【45歳のじゆう帖】自分の声が好きになった話

ビューティライターAYANA

私って、こんな声をしているの?

きっと誰にでもあると思います。日々自分で認識している声と、録音されている自分の声のギャップに驚いてしまう、というご経験が。

たしか私が最初にそれを認識したのは小学生のときだったと思います。当時はラジカセというものがあって、カセットテープをデッキに入れて、録音することができたんですね。それで、録音したテープを再生したときに、自分が喋っている声を聞いたら、唖然としてしまいました。

自分の声が明らかに滑稽である。でも、自分以外の人の声はいつもと同じ。これってどういうこと?と。聞けば、普段自覚している自分の声は、耳だけではなく頭部全体の骨が震えることで複雑に聞こえている、とかなんとか。

ということは、私以外の人は、この変な声を私の声と認識して日々接してくれているわけ?と衝撃を受けました。

それ以来、録音した自分の声はあまり聞きたくないなぁと思うようになってしまいました。だって、変な声だからです。私は自分で認識している声のほうが好きだったのです。

しかも、この(自分にだけ聞こえている)声にあわせて、ものの言い方やボキャブラリーを構築してきたのに、実際は全然違っていた、ということがたまらなくショックでした。

人前で喋ることは、結構楽しい

自分の声が好きではない、という意識を持ちつつも(本当に、顔といい声といい、私は自分の生まれつきの素材に愛着が持てなかったようです)、私は人前で話したり、声を発することは結構好きなほうでした。

高校・大学とバンドを組んで歌っていましたし、社会人になると、人前でプレゼンテーションや講義をする機会もあり、その度に「こういう仕事は結構好きかもしれない」と思っていました。

私はもともととても間の悪い人間です。会話のセンスがなく、気の利いたことが言えない。その割に余計なことを言ってしまう。嘘がつけない、というと聞こえはいいかもしれませんが、言い方というものを工夫する術を知らない人間でした。

しかしだんだん「そういう言い方をすればいいんだ」とか「この間の取り方はすごい」と、会話のセンスがある人から学べるようになりました。あくまでも自分比ですが、20年前の自分と比べると、だいぶ会話がうまくなったと感じます。

これは要するに、そもそも私には人とコミュニケーションを取ることが好きという性質があり、うまく話せるようになりたい願望があった、ということにつきると思います。

最近はトークイベントなどに出ることもありますが、台本がきっちり決められているものは苦手で、聞き手のみなさんの顔(反応)が見えて、アドリブで流れを作るほうが好きです。

そういった素地があるから、自分のコミュニケーション力の不甲斐なさをなんとかしたいと思えたのでしょう。

今では、自分の声は悪くないと思うように

もう一度自分の声と向き合うことになったのは、フリーランスになってからでした。

ライターという仕事には、取材のやりとりを録音し、後で聞き返して文字にする「テープ起こし」という作業があります。1時間や2時間、ときには5時間、自分のイヤ〜な声を聞いてタイピングしていくのは、控えめに言って苦行でした。

ですが本当に何事も慣れと申しますか、そのうちに「何この声!?」みたいな感覚から「あ、自分の声ですねこれは」と冷静に受け入れられるようになっていきました。何度も聞いていたら、新鮮味が薄れていちいち驚かなくなったんですね。

そうすると不思議なもので、自分の声には2種類あるという意識も次第に薄れてきてしまいました。ふたつの声の距離が縮まり、境界線が溶けていくような感じ。つまり私は、あんなに苦手だった自分の「対外的な」声をだんだん好きになりはじめていました。好きというと語弊がありますが、自分の一部であると認められた感覚です。

最近は、声を褒められることも(ごくたまに)あります。文章講座で話すときや、トークイベントに出るとき。先日、ヘアメイクアップアーティスト松田未来さんのラジオにゲストで呼んでいただいたのですが、改めて収録された声を聴いて、自分でも「この声、なかなかいいのでは?」と思うようになりました。

今ではもう自分の声を変だとは思わないし、この声でどうやって話そうか、どんな間合いを作ろうかと考えることすら楽しく感じられます。

そんなにいいと思わないものでも、付き合って慣れていけばいいところが見えてきて、いいところが見えてくればそれを磨こうという思考にもなる──というとやや大袈裟ですが、案外他の色々なことにも通用する道理なのかな、なんて思います。

 

【写真】本多康司

 

AYANA

ビューティライター。コラム、エッセイ、取材執筆、ブランドカタログなど、美容を切り口とした執筆業。過去に携わった化粧品メーカーにおける商品企画開発・店舗開発等の経験を活かし、ブランディング、商品開発などにも関わる。instagram:@tw0lipswithfang  http://www.ayana.tokyo/

 

AYANAさんに参加してもらい開発した
KURASHI&Trips PUBLISHING
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AYANAさんも立ち会って制作した
スタッフのメイク体験
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