【料理を好きでいたいから】前編:悩むのを、できるだけやめるために。一生使える「炒め物の方程式」編

編集スタッフ 小林

料理は嫌いじゃないけれど、日々の暮らしの中では、どうにも気が重い日があります。

つい同じようなものばかり作ってしまう。忙しさに追われて、ちゃんとしたものが作れない。栄養バランスが心配だ……などなど。どうやら最近、「自炊」に対するプレッシャーをうっすら感じているんです。

そんなとき、ふと疑問が浮かびました。「一体、料理のプロはどうしているんだろう?」と。

仕事だろうとお休みだろうと、ごはんを作らないわけにはいかない状況で、どうやったら料理を好きでいつづけられるのだろう。

そこでこの特集では、自炊のお悩みをプロに相談してみることにしました。

お話を伺ったのはPerch.の主宰で、料理家のまきあやこさん。

日頃からまきさんには美味しいごはんだけでなく、その楽しそうに料理をする姿からも、たくさんエネルギーをもらっています。

この特集では全2話にわたって、まきさん直伝の自炊を楽しくするコツや、すぐに真似したくなるお助けレシピをご紹介していきます。

 

泣けど笑えど、腹は空く。そんな日の「セーフティーネット」って?

最近のわたしの一番の悩みは、いつまでたっても献立が決まらず、料理をする前から、どっと疲れてしまうことなんです。

まきさん:
「その気持ち、わかります……! まずそういった何を食べたいか思いつかない日は、とりあえず、料理をやめてみましょうか

決して料理は義務じゃないので、買ったりテイクアウトしたりしてもいいし、そもそも食べたいものがない日は何も食べなくたって、いいんです。

本来はきっと料理って、洋服選びのように自分を楽しくする、クリエイティブなもの。

けれど義務として『しなければならない』と考えてしまうと、自由な気持ちがしぼんでしまって、料理自体が辛くなってしまうと思います。

そもそも、今だってもう十分、頑張っているはず。だからまずは、ちゃんと料理しなきゃ、と思いすぎないようにしていきましょう」

まきさん:
「けれどお腹は空く、何か子供に食べさせないといけない……。そういったときに私がおすすめしたいのは、自分にとって『セーフティーネット』になるものを用意しておくこと。

例えば私の場合、極限まで疲れたときや、今日はもう料理したくないと思ったときは必ず、常にストックしてある『冷凍のたこ焼き』か『冷凍のフライドポテト』を食べると決めています。

大好物だからこそ毎日は食べないようにしているのですが、たまにそういうのをやると、今日はちょっとズルしちゃお!みたいな感じで嬉しくなるし、本当に癒されるんです。

こういった自分を甘やかせるもの、お助けマンになるもの。困ったときはこれだ!というものを、3つくらい決めておく。

とにかく『何が食べたいんだろう』と悩むのをやめるだけで気持ちがすごく楽になりますよ」

▲わたしにとってのお助けマンはこの3つでした。

まきさん:
「これは冷凍食品でも、スーパーのお惣菜でも、混ぜるだけの炊き込みご飯の素でも、いつものカレーライスでも、なんでもよくって。ご自身に合ったそれぞれの『セーフティーネット』があると思います。

もちろん栄養のこと、愛情のこと、いろいろな悩みがあると思うけれど、1日くらいでそう大きくは変わりません。それよりもご機嫌でいられることで、きっと楽しい食事ができるし、次の活力に繋がるかもしれない。

大人になると誰も甘やかしてくれないから、自分で自分を甘やかしていかないと。これはお仕事と一緒で、毎日の自炊も、続けるためには休日が必要だと思います。

ちゃんとやる日もあれば、まっいいか、と軽く受け止める日もあっていい。そうやってメリハリをつけないと、わたしも毎日は頑張れません……!

そこで何をつくるか困った日に『悩むのをやめる』ための、ひとつの提案として、一生使える「炒め物の方程式」をご紹介します」

 


もう悩むのをやめる!
一生使える「炒め物の方程式」


まず、炒め物の基本要素はこの4つ。これをこのまま、順番に炒めていけば、大体の炒め物は美味しくできるそう。

1)油と香味野菜
(バター・オリーブオイル・ごま油など / 生姜・ニンニク・長ネギなど香りが強いもの)

2)タンパク質
(お肉・魚介・厚揚げ・卵・桜えび・鯖缶など)

3)野菜
(旬のお野菜・小松菜・トマト・ブロッコリー・玉ねぎ・じゃがいも・キノコ類など)

4)調味料
(ナンプラー・オイスターソース・ポン酢・バルサミコ酢・塩胡椒・お醤油・はちみつ・味噌など)

材料はお好きなものを、なんでも自由に組み合わせて。また③の野菜は、レタスなど火の通りやすい葉ものを使う場合、炒める順番を④と入れ替えてもOKです。

まきさん:
「わたしは、料理には必ず美味しくなる方程式がある、と思っていて。

その方程式を一度覚えてしまえば、冷蔵庫にある残りものでも、初めて使う食材でも適当につくれるし、具材や調味料を変えながら、無限にメニューが作れると感じています。

考えるのにつかれたとき、この方程式でとりあえず炒める!という選択肢は、お助けマンとして、いつも寄り添ってくれると思います」

 

炒め物の方程式でつくる
「アスパラ・レタス・豚バラの炒め物」

材料(約2人分)

1)油と香味野菜
ごま油…大さじ1
生姜…5mm〜1cm厚のスライス1枚みじん切り)
にんにく…1片(薄くスライス)

2)タンパク質
豚バラスライス…100g( 5cmの長さに切る)

3)野菜
アスパラ…3本(斜め切り)
レタス…1/4玉 (大きめの一口大・ざく切り)

4)調味料
ナンプラー…小さじ1と1/2
オイスターソース…小さじ1(商品によって濃さが変わるので、お好みで調整してOKです)
胡椒…少々(お好みで)

作り方

1)油と香味野菜 を炒める
冷たいフライパンにごま油をひき、生姜とにんにくを入れたら火をつけ、弱火でじわじわと炒めていく。油が白く泡だった状態で、生姜とニンニクが焦げない程度の弱火で炒めるのがコツです。じわじわといきましょう。

2)タンパク質 を炒める
香りが立ってきたら、豚バラを入れて中火で炒めていく。ここでも生姜とニンニクが焦げない程度の火の強さを心がけます。

3)野菜 を炒める
お肉に8割程度火が通ったら、アスパラを入れてさっと炒める。

4)調味料(と葉野菜)を炒める
調味料を加えて炒め、最後にレタスを入れてさっと炒める。レタスには8割くらい火が通ればOK。あとは余熱で火が入っていきます。

このレシピの場合は味がしっかりとついているので、ご飯と一緒に丼風にするのもおすすめ。

アレンジとしては、最後にお酢をちょっと入れたり、唐辛子や山椒などの辛味を入れたり。ミョウガやシソなどの薬味を入れて季節感を出してもおいしいと思います。

もし炒め終わりの頃に水分が多く出ていたら、水溶き片栗粉を大さじ1程度回し入れると、上手くまとまってくれますよ。

 

自転車の乗り方と一緒。きっと覚えたら、どこにでもいけるから

まきさん:
「私にとってこの基本の炒め物は、具材を変えながら、人生でいちばん作っているお料理のひとつだと思います。

いきなり自由に上手くやれないよ、とか、アレンジなんて思いつかない……という方も、いらっしゃるかもしれません。

けれどレシピを見ずに、さっと気楽に料理ができるようになるには、覚えた型を使って『とりあえずいろいろやってみるしかない!』とも思っていて」

まきさん:
「これはきっと、自転車の乗り方と同じかなと思います。

乗りはじめた最初はゆらゆら不安定だったり、ときには転んでしまったりするかもしれない。けれど一度乗れるようになったら、そのままどこまでも遠くへ、自分の好きなところにいけるし、一生乗ることができるもの。

だからこの方程式が、みなさんにとっての自転車になって、いつでも好きなところに連れて行ってくれますように。料理をもっと自由で、気楽なものにするための助けになったらいいなと、思います。

その為にも、ぜひいろいろと具材を変えて、何度もやってみてくださいね。最初はこの調味料の分量を守りながら、具だけ変えてみるところからスタートしてみるといいと思います。

きっと具材が変わるとイメージががらっと変わるから、3日間くらい続いても、案外バレないんじゃないかな〜(笑)」

「ちょっと自炊につかれていたけれど、もっと気楽な気持ちでいいのかも」と、わたしの肩から少しずつ、力が抜けてきた感覚があります。

けれど実はまだまだ、まきさん直伝の<自炊を楽しむ方法>があるそうなんです……!

そこで後編では「思いっきり楽しく料理をしたい!」というテーマでお話を伺います。とっておきの「おうちタコス」レシピも、教えていただきますよ。

 


もくじ

 

まきあやこ

料理家 Food producer / stylist、Perch.主宰。テーマ性のあるオーダーメイドのケータリングやお弁当、イベントでのフードコーディネーションを手がける他、フードスタイリング・レシピ開発などを中心に活動中。著書に「やってみたら思ったより簡単だった!スグうま自炊生活」。

HP : https://www.makiayacoonaperch.com/

instagram : https://www.instagram.com/cateringteamperch/

 


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