【ケの日のこと】春、出会いと別れを繰り返して。

「家族と一年誌『家族』」編集長 中村暁野


第35話:出会いと別れを繰り返し


 

先日娘が「ママ、バターってりんちゃんの生まれ変わりだと思う」と言い出しました。

バターとは我が家で飼っているうさぎなのですが、りんちゃんって……?と困惑していると「忘れたの? バターの背中の模様、カブトムシに似てるところあるでしょ!」と娘。りんちゃんとは、去年の夏、ホームセンターでもらってきて、そして一夏が過ぎ命を終えたカブトムシのことでした。薄情な母に怒る娘。

カブトムシがうさぎに生まれ変わったという説にはいまいち納得出来なかったわたしですが、ことの真偽はさておき、そのように愛情を向けたものたちが、姿形を変えて自分のそばにいる、と娘は信じているんだなと思うとなんだか安心したのです。

春は出会いと別れの季節。この春、いくつかの別れがありました。

1つは娘のクラスのお友達が海外に行ってしまったこと。娘の学校は少人数で、クラスメイトは家族のように感じる存在なので、しばらくの間、娘の日記はさみしい、かなしい、の文字ばかり。それでも日本に帰国した時はまた会える、そして自分達もみんなで会いに行く、と「離れても友達」と言う子供達の姿に大人も涙しました。

そしてもう1つ、93歳だったわたしの祖母との別れがありました。ひ孫の成長を楽しみに、そしていつも心配してくれていたおばあちゃん。家族にたくさんの愛情を注いでくれたおばあちゃん。春なのに雪が舞った寒い朝、みんなでおばあちゃんを見送りました。

「ひいばあ、お空で休んで次はママの赤ちゃんになってやってくるんじゃない?」と娘。そう言ったあと慌てて「あ! でもしばらくはゆっくりしたいと思うから、まだまだ空でゆっくりしてたほうがいいよ!」と、きょうだいは弟一人で十分とばかりに言い直している姿に笑ってしまいました。でも、その言葉に力ももらえたのです。

この先には、今はまだ見知らぬ大切な人がいて、新しい出会いが待っているのかもしれません。そして、たくさんの大切な人とのお別れも、いずれ必ず訪れる。でもきっと大切なものは、形はなくなったとしても、いつもそばにいてくれるのだと思います。空や花、道端の石ころを目にしたときに、そんな存在を感じるかもしれないし、時には隣にいる子供達の中に感じるかもしれない。

つながっていくものの中に、今日もわたしの「ケの日」はあるんだな。そんな当たり前だけど大切なことを思う春なのです。

 

【写真】中村暁野

中村暁野(なかむら あきの)

家族と一年誌『家族』編集長。Popoyansのnon名義で音楽活動も行う。8歳の長女、2歳の長男を育てる二児の母。2017年3月に一家で神奈川県と山梨県の山間の町へ移住した。『家族』2号が1/14に刊行。現在販売中。http://kazoku-magazine.com

 


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