【35歳の仕事論】第2話:「いい仕事」をするためにも、センスは必要?(good design company水野学さん)
ライター 小野民
社会人になって早10年を超え、もうすぐ35歳。先輩の背中を追いかけてきた時期は過ぎて、いまや自分で仕事をつくり、背負っていく、そんな責任がじわじわといつも足元にある感じ。そんな変化が生じています。
自分がこれまで積み上げてきたものを生かした、私の仕事ってどんなもの? 年齢も、仕事のあり方も「中堅」に差し掛かったスタッフ津田(編集チームマネージャー)が、人生の先輩に会いに行くシリーズ「35歳の仕事論」をお届けしています。
今回は、good design companyの水野学さんに、「センス」というテーマで全3話のお話をうかがいました。
「知らないと恥ずかしい」より「なんで?どうして?」を大事にしよう
センスの正体について迫った第1話。水野さんが「センスは知識からはじまる」と考えるようになった背景や、知識を身につけるためにはまず何をすればいいの?という疑問について話が展開しました。
第1話の最後には、水野さんから「知識をためるにはびっくりすればいい」という身近な提案が。ただしこの話、どうやら津田には懸念があるようです。
編集スタッフ津田:
「わたし、本当に小さな人間だと思うんですけど、マネージャーという立場でもあり、スタッフの前で驚いている姿を見せるのが恥ずかしくて……。
『えー、津田さんってそんなことも知らなかったの? ダサいなあ』と思われたくない気持ち、きっと少なからずあるんです。水野さんはつい知ったかぶりしちゃうことないですか?」
水野さん:
「恥ずかしいって気持ちは、センスの更新を邪魔するかもしれないですね。
僕も知らなかったり間違えたりすることはもちろんありますが、それを指摘されて恥ずかしい気持ちはあまりないですね。それよりも分からなくてもやもやするのが嫌いです。
大丈夫。みんなこの記事を読んだら、津田さんがびっくりしていても『知識を蓄えているんだな』と思ってくれますよ。僕もまわりから5歳児だと諦められてるし(笑)」
仕事での考えるプロセスは「疑う×知る×伝える」の繰り返し
編集スタッフ 津田:
「うぅ〜、精進します……。ところでセンスの定義は『身につけた知識から最適解を見つける』だと伺いました。これって、仕事にも通じるなと思っているんです。
仕事だと、新人期間を過ぎれば、まずは自分で最適解を探したり考えたりしなければなりません。
たとえば、わたしの仕事だと『この商品紹介ページ、自分だったら欲しくなるだろうか。過去にうまくいったものを参考にしてみると、こんな共通点が見つかるから、今回はこう変えたほうがいいんじゃないかな』というようなことです。
チームのみんなにも『まずは自分で考えてみよう』と言うのですが、じゃあそもそも『考える』って何をすればいいんだっけ?とか、ずっと考えているのにゴールに辿り着かないとか、途方に暮れちゃうこともあって。
『センス』と『考える』の関係についても、いまとても気になっています」
水野さん:
「そうですよね。ここで重要なのが、『思う』と『考える』の違いだと思っています。
『思う』は自分の中で完結することなんですけど、『考える』は人に投げかけてみて、その答えによってまた変わっていく。伝える作業が入ることでさらに考える。
『考える』という行為自体が、伝える行為とセットになっているんじゃないでしょうか」
編集スタッフ 津田:
「考え方の型のようなもの、水野さんは持っていますか」
水野さん:
「公式があると思っています。僕のなかでは、考えるっていうのは『疑う×知る×伝える』の3つを掛けることだと定義しています。
『悩む』『思う』を『考える』と勘違いしているから、一向に進まないことがあるんですよね」
▲「書いておかなくちゃ」とすかさずメモをとるスタッフ津田
水野さん:
「もうちょっと分解して言うと、自分が良いと思っていたことが、なぜダメだったかをまずは疑う。それについて徹底的にいろいろ調べる。これを上司なりにまず伝えてみる。そうしたら『全然違う!』って言ってくるのか『そうだよ、そこだよ』って言われるのか、そのフィードバックを受けて、ゴールに向かっていかなくちゃいけません。
僕もよく『もっと考えなよ』って言っちゃうんですけど(笑)。そもそも『考えるってどういうことか』を共有していないと、考えること自体が、人によって違うことを指していることもありますからね」
「伝える」ために「考える」。「考える」から「伝えられる」。
編集スタッフ 津田:
「考えるのは、『疑う×知る×伝える』の3要素から成り立っている、というのがすごく腑に落ちました。
そもそも水野さんが『考える』の公式まで作ったきっかけはなんだったんですか?」
水野さん:
「『センスは知識からはじまる』の元になった大学の講義があったからです。『センスは天性のものではなくて後天的なもの』という、一般的に言われていることとは反対のことを伝えなくてはいけませんでした。
きちんと伝えるためにどうすればいいか?そうすると、頭のなかで、きちんと言葉にして組み立てる作業をするんですよね。それで気づいたんですが、『考える』って伝えるために整理する作業だな、と。
どんなに下手な言葉でもいいから、伝えてみると考えがまとまるから、いつもより一歩進めるんじゃないでしょうか」
編集スタッフ 津田:
「なるほど。わたし、やっぱり恐がりだと思うんですね。びっくりした姿を見せて『そんなことも知らないのか』と思われるのがイヤなのと同じで、自分の仮説が間違っていたときに『しょうもないな』と思われたらどうしようって緊張してしまう。
でも、一回伝えてみて、また直せばいいじゃないって考えられたら気が楽です」
水野さん:
「知らないこと、間違っていることがあったっていいじゃないですか。相手にとっては、『教えて』って言われるのは嬉しいことじゃないですか?」
編集スタッフ 津田:
「嬉しいです。教えたくなります」
水野さん:
「でしょう?自分が知らないことがバレることよりも、相手の人が嬉しいことの方が良いですよね」
編集スタッフ 津田:
「なんだか、ちょっとセンスの正体が分かってきました。『センスが良いあの人って思われたい』という自意識が、本質的にセンスを良くすることをめちゃくちゃ邪魔しているのかもしれません」
第3話では、さらに「センス」と「仕事」の関係について、話を伺います。「時間はセンスの最大の敵」と話す水野さんが実践していることとは?
(つづく)
【写真】鍵岡龍門
もくじ
水野学
good design company代表。1972年東京生まれ。ゼロからのブランドづくりからコンサルティングまでをトータルに手がける。主な仕事に、熊本県「くまモン」、中川政七商店、久原本家「茅乃舎」ほか。新著に『いちばん大切なのに誰も教えてくれない段取りの教科書』(ダイヤモンド社)。
ライター 小野民
編集者、ライター。大学卒業後、出版社にて農山村を行脚する営業ののち、編集業務に携わる。2012年よりフリーランスになり、主に地方・農業・食などの分野で、雑誌や書籍の編集・執筆を行う。現在、夫、子、猫4匹と山梨県在住。
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