【フィットするしごと】一つ屋根の下、「家族」のようなしごと場に

広報担当 馬居

NAOTを日本で販売するloop&loop代表の宮川さんにお聞きした本インタビュー。

遠く離れたイスラエルの靴NAOTをどのようにして日本で販売していったのかというお話を伺った前編に続き、後編ではNAOTのファンを作り出す独自の活動やその発信をする会社の風土について、スタッフさんも交えてお話を伺いました。

*2019年にクラシコムジャーナルで掲載された記事を編集して再掲載しております。

 

仕事は「頑張るぞ!」なんて思ったら続かない

──loop&loopの社員さんは、どんなかたがたですか?

loop&loop代表・宮川敦さん(以下、宮川さん)
「アルバイトさんも合わせると30人くらいが働いてくれていますが、僕ともうひとりが男の子がいて、あとは女性です。採用の基準は色々ありますが、最終的には一緒に仕事をするということを想像して、ワクワクする人を選ぶようにしています。そこにいる上野も最初はやんちゃで……。履歴書もNAOT“O”って綴りを間違えてたし」

スタッフ・上野なつみさん(以下、上野さん):
「家に帰ってから気付いて、「ああ、落ちたな」って思いました」

▲スタッフの上野なつみさん

宮川さん:
「すごく個性的でね。おもしろ枠、原石枠でとりました。まだあの時は23歳だったよね」

──上野さんはなぜ応募されたのですか。

上野さん:
「もともと祖母の家があったこともあって、NAOTのある奈良町で働きたいという思いはありました。あと、私は新卒で入社した別のメーカーで販売の仕事をしていたんですが、自分の本当にやりたい接客のあり方と少しギャップを感じていて……。

そんな中で、NAOTのお店に行くと、店員さんはみんな『この靴が好き! 』という気持ちがひしひしと伝わる接客をしていてすごく羨ましくて。私も楽しく生きるように働きたい! という想いが膨らんでいきました」

──実際入社されて、いかがですか。

上野さん:
「今は仕事と生活が流れるように一体化しています。職場に出勤する、とは言いますが、どちらかといえばここも家なんです。家Aと家Bを行ったり来たりしているような、心地いい日々です」

宮川さん:
「僕たちの理想とする『仕事』は、ご飯を食べるとか、寝るとか、テレビを見るとか、そういうことの並列であってほしいんです。仕事を頑張るぞ! なんて力むと、続かないですから。まあ、一番頑張りたくないのは僕なんですけどね」

 

接客はフリースタイルを推奨

──みなさんしっかりされて、でも柔軟で素敵なスタッフさんばかりな印象です。

宮川さん:
「そう、僕の原石を捕まえる腕はすごいんです(笑)。うちはとにかく決まりがないから、逆にしっかりするのかもしれませんね。自分で考えないとって」

──スタッフさんが主体となったイベントやウェブの記事もとても面白いです。

宮川さん:
「あれも全部、スタッフがやりたいものをやっているだけ。

あまりにもアウトプットが靴から離れすぎたら笛を吹くのが僕の役割です。ピピピっと。

でも、最近はそうそう離れることはないので、お客さんと同じようにみんなの表現を楽しみにしているだけですけどね」

──接客マニュアルなども作らないとお聞きしました。

宮川さん:
「そうですね。フリースタイルでの接客を推奨しています。決まった接客なんてつまらないですから。お客様もうちのスタッフと同じように全員違う個性を持っていて、それぞれが心から思う言葉じゃないとお客様の心も動かせない。

とにかく、嘘をつかず誠実でありたいんです。売れることではなくて、笑顔で帰ってもらうことこそがゴールなんです。お金がないのに何足も買おうとする人には『ダメです』といえる人間でありたいじゃないですか。靴を買われなくても、笑顔で帰ってもらったらそれでいい。

良いサイズを選んでいただく、その人にとって良い靴をオススメするということはもちろん大切ではありますが、接客マニュアルなんてあっても意味がないかなと思うんですよね。

だから僕らは分業をせず全員野球をしています。全員でイスラエルから送られてくる商品を一つひとつ検品して、一生懸命ディスプレイする。その過程があってこそ、接客をするときに靴への想いが言葉の波になって自分のなかから溢れると思うんです」

──むしろ全員野球の方が効率良かったりするのでしょうか。

宮川さん:
「いや、効率は悪いでしょうね(笑)。

でも、そもそもお客様の笑顔をみたいという想いからこの会社をスタートしています。だから売れたからいいだろ、となったらこの会社の存在意義はなくなります。

僕らにはお客さんからすごい量のメールや手紙が届くんですが、これが届かなくなったら、どんだけ靴が売れていようと僕らは解散する。これだけは決めているんです。酔っ払ってふらふらになっても、この信念だけは語れます。

とはいえ、この先もずっと全員野球で行くかどうかはわかりませんけどね(笑)。でも、僕らが会社を始めた頃の思いは忘れずに。それだけはどういう形でも続けていきます」

 

長くつながっていく、家族のように

──とはいえ、みなさんの経験や知識は溜まっていきますよね、きっと。

宮川さん:
「そうなんです。みんなが独自に持っているものをシェアする場所がないということに最近気付いたので、おしゃべり会をしようかって話しています」

──おしゃべり会、とっても良さそうです。クラシコムもそうですが、スタッフにとって話しやすい環境というものは、何にも代えがたいと思います。宮川さんのお人柄がそういった環境を作っているのかなと思ったのですが、再び上野さんいかがですか?

上野さん:
「とにかく誰にでも本気で接してはくれますね。23歳で入社した私にも、最初から接し方は今と全く変わりません」

宮川さん:
「彼女は特にめっちゃ噛み付いてきましたからね。こっちも本気で返さないと」

上野さん:
「すっごく言い合いになったりはしますけどね。でも、きちんと聞いて話をしてくれるという信頼があるから、『うーん』と思ったことは溜めずに言おうと思える環境です。

私たちみんながNAOTの靴をめっちゃ好きということだけブレなければ良いわけで。スタッフ同士でも意見を言い合うことはありますし、真剣に話してこそみんなが思っていることが共有できると思っています。そして先輩がそうだから、自分もそうしたいと繋がっていく。結果として、すごく仲が良いですよね。

この環境は、敦さんが全ての人に対応が同じだから言いたいことが言えるんじゃないかと思います」

──宮川さんご自身は話しやすい雰囲気作りを考えたりされてるんですか。

宮川さん:
「特には考えていませんけどね。だって、みんな大人なんで、僕が言わなくてもダメなことはわかるだろうし、自主性に任せますよ。学校じゃないんだから。

でも、同じ家に暮らす家族のようにありたいとは思いますね。幅広い世代が一つ屋根の下に仲良く暮らして、でも言いたいことはきちんと言えて、時にハプニングもありつつ」

──長く、長く続いていくんですね。

宮川さん:
「そうなったらいいですよね」

 

(おわり)

【写真】小倉亜沙子


もくじ

前編
ただ目の前のお客様に届けたいという一心で

後編
一つ屋根の下、「家族」のようなしごと場に

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宮川敦

株式会社loop&loop 代表取締役
30歳で貿易会社を退職後、夫婦でバックパッカーとして4年間世界を放浪。帰国後、妻の母親が奈良で運営する「風の栖」を手伝いながら、NAOTの輸入代理店を始める。奈良・東京・オンラインショップといった直営店に加え、様々な店舗やイベントにてNAOTを日本に広く流通させる。好きなもの:UFO、美味しいお酒、家キャンプ

 

▼連載:フィットするしごと


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