【店長コラム】よく聞かれるんです。「兄妹で仕事するってどんな感じですか?」って。
店長 佐藤
「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムという会社は、3歳年上の兄と私のふたりで、今から12年前の2006年に創業しました。
今でも二人一緒に社外の方に会って名刺交換をする場面では「あ、私が妹のほうです」なんて自己紹介して、なるべく早めに相手の方に私たちが兄妹であるということを理解しておいてもらおうとする癖がぬけません。
(「この取締役、やたら代表取締役に馴れなれしい口聞くな」とあとで驚かれないように。だって妹なんですもの)
「もちろん存じております」と言ってくださる方もすごく多いし、「ええ!ご兄妹?」なんて驚かれることもあったりします。
お客さまの中にも私たちが兄妹で仕事をしていることをご存知の方が多いので、昨年から巡業しているトークイベントでいただくご質問に「兄妹で仕事をするって、どんな感じですか?」といった内容が必ず含まれていたりもしました。
「仲はいいのか?」問題について
(先日公開した短編ドラマの撮影に訪れた教室の隅で雑談する私たちをスタッフに隠し撮りされてました。何だか哀愁漂ってる?)
「うちにも兄がいますけど(妹がいますけど)一緒に仕事するなんて考えられない。お二人はよほど仲がいいんでしょうね」。
こう言われると、創業して最初の数年は「いやいや!仲がいいってわけじゃないんですよ」と二人で全否定していました。
仲がよい兄妹の定義って、なんとなくですが自分たちなりに昔からあって、私たち兄妹はその定義ではかると全然仲がよくないと思ってきたんですね。
例えば、プライベートでもよく会うとか、いろいろな悩みを相談するとか、家族ぐるみで一緒に遊びに行ったりするとか。
私たち兄妹は一緒に仕事をしていなかったら、お盆とお正月に会うくらいだったと思いますし、今でもできるだけお互いに寄りかからないようにする癖がぬけませんし、プライベートでも会ってお茶でも飲みながら喋りたいというような感じでもないので「仲がいいんですね」と言われると恥ずかしいような気持ちしかありませんでした。
子供の頃もタイプがはっきり違う兄妹で、気が合うどころか「ああはならないように」とお互い思い合ってきたところがあったのですけれど、10代の終わりくらいからでしょうか。
だんだん話が合うようになってきて、今度は話が合うようになってきたら、それまでのお互いのはっきりと違ったパーソナリティーが功を奏したといいますか。全然違うからこそ、一緒になにかをやると面白いことに発展する経験が時折あったんですね。
(バンドを組んだりしたのもその流れです。二人ともが30代になる頃には、今度は会社をやるわけです)
そして、クラシコムという会社を一緒にやるようになって数年経った頃からでしょうか。
否定するのがだんだん面倒になってきたというのもありますが「そうですねー、ま、毎日一緒に仕事できるってことは仲がいいってことなんですかね」とのらりくらり返事できるようになりました。
そして創業から12年経った今では「仲がいい」とか「悪い」とかそういうことがどうでもよくなってきています。
私は「お兄ちゃん」と会社をつくって、12年やってきて、そして今、引き続きこの会社を一緒にやっている(なんとかかんとか、やれている)。
その事実だけがとてもフラットに、とてもシンプルに自分の目の前にあるという感じがしています。
「お兄ちゃん♫」なんて慕うような兄妹関係ではないかもしれないけれど、お互いが兄妹という関係性を超えて「本気のビジネスパートナー」として向き合ってきた12年があるからこそ、今となっては全く別のモノサシではかればとんでもない「仲良し」なんじゃないか?とさえ思うようになってきました(笑)
家族のかたちも、兄妹のかたちも。「普通じゃない」かもしれないけれど、自分たちに「フィット」していればいいのかもしれません。それを分かるのに、ずいぶん長い時間がかかりました。
「お兄ちゃん」が上司って……どんな感じ?
(短編ドラマの撮影現場で、落ちている椿の花びらをさらにまんべんなくいい感じで地面に散らすという仕事をする青木)
会社の代表は兄の青木になるので、私にとっては唯一の上司ということになります。
そして、私たち二人が会社の経営陣ということにもなっています。
上司でもあり、兄でもあり、そして一緒に会社を経営するビジネスパートナーでもある。あゝ、なんて複雑。と思いそうになりますが、これがまたいたってシンプルです。
兄妹だから、お互いどこまでも率直にやれるんですね。忖度も必要ないわけです。
もちろん、意見を戦わせて自分の意見が通らないとしても、最終的な判断責任は兄にあるので従うことも多々あります。
単なる意固地ではなく、途中のプロセスでは柔軟に意見を交わして、どうすることがお店にとってよいのか、会社にとってよいのかを粘って議論する責任はお互いにあると思っています。
このあたりはスタッフの証言があると、よりリアリティーが増すところなんですが、今でも結構まわりにいるスタッフが引くレベルで議論をします。
とくに個室にこもるわけでもなく、みんなから聞こえるところで。急に、それはもう突発的に始まるわけです。
(その後わたしも兄に続いて、椿の花びらを撮影シーンのためにバランスよく散らすという仕事をしました)
新しいスタッフは、まずもって最初はとてもびっくりするみたいです。
年次の進んでいるスタッフは「ほら、はじまった」みたいな顔をしています。そして新しいスタッフに「大丈夫、あれはよくあることだから。で、あの議論が終わるともうくだらないことで二人でキャッキャ話してるから心配のし損だよ」とアドバイスしてくれるみたいです。
年次の進んでいるスタッフが言ってくれていることはまさに本当で、これは本当に兄妹でよかったところだと思うんですが、どんなに激しいバトルをしたあとも、その数時間後、その翌日にはどうでもいいことで雑談できてしまうんですよね。
スタッフには驚かせてしまって申し訳ないのですが、私たちとしては長年一緒に仕事をしてきたなかで、できる限りよい答えに行き着こうとするときのコツを掴んできたところがあります。
それは、話し合いの「本当の」論点に、ものすごい速度で行き着くために「あえて」言葉や態度を選びすぎないというコツです。
これは兄妹だからできることなので、あまりおすすめできないのですが……。
「あえて」言葉や態度を選ばずにいける相手なので、「本当に」意見を戦わせなければいけない論点の本質にあっという間に近づいて(近づいてしまって)、そこで喉が枯れそうになるくらいに議論をするので、腑に落ちたり納得できたり、どちらの答えを選ぶべきかという決断までの道のりが全体的に短くて済むというのがあるみたいです。
血のつながった兄妹であるからこそ、お互いの絶対につかれたくない弱さとかダサさも分かっていて、そういうところを突いてダメージを与えてやろうなんて議論の最中に思ってしまうこともあったりします。
ちょっとした目の動きだけでも、「あ、納得してないな」「あ、いまこの議論から逃げようとした」なんて分かっちゃったりする鋭さもお互いに持ち合わせています。
でも、それくらいに「どうでもいいや」とは思えない仕事をお互いにしようとしているのだと思いますし、何事もスパッと割り切れず「本質は何や、なんぞや」とグチャグチャ考えるのが好きな私にとっては、それに付き合ってくれる兄が上司でよかったのかもしれません。もしかすると!?
兄だからムカっ腹がたつこともありますが(きっとそれはあちらも同じ)、兄が私の上司だからここまでやれてきたのかもしれないとキレイごとではなく思ったりもする次第です。はい。
書いていたら、止まりません(笑)
ふっとこの機会に書いてみようと思った、兄妹で仕事をするということについて。何の気なしに書き始めてみたら、タイピングする手が止まりません(笑)
いろいろ、あるみたいです。まだまだ。
お互いの役割分担のこととか、凸と凹のこととか。また機会があったら、この続きを書いてみたいと思います。
そして、先日公開となったオリジナル短編ドラマの製作は、本当に久しぶりに兄妹でひとつのプロジェクトに取り組んだ出来事となりました。
この頃はそれぞれが見ている部門でプロジェクトを進めることが増えてきたので、兄と私が一緒に新しいことに取り組むというのはBRAND NOTEの立ち上げ以来な気もしています。
そんな目線でも改めてドラマをご覧いただけたら、うれしいです。
それでは、こんな兄妹のどうでもいい話を、最後まで読んでくださりありがとうございました!
*オリジナル短編ドラマ『青葉家のテーブル』はコチラから*
▲ドラマ本編(17分)
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