【おしゃれな人】第1話:モットーは「さりげない」こと。自分のおしゃれを楽しむ、72歳の女性(「mon Sakata」店主・坂田敏子さん)

編集スタッフ 奥村

ベーシックなTシャツやパンツ、スニーカー。普段の自分が身につけるそれと変わらないはずなのに、どこか垢抜けて見える人がいます。

東京・目白で洋服店「mon Sakata(モンサカタ)」を営む、坂田敏子(さかた としこ)さんもそんな一人。

はじめてお見かけしたのは雑誌の中で、シンプルなトップスに、ゆったりシルエットのラフなパンツの装い。気取らない力の抜けた姿だけど、どこか垢抜けて見える雰囲気に惹かれました。

今回は彼女に、おしゃれの話を聞きに行きました。

 

昔から、おしゃれの基準は「目立たない」けれど自分らしい装い

薄いグレーのドアを開けると、立っていたのは坂田さん。雑誌で見た時よりもショートヘアになっていて、軽やかな笑顔で迎えてくださいました。

坂田さん:
「髪の毛? 特にこだわってはいなくて、この間自分で切ったんです。

お店に来てくださるのは初めてかしら。いろいろご覧になってみてくださいね」

やわらかな自然光が入る店内には、カットソーやパンツ、スカートにアウターまで、彼女がデザインしたさまざまな洋服が並びます。

それらは決してハッと目を引くような派手な見た目ではなくて、どちらかというとシンプルで静かな印象。けれど一着一着に不思議な存在感があって、順番に手にとってみたくなる。そんな佇まいです。

実際にお会いしてみても、やはりおしゃれな雰囲気だった坂田さん。けれどお話を聞いてみると、昔からおしゃれのモットーにしているのは「目立たないこと」なのだとか。

坂田さん:
「昔からシンプルな服が好きでした。基本は少しゆったりしたパンツスタイルで、薄手のカットソーやニットを上に着て。

持っている服の色で一番多いのはネイビーです。あとはグレーやベージュ、深いグリーン。落ち着いた、目立たない色が気持ちに合っているんです」

 

一見シンプルなのに、どこかおしゃれに見えるのは。

確かにこの日も、オフホワイトのワンピースに、モスグリーンのパンツと落ち着いた装いの坂田さん。店内に並ぶ洋服は、鮮やかなピンクやイエローのものもあるのに。そのギャップが、はじめは少し意外でした。

けれどお話を聞くうちに、着ているものへのしっかりした想い入れに気づきます。

たとえば、最初に着ていたシンプルなワンピース。じつは背中面にはボタンがついていて、後ろ前にしても着られるデザイン。

「ちょっと着替えてみましょうか」とお店の奥へ引っ込まれたら、ガウンのようにワンピースを羽織って現れました。

▲着ている服はすべて「mon Sakata」のもの

坂田さん:
「午前中はワンピースで過ごして、午後になったらコートに変えて、と2通り楽しめる洋服なんです。

こうすれば、1日の中でも気分を変えて着られるでしょう? 出かける場所によっても着こなしを変えられます」

坂田さんの装いの秘密はこんなふう。一目ではわからない「仕掛け」が、実はあちこちに凝らされているのです。

ワンピースの下に履いたパンツは、ひざの部分にだけ違う布地のポケットが付いていたり。

ワンピースと同系色のストールを、ふんわり手元に巻いて、アームウォーマーのようにしていたり。

他人から見てわかるようにではなく、自分だけにしかわからないようなさりげなさで。ディテールに個性のあるアイテムを取り入れたり、新鮮な合わせ方をしてみるのが、坂田さんの「おしゃれ」なのです。

 

主婦をしながら、服作りを仕事に。40年間、楽しみ続けて

服飾の学校や職場にいた経験があったわけではなく、素人から服作りを始めたという坂田さん。

きっかけは息子さんに着せたい服が見つからず、自分で作ろうと思ったこと。その後お店を開くことになり、今年で43年。今でも毎シーズン、定番の服に加えて新作のデザインも生み出しているというから、その熱量に驚かされます。

坂田さん:
「定番と新作、半々くらいで毎シーズンお店に並べています。新作が未だに多いのは、採算的にはあまりよくないのですけどね(笑)。あたらしい服を考えるのはやっぱり楽しくて。布や糸の魅力を感じながら、作り続けていきたいです。

今日、たまたま夫の靴を出がけに履いてきたのだけれど……この麻素材のスニーカー、なんだかおもしろいわね。どんな服を作ったらこれに似合うかしら?」

と、足元を見つめながら考え始める坂田さん。取材の合間にも新しいアイデアがふつふつと湧き始めているようでした。

「目立たなくていい」という気持ち。

それは服への興味の火が消えてしまっているからではなくて、自分の中にある「おしゃれ」の軸をちゃんと信じられているからこそ、あるものなのではないかと思いました。

そんな坂田さんの軸は、どうやってできたのか。続く第2話では、彼女のおしゃれが作られた経緯や、着こなしの工夫を伺います。

(つづく)

【写真】川原崎宣喜


もくじ

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坂田 敏子

1947年生まれ。出産後の子ども服作りをきっかけに、1977年、東京・目白に「mon Sakata」(モンサカタ)をオープン。自身がデザインした服を販売。全国のギャラリーにて展示会も行っている。夫は「古道具坂田」の坂田和實さん。http://monsakata.com

 


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