【小さな家のインテリア】第2話:「機能性」も「ときめき」も。小さなキッチンの、大きな魅力って?
ライター 藤沢あかり
部屋の広さと暮らしの豊かさは比例しないはず。理屈ではわかっていても、「もっと広ければ…!」と感じてしまうのは、どうしてでしょうか。夫婦二人暮らしで、38平米の一軒家を建てた、雑貨店「縷縷(るる)」店主のジェゲデ真琴さんを訪ねながら、その工夫や考え方を全3話で伺っています。
1話目では、あえて「小さな家」を建てた理由と、そのメリットを伺いました。続く2話目では、気になるキッチンスペースをじっくりと拝見します。
選び方の工夫で我慢知らず。すべてが一軍のキッチン道具
ステンレスで統一された壁付けキッチンに、木製のシェルフ。手仕事の器や道具が並ぶジェゲデさんのキッチンは、すっきりとしながらも、暮らしの温度と気配がそこかしこに漂います。
主役は、なんといってもこのシェルフ。食器棚として使えるようにと、ダイニングテーブルと同じく、「TREOW FURNITURE WORKS」に作ってもらいました。
ジェゲデさん:
「手持ちの器の奥行きや、重ねた時の高さを考えながらサイズ調整をしながら作ってもらいました。食器はここに収めているのが、ほぼすべてです」
シェルフの下に取り付けたバーは、これ一本で収納力がぐんとアップする縁の下の力持ち。キッチンツールやクロスはここに集約することで、調理中に取り出しやすいことはもちろん、自分が持っているものを一目で見渡せるメリットも生まれます。
▲冷蔵庫のサイドもうまく活用。マグネット式のナイフラックやラップ、ティッシュなどはここにまとめています。
こちらは冷蔵庫と反対の、コンロ側。炊飯用の大きな土鍋は、ここが定位置です。
スパイスや鍋をしまっているストリングシェルフは、キッチンを実際に使い始めてみると少し収納が足りないと感じ、あとから取り付けたそう。このスペースにぴたりと鍋が収まっていることにも、ちょっと驚きです。
ジェゲデさん:
「ものが少ないと言われますが、それなりにあると思いますよ。土鍋で炊いているので、炊飯器がないくらいでしょうか。ただ、買い物をするときは、用途が限定されたものではなく、できるだけいくつも役割があるものを選ぶようにしています」
▲シェルフに置いた鍋は、貝印「ユータイム」シリーズ。コンパクトな口径ですが、パスタを茹でたり、味噌汁を作ったりと、幅広い使い勝手で長く愛用しています。
もの選びのポイントは「多用途・重さ・デザイン」
ジェゲデさんのもの選びの視点は、いろいろなところで共通しています。例えばこれ。愛用のフライパンは、料理家の平野レミさんがプロデュースする『レミパン プラス』です。
ジェゲデさん:
「深さがあるから、炒める、煮る、揚げる、蒸す、これひとつで、いろんなことができるんです。蓋は自立するし……本当に便利。
鉄のフライパンも素敵ですが、重くてわたしには扱いが大変で。道具はできるだけ軽いものを選びたいわたしに、ぴったりでした。できるだけいろいろなものを見て、上手に選びたいなと思っています。デザインと機能性、道具なら重さなどを総合的に見ながら、フラットな視点で選べたらいいですよね」
▲「野田琺瑯」の青いキッチンポットは、以前は酵素作りに使っていたもの。今は、スポンジやラップ、ゴミ袋などのストックを収納しています。
キッチンの一角に置いた『ブラバンシア』のゴミ箱も、ジェゲデさんらしいもの選びを経て仲間入りしました。
ジェゲデさん:
「ここに置くゴミ箱をずっと探していたんです。おおよその大きさと、足元にあるコンセントやガス栓を邪魔しない形、さらに掃除のしやすい脚付きのデザインがいいなと思って。それに樹脂製だから、とても軽くて動かすのも楽なんです。家具でも日用品でも、極端に大きなものや重いものは管理が大変になるので、あまり選びません」
ぴったりのものを見つけた時は、すごく嬉しかったそう。気に入ったものが見つかるまで、何年も探し続けたりするのですか?と尋ねると、短期間で見つけることが多いという、意外な返事が返ってきました。
ジェゲデさん:
「どんなものが欲しいかを思い描きながら、画像検索することが多いです。ビジュアルで探せるので、イメージとパッと結びついて探しやすいですよ」
▲ステンレスのキッチンに、テイストもサイズもしっくりきた収納ワゴンは、どれも『ディノス』で。
キッチンの足元や、冷蔵庫との間に入れたぴったりサイズのステンレスワゴンも、そうして見つけました。ここにはキッチンクロスや保存容器、食器棚に収まらない大皿を収納しています。
引き出し式のステンレスワゴンは、パスタや乾物などの食材ストック置き場に。あまり買い置きはせずに、ここと冷蔵庫に入るだけと決めています。食べかけのパンやお菓子などのちょっとした食材は、出しっぱなしではなく冷蔵庫に入れることが多いのだそうです。
ジェゲデさん:
「食材は宅配を利用していますが、まとめ買いはしないんです。ネットで箱買いできたら便利だなと思うこともありますが、置く場所がありません(笑)。
昔は、調味料やシャンプーなどが切れたらどうしよう、とストックしていたこともありました。でも今は、食材も、切れたら別のもので代用したり、シャンプーがなくなっても、1〜2日くらい石鹸で洗えばいいか、って。なければ、ないなりに、なんとかなるかなと思えるようになりましたね」
「現在進行形のお気に入り」で満たしたキッチン
▲食器棚の上に並べたガラスポットは、下町のガラス職人による手仕事。お店の人気商品で、自宅でも3サイズ揃えて愛用している。(現在、左の一番小さいサイズは取り扱いなし)
でも仕事柄、つぎつぎに魅力的なものと出会う日々。どんどんものが増える一方にならないのでしょうか?
ジェゲデさん:
「もちろん、お店で取り扱うものは実際に使ってみて、その良さや使い心地を確かめたいので、やっぱり少しずつ増えていくと思います。
ただ、家に収まる量を超えてきたら、近くに住む妹家族に譲って使ってもらうこともあります。それはまたいずれ、わたしの手元に戻ってくることもあるかもしれませんし、家族間で、より良い方へとものを循環させるようにしているんです」
実はこのキッチンを拝見しながら、たとえば電子レンジやボウルのように、多くの人の家には「ある」ものを我慢して、あえてなくしているのかもしれない、なんてことを考えていたのです。
でも、電子レンジもボウルもある、キッチンツールも一揃いあるし、チーズグレーターまである。キッチンボードは複数だし、軽量カップだってふたつ。
ではなぜこんなにすっきりしているのだろう。そう考えながらの答えは、「なんとなく」置いたものがほとんど見当たらないことでした。
食べかけのお菓子やパン、なんとなく旅先で気に入って買ってしまったお菓子の空き缶、必要数以上にある木ベラ。「いつか」のための空き瓶。「なんとなく」集まってしまうものは、キッチンに限らずたくさんありますが、ジェゲデさんは「現在進行形で使っているお気に入り」に、居場所を与えています。
なにを、どのくらい持つかは、人それぞれ。100本集めた木ベラが料理のモチベーションを上げる人だっているはずです。誰かの決めた、「ものの多い・少ない」や、「便利」「素敵」の物差しではなく、自分の暮らしにきちんと合っているかを確認する作業の大切さを、改めて感じた気がしました。
最終話となる3話目では、どうやって「ものが少ない状態をキープしているの?」という秘密に迫ります。減らすよりも大切な、そもそもものが増えない「しくみ」が、ジェゲデさんの暮らしにはあるようです。
(つづく)
【写真】木村文平
もくじ
ジェゲデ真琴
東京・調布の雑貨店「縷縷LuLu」店主。大分県出身。「細く長く、とぎれることなく続く」という意味の店名どおり、日常にいつまでも寄り添うような工芸品やデザイン雑貨のある暮らしを提案している。アメリカ人の夫と2人暮らし。https://www.luluweb.com/
藤沢あかり(ライター)
編集者、ライター。大学卒業後、文房具や雑貨の商品企画を経て、雑貨・インテリア誌の編集者に。出産を機にフリーとなり、現在はインテリアや雑貨、子育てや食など暮らしまわりの記事やインタビューを中心に編集・執筆を手がける。
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