【大事なものの収納術】第3話:安達薫さん(本と雑誌編)「本を循環させることで、気持ちも循環するんです」
ライター 片田理恵
うつわ、洋服、本。好きが高じてついたくさん集めてしまうものってありますよね。今回の特集でお届けしているのは、そんな大切なものの持ち方としまい方。数を減らすだけじゃない「私らしい収納」を実践されているみなさんにお話を伺います。
「うつわの収納術」について話してくださった石川博子さん、「洋服の収納術」について話してくださったよしいちひろさんに続き、編集者の安達薫さんが登場。テーマは「本と雑誌の収納術」です。
本棚に並ぶ本は、今の自分をうつすもの
真っ白な本棚にはたくさんの本と雑誌。あるものは縦に、あるものは横にと、自由に並び積み上げられたどこか楽しげな様子が、まるで外国のアパルトマンのような雰囲気を醸し出しています。この本棚の持ち主はフリーランス編集者・安達薫さん。
小さい頃から絵本を読むのが好きで、本を作る仕事についた今も読書は大切な時間。ここにあるのは「今の自分にフィットしている本」「今の自分に必要な本」だといいます。
安達さん:
「本棚に並んでいる本には、今の私自身が現れていると思います。興味や関心の方向、変わらずに好きなもの、もう一踏ん張りしたい時のためのお守り、信頼する人から薦められたもの。だから何気なく本棚を見ていると、自分でも意外なものが見つかることがあります。今、私はこんな気持ちなんだなって気づくんです」
本には今の自分の気持ちが現れる。わかる気がします。ならばぜひ、今の安達さんの気持ちや興味の一端を知ってみたい。そう考え、最近読んだ本を教えてくださいとお願いしました。
「では、心が揺さぶられたものを」と、選んでくださったのがこの3冊。元新聞記者でありジャーナリストの稲垣えみ子さん、編集者で文筆家の鹿子裕文さん、米文学者で翻訳家の柴田元幸さんによる著書で、ジャンルはエッセイとノンフィクションです。どれもおもしろそうですね!
▲テレビ台の下には大型の画集・写真集が収められていました
かたや今の気分とマッチしなくなった本は、なじみの古書店に引き取ってもらい潔く手放すことも。仕事の資料やコミックスなど、すぐに見返す必要のないものは別の収納棚に入れて保管しています。
安達さん:
「今の自分にとって必要かどうかの判断は早い方だと思います。この本をどこに置くかということ以前に、この本の必要性を見極めることも、収納を考える一部かもしれません」
お気に入りは「面出し」、読みたい本は「積ん読」
本棚を細かく見せてもらうと、並べ方に特徴があることに気づきました。
この日「面出し*1」になっていたのは、レモンの窓の中で女性がほほえんでいる表紙が印象的な『わたしの愛は…』(新川 和江・著)。
この1冊をはじめ、「レモン」のモチーフやイエローカラーが、家のあちこちでインテリアのアクセントのような役割をしています。安達さんが手がける雑誌『SITRUUNA(フィンランド語でレモンの意味)』ともつながっているんですね。
*1…本の並べ方を指す言葉。目立たせたい本を面(表紙)が見えるように置くこと。
こちらは本棚上部に積まれている、「まだ読んでいない本」と「読みかけの本」。
安達さん:
「置く場所や置き方にも、自分の気持ちが反映されている部分があるかもしれません。好きなものや今の気分に合うものは面出しをして常に眺めていたいし、もっと自分の中でじっくり味わってから消化したいと思うものは、ひとまず隅の方に重ねておく。
こうしてみると収納ってすごく自分が出るものなんだなと思います」
読むだけじゃない。本は「飾る」楽しみも
本棚の中でもうひとつ目をひいたのが、スタイリッシュなブックスタンドを使って作られたこの飾りスペース。ピンク色の石でできたスタンドに挟まれた7冊の本からは、ジャンルもサイズもバラバラなのに、どこか統一感を感じます。
安達さん:
「白い背表紙のものだけを集めて並べているんです。内容やテーマに合わせて集めるのはよくあるけれど、色で集めると思いがけない並びが生まれて新鮮。以前はブックスタンドに合わせた『ピンク』でやってみたんですけど、その時も1冊1冊再読したくなるような、魅力の再発見がありました」
メインの本棚とは反対側の壁際にも本を発見しました。収納に使われているスーパーマーケットのカート型をした家具は、数年前に雑誌の撮影で使ったもの。気に入ってそのまま購入し、様々な使い方を経て、今は読み終えた文庫などを入れるスペースになっています。「本は本棚に入れる」だけじゃなく、こんな選択肢を持つというのもまた、その人らしい収納の魅力。
本を並び替えながら、今の自分と向き合う
読書同様、「本棚の前に座り込んでその中身を眺める」ひとときもまた、安達さんにとって大切な時間です。仕事や家事の合間を見つけては蔵書を一冊ずつ確認し、その本が今の自分にとって必要かどうかを吟味しているそう。
安達さん:
「今の自分にとってしっくりくる本だけが並んでいるように、本棚の中身はこまめにチェックしています。
棚一段分を全部出して並べ替えることもあるし、奥の本と手前の本を入れ替えたり、ベッド脇にあったものを本棚に持ってきたりといったマイナーチェンジはしょっちゅう。
この作業が私にとってはすごく楽しいんです。新しい並びが生まれるとその周辺の空気まで変わって、本棚がいきいきとしてくる感じがするから」
大事だからこそ「しまいこまない収納」を
好きだからこそ増えてしまうものをどうやって収納するのか。石川さんのうつわ、よしいさんの洋服、安達さんの本の収納術から考えてきました。
そのどれもに共通していたのは「しまいこまないこと」。すぐに取り出せないくらい奥の方へしまいこんでしまったら、せっかくの好きなものが見えないし、使えませんよね。「もったいない」とか「なくさないように」という気持ちもよくわかるけれど、大事だからこそ手にとって使うことで、目で見て楽しむことで、ともに暮らす喜びを味わえるのではと感じました。
それに何より、収納に困るほどの好きなものがあるって、本当はすごくすてきなこと。自分らしい収納法を探すことで、暮らしはきっと、もっと、楽しくなりますよ!
(おわり)
【写真】木村文平
もくじ
安達薫
フリーランス編集者。ファッション&ライフスタイル誌『SITRUUNA(シトルーナ)』編集長。熊本生まれ。雑誌や書籍、アパレルブランドのビジュアルやwebディレクション、コピーライティングなどを手がける。Instagramは、@kkki17から。
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