【あの店のレシピ】第3話:ふだんの食卓にも、おもてなしにも!「あさりのパエリア」(eatrip/原宿)

ライター 長谷川未緒

よく行くお店や、あこがれのお店の味を家でも楽しみたい、と思うことがありますよね。そこで、5つの人気店の店主に、家にありそうな材料で、手軽に作れる本格レシピを教えてもらいました。家での料理が楽しくなるヒントも伺っています。

第3回は、東京・原宿に店を構える「eatrip(イートリップ)」店主、野村友里さんです。

 

驚きのある、シンプルな料理

「eatrip」は、周りを緑に囲まれた、原宿とは思えないほど静かな場所に建つお店です。旬の野菜を使った季節ごとの料理は、素材の味を生かしたシンプルな調理ながら、工夫と驚きに満ちています。

今回、野村さんが教えてくれたのは、これからの季節に食べたい「あさりのパエリア」です。

野村さん:
「パエリアは、じつに便利な料理です。ごはんを炊く要領で、お米とおかずが一体となったメイン感たっぷりのご馳走のようになるのですから。

ごはんをおいしくするには出汁が決め手です。あさりから出る出汁をたっぷり使うことで、旨味がぎゅーっと入ったごはんになります。貝汁がおいしさの秘訣になりますから、貝がのりきらないときには身を出して使ってくださいね。

仕上げに鍋底にお焦げを作って、ジューッとレモンを絞っていただく。きっと満足感があると思います」

 


旨味たっぷり。おこげもおいしい
「あさりのパエリア」


〈材料〉(4人分)
・お米…200g
・玉ねぎ…1/2個
・ドライトマト…10g
・あさり…400g
・パセリ…半束
・レモン…適量

・にんにく…1片
・カレー粉…小さじ1
・塩、黒こしょう…適量

・オリーブオイル…大さじ2
・白ワイン(なければ分量の水を足す)…100cc
・水…250cc

 

〈作り方〉
(1)ぬるま湯に海水ほどの濃度(約3%)になるよう塩を入れ、その中にあさりを30分ほどおき砂を吐かせた後、水であさりをこすりあわせるようにして洗う。

(2)鍋に1と白ワイン、水を加えて蓋をし、貝の口が開くまで蒸し煮にしたら、ザルで濾し、汁とあさりを分けておく。

(3)フライパンにオリーブオイルをひき、みじん切りにしたにんにく、粗いみじん切りにした玉ねぎを加えて、中火にかける。

(4)玉ねぎがしんなりして透明になったら、洗わずにお米を加え、米粒が白っぽくなるまで炒める。

(5)4にカレー粉を加えてさっと炒め合わせたら、貝汁とみじん切りにしたドライトマトを加えて蓋(大きさが合えばなんでもいい。なければアルミホイルでも)をして、20分ほど、お米の芯が少し残る程度まで煮たら、あさりを加える。蓋をして1分ほど強火で炊きお焦げを作ったら、少し蒸らす。

(6)粗塩パラパラ黒こしょうガリガリ、みじん切りにしたパセリをパラパラとかけて、レモンをギュっと絞って頂く。

 

パエリアをよそゆきにするヒント

▲世界各国を旅し、食について多岐に渡る活動を行う野村さん。

野村さん:
「白米を黄色く仕上げると、グッと様子が変わって、よそ行き感が出ます。サフランを使えば色も香りもとても増すけれど、ちょっと高価。

そこでサフランの代わりにカレーパウダーを少し加えました。カレーの風味も加わって、蒸し暑い時期でも食欲が増しますよ。今は巷にもたくさんのおいしそうなカレースパイスミックスみかけますものね。なければ、ターメリックを中心に少しコリアンダーやクミンパウダーを加えてもいいと思います」

調理器具や材料が揃わなくても、楽にかまえて作ってみて、とも。

野村さん:
「道具も食材も別のもので代用するなど、気張らずに楽しんでいただけたら。

調味料は気に入ったものをできるだけ揃えておくと、シンプルな食材でも、ぐっとおいしさが引き立ちます。

塩分も、アンチョビの塩を使う、オリーブの塩を使う、梅干しの酸味と塩分を使うなど、旨味も含んだ塩分を使うのも、奥行きがでて楽しいです。

家庭料理の醍醐味は、なんといっても自分で塩梅が調節できて、できたてがいただけるところ。楽しんでつくれば、おいしい料理につながるはずです」

次回は東京・学芸大学の「スタンドバインミー」さんです。常備菜にもなる「アジアンつくねのバインミー」を紹介します。

 

【写真】野村友里

 

もくじ

 

野村友里

eatrip主宰、料理人。長年おもてなし教室を開いていた母の影響で料理の道へ。ケータリングフードの演出や料理教室、雑誌での連載やラジオ出演などに留まらず、イベント企画・プロデュース・キュレーションなど、食の可能性を多岐に渡って表現している。2012年に restaurant eatrip (原宿)を、2019年11月にeatrip soil (表参道)をオープン。生産者、野生、旬を尊重し、料理を通じて食のもつ力、豊かさ、美味しさを伝えられたら、と活動を続ける。著書に『eatlip gift』、『春夏秋冬おいしい手帖』(共にマガジンハウス)『Tokyo eatrip』(講談社)、『TASTY OF LIFE』(青幻舎)など。https://restaurant-eatrip.com

 


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