【我がままな晩酌】豆皿のすばらしいところは。

ツレヅレハナコ

うちの食器棚には「豆皿コーナー」があります。

無地もあれば柄物もあるし、材質も作られた年代も地域もさまざま。1枚だけのものもあれば、5枚セットのものもあって、共通点は「直径8cmくらいまでの小皿」ってことくらい。

旅先で豆皿を見かけると、ついつい手に取ってしまうのです。先日行った金沢の古道具屋では、店の端っこに豆皿が積んであり、パッパッと埃を払うと現れたのは和歌のような筆文字と謎の絵。お店の若い店員さんに「なんですかねえ、これ」と聞くと「ああ、古い九谷焼です。食べものの絵と、それにちなんだ歌が描いてあるんですよ」。

さすが九谷。食べものと言っても、そのセレクトが渋い。絵柄は数種類あって、すっぽん、くじら、あわび……。くじらにいたっては、なぜか切り身の絵になっている。歌は全く読めないので、店員さんに訳文を聞くと「すいません、私も読めないんです」と照れくさそうに笑っていました。

昔の人が食べていたものが描かれているなんて楽しいなと思ったけれど、古い九谷なんて高価なのでは? 聞くと、「1枚500円です」。え、安い。「庶民にも使われていた生活の器でもあるので、お値段もピンキリなんですよ」。そうだよなあ、ここでも埃をかぶっていたもんね。

うれしくなって、5枚すべてをお買い上げ。中でも、やはりくじらが私のイチ推しだな。正直、歌の文字の中に「鯨」を見つけられなければ、なにがなんだかわからないところがいい。

そんなふうに集めた豆皿は、取り皿として使うことも多いけれど、私のひとり晩酌にもよく登場しています。食器棚を覗いて3枚、4枚と取り出し、テーブルに並べてバランスをチェック。その日、皿にのせたいおつまみをイメージしながら、あーでもないこーでもないとしばし悩むのです。そんな時間から、もうすでに晩酌の楽しさが始まっていると言ってもいいほど(実際に、すでに缶ビールくらいは飲みながら選ぶ)。

柄も時代もバラバラでも、すべて同じくらいの大きさの小皿であれば意外とまとまりが出てくるものです。料理をのせてしまえば中央の柄は見えなくなってしまうけれど、私はあえて気にせずセレクト。皿のふちや、食べものの隙間からチラリと何かが覗くだけでも十分可愛らしいから。

そんな豆皿を使いたくなる夜は、ズバリ「ちょこまかつまみたい日」。のんべえは、すべからく「ひとつのものを大量に食べる」よりも「いろんなものを少しずつ食べる」ことを愛する人々です。例えるならば、駅弁の選び方。「牛丼弁当」「チャーハン弁当」ではなく、「幕の内弁当」一択! 一口ずつ、味や食感が変わり、だらだらチビチビお酒が飲めるこの幸せ……。

こうなってくると、豆皿にのせるものは、できたてでも、もはや手作りでなくてもまったくかまいません。冷蔵庫に眠っている昨日の夕食の残りの炒め物、スーパーで買ってきたポテトサラダ、切っただけのかまぼこやトマト、コンビニのナッツや6Pチーズ、スナック菓子……。はりきって大量に作ったのは良いけれど、サンドイッチ以外に使っていないきゅうりのピクルスなんて、サクサク切っておつまみにしてしまえばいいのです。

豆皿のすばらしいところは、どんなおつまみでもそれらしくしてくれること。正直、もう今日は料理なんて作りたくない。でも、ちょっとお酒を飲んでダラダラしたいよー。そんな日は、豆皿の出番。いろいろな豆皿がひしめきあうだけで食卓はすでに華やかに。さらにそれらをトレーなどに並べれば、私だけのスペシャル晩酌セットのできあがりです。

そういえば、柄物の大皿にも同じことが言えてしまうかも。「柄皿は、使うのが難しい」「何をのせればいいのかわからないから、つい無地の皿ばかり」。そんな人には、ぜひ1枚大きめのド派手な柄皿を手に入れてほしい。なにしろ、柄皿こそ「ワンプレート盛り合わせ食器」にぴったりだから。余り物をちょこまか直接のせるだけで絵になるし、洗いものも1枚で済んでしまいます。

▲旅先のインド、モロッコ、ウズベキスタンで手に入れた柄物の皿。いずれも径21cmほど。

ここは、あなたの家で、あなたのお店。今夜は、どんなテイストの晩酌を楽しむかもあなた次第です。おつまみづくりを張り切る日もあれば、お皿を選ぶことに全力投球する日があってもいい。観るつもりの映画に合わせたおつまみやスタイリング(私はインド映画を観ながら揚げたてのサモサをつまんで、部屋にお香を焚いたりもよくします)にこったりするのも家ならでは! 自分が今日、どう夜を過ごしたいか? そんなイメージするところから楽しい晩酌は始まっているのです。

 


食と酒と旅を愛する文筆家。東京都中野区生まれ。お酒とつまみと台所道具がある場所なら、日本各地から世界各国まで旅をし続ける。著書に『女ひとりの夜つまみ』(幻冬舎)、『食いしん坊な台所』(河出文庫)。最新刊は『ツレヅレハナコの旨いもの閻魔帳』(扶桑社)。食や日常を綴るSNSも人気。
Instagram:@turehana1

 

大阪生まれ。東京を拠点に書籍、雑誌、WEBなどで、人、食、旅など幅広いジャンルの写真を手がけている。食いしん坊がゆえに、旅先では必ず市場に行き、働く人や、美味しいごはんの写真を撮り続けている。

Instagram:@etokiyoko HP:http://www.etokiyoko.com/

 

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