【体いたわる、おうち参鶏湯】第1話:疲れた体は、食べて整える? 参鶏湯研究家に会いに行きました
ライター 小野民
おいしく食べて、体調を整えられたら
朝晩はひんやりとした空気も感じるようになった今日この頃。まだまだ日中は暑いけれど、夏真っ盛りが終わった余韻は、体にも現れているような気がします。
なんとなく体がだるかったり、不調を感じやすい時期は、ちょっとしたセルフケアで健やかに過ごせるようになれたら…という願いがあります。
自分のみならず、家族の体調も整えたい。そこで思い浮かんだのが、「食べて整える」ということ。おいしくて、食べたら元気になる。その代表格として、挙がったのが「参鶏湯(サムゲタン)」でした。レパートリーに滋養たっぷりのスープを加えたら、心強い味方になってくれそうです。
参鶏湯研究家、脇もとこさんを訪ねました
参鶏湯研究家の脇もとこさんは、「HOME KITCHEN PHARMACY」を主宰し、参鶏湯を日本の家庭に広めるのと同時に、薬に頼らず身近な食材でちょっとした不調を調整するレシピや知恵を発信しています。
もともと本業は広告スタイリスト。夫と2人で設立したデザイン会社でマネージャー兼スタイリストとして働いていましたが、現在はスタイリストの他に会社の経理などをしています。そんな脇さんが、参鶏湯研究家になったのは、8年前に友人宅で食べた参鶏湯のおいしさに感動したのがきっかけだったそう。
まずは私たちの「おいしそうだし、なんとなく体にも良さそう」という参鶏湯のぼんやりした印象をクリアにすべく、基本情報を教えてくださいました。
赤ちゃんからお年寄りまで。みんなの養生食
▲本格的な参鶏湯に使う生薬。上から左まわりに、なつめ、クコの実、蓮の実と松の実、高麗人参とファンギ。
脇さん:
「参鶏湯を初めて食べた時、当時小学校低学年だった娘がすっかり気に入ってしまったんです。当時はレシピもあまり見当たらなかったのですが、娘にせがまれて自己流で試行錯誤しているうちに、自分の理想のかたちの参鶏湯を探求するようになりました」
家や友人に振る舞うだけのつもりが、「レシピを教えてほしい」と取材の依頼がやってくるまでに。
脇さん:
「実はそのとき、まだ韓国には行ったことがなくて(笑)。これはまずいぞと、韓国の友人に参鶏湯のおいしい店トップ5を聞き込んで、全部食べに行きました。どれもすごくおいしかったし、そこで見聞きしたことで、私の参鶏湯の方向性もこれでいいと思えました」
▲脇さんのウェブストア「参鶏湯研究所」で販売している本格薬膳参鶏湯のスパイスブレンド。家で作ってほしいから、丸鶏用(No.1)、骨つき鶏肉用(No.2)の2種を用意。
それからは、レシピだけでなく、期間限定の参鶏湯の店を開いたり、スパイスブレンドを販売したりと幅広くなっていました。
脇さんは、「知れば知るほど、参鶏湯ってとても優秀な料理です!」と太鼓判を押します。
脇さん:
「体が温まる参鶏湯は冬のメニューのイメージですよね。本場韓国では、年中食べますが、特に7月〜8月の間には、3日ほど “参鶏湯を食べる日” があるんですよ。
日本でいうと、 “土用の丑の日” にうなぎを食べる感覚。暑い夏を滋養強壮によいとされる参鶏湯を食べて乗り切ろうということです。
本格的な参鶏湯は、丸鶏のお腹にもち米と生薬を詰めて煮込みます。途中で出た脂も取り、ベースには塩も入れないくらい優しい味に仕上げるんです。だから消化力が落ちている人や赤ちゃんの離乳食にも使えて、薬膳の代表料理とも言えます」
脇さん:
「ベースはシンプルですが、好みで味をつけたりキムチを添えて食べることで、しっかりした味で楽しむこともできる。年齢や状態を選ばずに、家族みんなに合った養生食であることも魅力です」
困ったときの一品にもぴったり? 参鶏湯の意外な魅力
参鶏湯に魅せられて、毎日でも食べたい! という娘さんのために日頃から参鶏湯を作るようになり、「食べて整えることにも目が向いていった」と脇さんは言います。
脇さん:
「参鶏湯はおいしいのはもちろん、体が喜んでいる感じがします。食べて元気になることを実感したから、ちゃんと薬膳の勉強もしようと薬膳を勉強する学校にも行ったんです。そこで生薬やさまざまな身近な食材を知り、身体との関係を学んだら、ますます参鶏湯が優秀なことを知って。
煮込む時間がかかることを除けば、とても手間の少ない料理とも言えますし、困ったときの一品にぜひ加えてほしいですね。
目標は、日本の家庭にもっと参鶏湯を広めること。肉じゃがと肩を並べるくらいになるといいなぁと思っています」
本格的な参鶏湯も知り尽くした脇さんですが、本場の食べ心地は担保しつつ、どうにか身近な食材で作れないだろうかと思案してきたそう。
第2話では、スーパーで買える食材だけで作る参鶏湯のレシピを紹介。手軽だけど、驚くほどぽかぽか温まって体が喜ぶ仕上がりですよ。
(つづく)
【写真】佐々木孝憲
もくじ
脇もとこ
参鶏湯研究家、スタイリスト、参鶏湯スパイスセット開発&販売など、活動は多岐にわたる。薬に頼らず身近な食材で体調を整えられるように、という意味も込めた「HOME KITCHEN PHARMACY」というプロジェクトを掲げ、発酵食品や薬膳のワークショップを展開。https://homekitchenpharmacy.stores.jp/
ライター 小野民
編集者、ライター。大学卒業後、出版社にて農山村を行脚する営業ののち、編集業務に携わる。2012年よりフリーランスになり、主に地方・農業・食などの分野で、雑誌や書籍の編集・執筆を行う。現在、夫、子、猫4匹と山梨県在住。
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