悪いことが多く、空が厚い雲に覆われているため、日光を拝めない日が何日も続くことも。

エディさん:
「この時期は、ついつい気持ちが落ち込みがちにはなります。

でもクリスマスやお正月の時期は、暗いからこそ街中にあふれるイルミネーションに温かみを感じたり、雪が降ればキラキラとした雪の反射が明るく感じたり、冬にしか生まれない感情があって、それはそれでいいなと思うんです」

▲ドーナツのようなキャンドルスタンドは、アンドレアさんが陶芸教室で自作したもの。

そんな冬を楽しむ方法のひとつが、照明やキャンドル。北欧の人々の暮らしには、なくてはならない存在だとか。

アンドレアさん:
「私たちも部屋のあちこちに照明を置いています。冬の間は少しでも居心地よく過ごすために、たくさんの灯りを灯しています」

エディさん:
「食事やFikaの時間も、かならずキャンドルを灯します」

照明やキャンドルの優しくてほのかな灯り。いろんな灯りを暮らしにうまく取り込むことで、北欧の暗い冬を楽しんで乗り越えている姿が印象的でした。

 

きょうのFikaは「セムラ」とともに

スウェーデンの人たちが大好きなFika(フィーカ、お茶のじかんといったニュアンスの言葉)。ふたりも「毎日の習慣だ」と話してくれました。

アンドレアさん:
「平日は仕事から帰宅後、週末は午後に、家族でFikaを楽しむことが多いです。甘いパンやお菓子もかならず添えて。今日のFikaには、ちょうどシーズンのセムラ(Semla)を用意しました」

セムラは、1月〜3月のこの時期にしか食べることができないスウェーデンの伝統菓子。

中身をくり抜いたカルダモン味のパンに、アーモンドペースト、その上に生クリームをのせた、甘くてボリュームたっぷりのお菓子なんです。

現地ではとてもポピュラーで、毎年ベーカリーごとの食べ比べが新聞に特集されるほど!

そんなセムラをのせたパステルグリーンのプレートは、アンドレアさんのおばあちゃんから譲り受けたというアンティーク。淡い色と波を打った特徴的なデザインが素敵。

アンドレアさんの白いカップ&ソーサーも、おばあちゃんが毎日使っていたものだとか。

▲コーヒー好きのエディさん。日本も好きで、コーヒー道具はHARIOを愛用。

じつはアンドレアさん、日頃から時間があるとお菓子やパンを焼いているそうです。

アンドレアさん:
「秋にはアップルパイ、夏にはルバーブパイ、春や冬にはベリーのケーキやシナモンロールなど、季節に合わせたお菓子づくりを楽しんでいます。

最近では有名なベーカリーのレシピ本もたくさん出ているので、参考にして作ると、とってもおいしいものが簡単にできるんです。

時間に余裕がある時にまとめて作って冷凍しておけば、忙しい日や急な来客の時でも手軽に焼きたてのお菓子が食べられるのでおすすめです」

▲キャンドルの灯りが居心地のいいFikaの時間。ダンくんもおいしそうにセムラを食べていました。

アンドレアさんの作る、焼きたてのパイやケーキは絶品!と語るエディさん。ダンくんも手作りをすると、よく食べてくれるそう。

エディさん:
「毎日おいしいスイーツを食べながら、自然と家族が集まる時間があるのっていいなと思うんです。

お互いに仕事をして、小さな子どもがいるとコミュニケーションが不足しがちなので、そういったものも補えているような気がしますし、なによりも気持ちにゆとりが生まれます」

焼きたてのお菓子に、家族がリラックスして楽しむ時間。Fikaとは、何気ない毎日の中で、家族を大切にするための習慣なのかもしれませんね。

 

北欧の人たちの「暮らし」を楽しむ姿から

ストックホルム郊外にあるアンドレアさんとエディさん夫妻の自宅。

ネットオークションや、ヴィンテージショップを活用した家具選びから、雑貨やアートの飾り方、おもちゃの収納方法まで、真似したくなるアイデアがたくさんありました。

特に印象的だったのは、何気なく過ごしてしまいがちな家族との時間を大切にしていること。そして、心から気に入ったものを、少しずつ集めながら部屋作りを楽しんでいる様子。好きなものは、ずっと大事に長く使いたいという考え方。

私たちと同じように、北欧でも「日々の暮らし」を楽しんでいる人たちがいるんだと、あらためて知ることとなりました。

この特集を通じて、スウェーデン、そしてストックホルムでの暮らしを、少しでも身近に感じていただけたら。そして、日本に住むみなさんの「暮らし」を楽しくする小さなヒントを見つけていただけたら、嬉しいです。

▲取材のあとの一枚。家族3人で窓から見送ってくれました。お邪魔しました!

(おわり)

【Photo】Markus Karlsson Frost

 


もくじ

 

Andrea Andersson / Eddie Åhgren

アンドレア・アンデション / エディ・オーグレン。2歳の息子Danくんと、ストックホルムの郊外のアパートで暮らす。アンドレアさんはグラフィックデザイナー、エディさんは映像系のプロダクションでディレクターとして勤務。アアルトと、日本のデザインやファッションが好き。

ライター 大迫美樹

コーディネーター、ライター、通訳者など。大学卒業後、アパレル会社や広告制作会社勤務を経て、2007年にスウェーデンのストックホルムへ移住。現在はフリーランスで、雑誌や広告、TV、日本企業の仕事を中心にコーディネート全般、執筆を手がける。インスタグラムアカウントは @mikikosmic

 


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