【お坊さんのお悩み相談室】第14回:TODOリストに追われていて、頭の中に余白がありません。
編集スタッフ 松浦
家事や子育て、日々の仕事。私たちのくらしには、小さなことから大きなことまで「悩み」がつきものです。
「お坊さんに聞く、くらしの悩み相談室」は、仕事や子育てなど、日々のモヤモヤを、お坊さんに答えていただく連載。 クラシコムのオフィスに「くらしのお悩み箱」なるものを設置し、スタッフのくらしの悩みを集めました。
お答えいただくのは、著書『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)なども人気の、浅草・湯島山緑泉寺 僧侶の青江覚峰さん。青江さん自身も、3児の父として、子育てにも奮闘中ということもあり、お坊さん目線、そしてひとりの親目線でお話ししていただきます。
いつもやらなきゃいけないことに追われていて、頭の中に余白がありません。「TODOリスト」をつくって可視化するというのも実践していますが、それでも「終わらない」という不安にかられてしまいます。もう少しゆとりのある人になりたいです。(スタッフK)
これはちょっと他人事ではないお悩みです。
僕自身、本業である寺の住職業のほかに、このようにコラムを書かかせていただいたり、僧侶として料理のお仕事をしたり、講演に呼んでいただいたり。子どもたちの学校のPTAとしてお手伝いさせていただくこともあります。まさにTODO管理のシステムとにらめっこの毎日です。
これは僕が特別なのではなく、現代人はとにかく誰でも忙しいものだと常々感じています。
さて、今日は僕が普段行っている「暗闇ごはん」のお話をしたいと思います。「暗闇ごはん」とは、薄暗闇の中でアイマスクを着け視覚が奪われた中で食事をとるという体験の企画です。こんなユニークな企画を始めたきっかけが、まさにこの「忙しさとゆとり」に関する考察だったのです。
僧侶として生きていくと決意する前、時間にも心にもまったくゆとりのない生活をしていた時期がありました。机の引き出しにはシリアル。それを手づかみで口に運びながら一日を過ごすような生活なのに、そんな生活に疑問すら感じませんでした。それを一転させたのが、この言葉との出会いです。
「喫茶喫飯(きっさきっぱん)」お茶を飲むときにはお茶を飲みなさい。飯を食べるときには飯を食べなさいという意味です。
非常にシンプルで当たり前のことですが、そんな当たり前のことに、僕はそのときにようやく気づいたのです。
ご飯を食べるときに、自分は一体何を考えていたのか。眼の前の食事ではなく、時間や仕事のことを考えてはいなかっただろうか。お茶を飲むときにお茶に一切の意識を向けたことは果たしてあっただろうか。心ここにあらずで口元からお茶が零れたことで初めてそれを飲んでいることに気づいた、なんてことすらあったのではないだろうか。
眼の前のもの、こと。目を開きさえすれば当たり前のようにそこにあるものに向き合わず、これほどまでにいい加減に物事を通り過ぎているばかりの自分に愕然としたのです。それがきっかけとなって始めたのがこの「暗闇ごはん」でした。
暗闇の中では何も見ることができません。だからこそ味覚や嗅覚に一心に集中して味わう。そうして初めて、食べ物と自分とが一対一で向き合うことになるのです。
これは日常のあらゆる場面にも転用できます。タスクに追われる毎日は苦しいものです。けれど問題は仕事量ではなく、終わらないのではないか、やり忘れていることがあるのではないかという不安、それによって乱される自分の心です。
まず一つひとつ、目の前にある業務に集中しましょう。他のことに心を砕いても、一度にできることなど限られています。今するべきこと、できることに最大限集中することで、漠然とした不安は驚くほど解消されるはずですよ。
青江覚峰
僧侶 青江覚峰
浄土真宗東本願寺派 湯島山緑泉寺住職。米国カリフォルニア州立大学にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。「暗闇ごはん」代表。超宗派の僧侶によるウェブサイト「彼岸寺」創設メンバー
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