【あのひとの子育て】編集スタッフ・青木〈後編〉自分自身を喜ばせることを怠らないようにしようと思うようになりました
ライター 片田理恵
本シリーズの担当ライターである私、片田が「北欧、暮らしの道具店」の “ヨシべ” さんこと編集スタッフ・青木さんにお話を伺っています。
ヨシべさんは夫であるクラシコム代表・青木さんと、中学1年生の息子さんとの3人暮らし。前編では今春中学に入学した息子さんの子育てについて、小学生だったこれまでと変わったこと、そして小さい頃からずっと変わらないことをお聞きしました。
続く後編では、出産後にクラシコムで働き始め、子育てと仕事を両立してきたヨシべさんご自身のこれまでとこれからについて伺います。
子どもと過ごすのは楽しいけれど、別の世界も見てみたい
ヨシべさんが出産した13年前、クラシコムはまだありませんでした。夫である代表・青木さんと、その妹である店長・佐藤さんがふたりで北欧のアンティーク食器を商うネットショップを立ち上げたのが、息子さんが生後6ヶ月を迎えた頃。ヨシべさんは専業主婦として子育てに専念していたそうです。
ヨシべさん:
「家にいて子どもと過ごすのは楽しかったです。だけど赤ん坊と一日中ふたりきりでいる毎日に、自分でも知らず知らず息が詰まっていたみたいで。次第に、書店で本を読んで涙が止まらなくなったりと、自分で自分を抑えきれないような感じになってしまったんです」
息子さんが2歳になった頃、「北欧、暮らしの道具店」の実店舗を立ち上げる話が持ち上がりました。妻の様子を見ていた夫の青木さんから「店での接客の仕事をやってみない?」と打診されたヨシべさんは、もっと別の世界を見てみたいという思いで引き受けることを決断。タイミングよく保育園に入園することもでき、家族は新生活をスタートさせます。
子育てがお客様とのつながりを作ってくれた
▲戸棚の中には、保育園時代によく読み聞かせをした絵本『こぐまのくんちゃん』シリーズと、小学生の頃の母子共通の愛読書『毎日かあさん』
ヨシべさん:
「不慣れな接客の仕事。当初は自信もありませんでした。でもある時から、私なりの暮らしや子育ての話をすればいいんだなと思えるようになったんです。それはお店に来てくださるお客様の多くが、うちと同じ年頃の子どもを育てているお母さんだったから。
私も子どもの話ならしやすかったし、していて楽しかった。だから子育てがお客様とのつながりを作ってくれたんだって思います。今、『北欧、暮らしの道具店』でコラムが書けているのも、暮らしと子育て、かけがえのないそのふたつがあるからじゃないかな」
▲息子さんは小さい頃から贈り物上手。小さい頃にもらったというフウセンカズラとアサガオの種が大事にとってありました
お母さんであることと、社会人として働くこと。どちらも大切で、どちらも「私」で、ふたつは相反するものではない……。それは子育てに奮闘する多くの女性たちが実感している思いではないでしょうか。
ヨシべさんの子育てとクラシコムの歴史とがほぼ重なりあうこの13年間、クラシコムでは多くの女性スタッフが出産を経て職場に復帰してきました。それはきっと、子育てと仕事を両立した最初のケースとして、ヨシべさんの姿があったから。
大人ともフラットに付き合えるってすごいなぁ
クラシコムには、スタッフの子どもたちが学校から直接帰ってこられる「社内託児室」があります。小学生の頃はあまり利用していなかったという息子さんですが、今は毎日、ここに “帰って” くるのだとか。託児担当の先生方をはじめ、社内のスタッフともとても仲がいいそうです。
▲最近、足のサイズがついに同じに。先日はヨシべさんの登山靴で山登りへ
ヨシべさん:
「大人が好きで、働いている人が好き。仕事っていいなぁってよく言っています。あちこちで他愛ないおしゃべりをしているようで、後から私が会話の内容を同僚から聞いてびっくりすることもあるんですよ。え、夏休みがいつからか知らないって息子が言ってたの?とか(笑)。
ここ数年、山登りが好きになってきているんです。私だけじゃなく、息子も。私たちを一番最初に連れていってくれたのもスタッフだったし、その後一緒に登山をしたのも、また別のスタッフ。息子は普段から旅行やお出かけが苦手で、自分から『行く』というのは本当に稀なことなので、最初はびっくりしましたね。
山でもスタッフのみんなと本当に楽しそうに話しています。自分と同世代の友人だけじゃなく、大人とも自然に、フラットに付き合える息子を見ていると『すごいなぁ』って。私は子どもの頃、周囲の大人とあんまりうまく話せなかったタイプなので、ちょっとうらやましいくらい」
最近、家に植物が増えました
少し前に公開された北欧、暮らしの道具店オリジナル短編ドラマ「青葉家のテーブル」。その第4話に登場する、主人公の春子さんのとあるエピソードがあります。それは「悩みが増えるたびに植物が増える」ということ。この映像を家族で自宅で観ていた時、ヨシべさんは息子さんに「お母さんもそうなの?」と聞かれたそう。
ヨシべさん:
「気づいたら確かに家に植物が増えていて(笑)。でも私の場合は、悩みがあるわけじゃないんです。植物は自分の楽しみのため。最近、私、自分のために動くようになってきたんですよ。出かけたいときは出かける。インテリアも素敵にしたいというよりは、自分の好きなものを置きたい。自分自身を喜ばせることを怠らないようにしようって思うようになってきました。
それは少しずつ子離れしているってことでもあるのかな。今の息子と話したり過ごしたりする楽しさやおもしろさは大切にしながら、良好に少しずつ、お互い自立していけたらいいなと思います」
ヨシべさんの子育て、いかがでしたか。小さな子どもを育てる親たちにとって、「中学生」という響きはあまりに遠くて大きくて、つい身構えてしまうもの。
でもヨシべさんにお話を伺って、中学生になったからって変わるわけじゃないんだなということも、ちゃんと見ていればどんな変化があっても大丈夫なんだなということも、少しだけわかったような気がしました。
成長してゆくわが子を見つめながら、自分自身のためにいつかもう一度動き始める。今は想像もつかないそんな時が来ることを、私も楽しみに待ちたいと思います。できるだけゆっくりお願いしたいところではありますけれど、ね。
(おわり)
【写真】神ノ川智早
ライター 片田理恵
編集者、ライター。大学卒業後、出版社勤務と出産と移住を経てフリー。執筆媒体は「nice things」「ナチュママ」「リンネル」「はるまち」「DOTPLACE」「あてら」など。クラシコムではリトルプレス「オトナのおしゃべりノオト」も担当。
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